第54話 LERDに関わる者
☆―☆―☆間は、一人称視点の話です。
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先週阿部阪との会話で、経産省元官僚風間の名を耳にした時、数人で会食していた料亭に鳴伏が同席していたことを、思い出した。そして、容疑のかかる回道議員のグッドタイミングの不審死。鳴伏もNSの一員である可能性を、疑うことに。
もし、議員がNSによって処理された、のであれば、LERDはNSの活動計画に関係がある、可能性も否定出来なくなった。
***
男の肉体は解剖されず、既に自宅へと運ばれていた。
日中、メディア関係、後援会関係、野次馬的批判者などが自宅前に屯っていたが、17時過ぎ、秘書と弁護士によって突如追い払われた。皆解散したが、私は近所での地取りをしていた。
19時を回った頃、歩いて来る少女ともう一人の長身女性と、偶然にも出会ってしまう。驚く彼女以上に、私が驚嘆した。ここが姫路ということもあるが、少女のことを考えていた矢先、だったからだ。
地元兵庫を愛し、多可町へのLERD誘致に貢献した兵庫県議会議員、回道正志氏が、完成目前にして、贈収賄容疑をかけられたまま……渦中の不幸。“死人に口無し”。
これから真相解明へ、というところだが、足止めを食うことになった。事情を知る彼への取材は永久、に実現しないのだから。
ただ彼が犠牲になったことで、LERDはNSの活動計画に関係がある、と確信が強くなった。余計に、悔しい。
(蘇ってくれないかなぁ)
その想いが届いたように、天の使いが目の前に。
「ここで会えるとは、お」
人差し指を口前に立て、口角を引き攣らせる知り合いの少女は、声を掛けた私を黙らせた。
「誰? 」
スタイリッシュな女とは、初顔。女の耳元で少女が囁くが、聞こえてきた。
「ストーカーのジャーナリストさんです。この前、阿部阪さんの話しも聞いていて、私たちの力も知っています。今も偶然を装ってますが、付いて来たのかも」
「まあぁ、それはそれは」
小声の2人。
(あぁ、娘さんかぁ。そう言やぁ、呼び寄せるって言ってたな……弟とはえらい違いだ。父さん似だな。……ここで会ったってことは……ふっ、俺の運はまだ尽きてない)
「用事を済ませたらお話しするので、あっちの公園で待っててください」
止むを得ない、という表情の少女は、小声で告げてきた。
(いやいやいや……でも『帰ってください』って言われないから、良しとしよう。けど……)
先ずは笑顔を、作った。
「一緒に行きたい」
告白した。
「何で? 」
「あらっ! 」
困惑し、顔を合わせる女子陣。「何か言ってやってください」と言わんとする口パクとしかめっ面の、女子高生。反対に微笑しながら「大丈夫でしょ」と寛容的な、阿部阪の娘。先週一緒に話しを聞いているなら別に隠す必要はない、ということらしい。
「記者としてではなく、レイの弟子として」
という条件を示してきた。さすが、大人の女。
「この人を弟子にするつもりありません」
意地悪な少女。
私自身、県議会議員の妻とは面識がない。だから娘の条件を承諾。希望通り、蘇りの現場に潜入することが、出来た。




