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第51話  計画を知った者たち

 

☆―☆―☆間は、一人称視点の話です。

 

 ☆―☆―☆



 俺も訊きたい。組織のその計画というものを……。


(なんて俺はついてるんだ!)


 この場に居合わせる悦びをひた隠しながら、この臨時集会に同席している。今までのバラバラだった謎が、いとも簡単に繋がっていくのだ。“阿部阪”という男と知り得たことは、これまでにない収穫、と言っても過言ではない。

 さらに踏み込むことになるだろう、警察さえも動かす影組織の存在。特ダネになること、間違いなし……そう考えるのは、エゴだろうか。


 しかし……


 少女の問いに、しばらく沈黙。重たい空気さえも感じる。彼はまなこのみで全体を見渡し、ゆっくり口を開いた。


「それらを知ることは、危険度が上がります。皆さんに教えることは出来ません。それに……これを知ると皆さんは社会全体に対し疑心暗鬼となり、そのことが拡がれば、混乱が生じるでしょうね。

 これまでの生活そのものが成り立たない可能性も出てきます。ご容赦を」


 そこにいる者たちは、肩の力が抜けた感を示した。訊きたい、という思いとは裏腹に、安堵感も漂っている。

 ただ私は納得出来ていない。今更、感の方が強い。初めてここで口を開いた。


「組織について阿部阪さんは、ご存じなんですよね!? 誰が計画し、どこから指令されているのかも……」


「…………」


「教えられない、というなら自身で調べるまでです。すでに私にも危険が及んでいるとおっしゃいましたが、だからと言って身を引くつもりはありません。相手の圧力に屈するのは、一度だけで充分です。

 つまり、掻き回して組織とその計画を暴くか、阿部阪さんの情報を元に慎重に行動するか、二つに一つだと思っています」


 伝わっただろうか。勿論、自身の足で調べることはやぶさかではない。ただ情報源がそこにあるなら、訊き出すことは私の仕事、いや義務だとも考えている。


「もしあなたがどうしても知りたい、というなら、後ほど個人的に……」


(よっしゃあ)


 その返答に納得し、頷いた。ただ、納得しない者が、もう一人現れた。彼女だ。


「阿部阪さん、私も、私も知りたい……なぜ両親が……いいえ、他にも犠牲者がいるんですよね!? なぜ殺されなければ、ならないんですか? なぜ捕まらないんですか? なぜ警察まで、その組織を手伝ってるんですか? ……そんなの、やっぱり、可笑しいです。納得できません。何なんですか、その計画って? 」


 先ほどまでの悲顔から一変、少女の目には怒りに近い決意が、充満していた。


(怖くないのか、この子は? 両親を殺された、怒り?! ……いや違う……闘う、つもりか? )


 彼女なりの覚悟が、見受けられた。それに対する男の反応はどうだ。少女の目から離さず、表情を変えずに、探りを入れているように見えた。寸刻、そこに集まる者たちにも目配りし、そして静かに閉眼。


(どうする? )


 彼だけでなく、周りの反応も窺った。男は目を閉じ、女は彼を見ていた。少女の意見に反対する者は、いなかった。


「阿部阪さん、ワシたちがここで聞いたことを黙っておればいいことじゃ。15年間、レイに嘘をついてきたように。それに……相当大きな組織のようじゃ。ワシらのような名も無い庶民が騒いだとて、変わらんじゃろ。

 ただ、この子はすぐに無理する性格じゃ。無茶させんためにも、この子の……命毘師端上レイの取り巻く状況は知っておきたい。教えられる範囲だけでも……どうじゃ? 」


 伊達に歳を取ってない。冷静な意見を述べたのは、ここの宮司だった。


「涼夏、ここからは聞かんほうがええかもしれん。お前はまだ高校生じゃ。危険な目に遭わせとうない。台所で待ってなさい」


(冷たい言い方だなぁ)


 そう感じた。


「……私も聴いておきたいです。大丈夫、私、口硬いし、誰にも話しません。それに……将来、検事になるつもりです。そんな悪い組織がこの世にあるなら、知っていて損はありません。臨むところです。

 お願いします。レイちゃんと一緒に、聴かせてください」


(この子も凄いなぁ)


 感心してしまった。だが、彼はまだ目を瞑ったまま。ここで話さなくても、後で聴ける私としては、他人事のようにその状況を見守った。

 それほど、時間はかからなかった。


 彼は、再度警告した上で、計画の概要を語った。

 が……それは、今まで耳にしたこともない、到底容易に信じることの出来ない、計画ものだった。


『人口適正化計画』――


 大元は『国力改造計画Blueprint for the transformation of national power.(通称ToNPトンプ)』。

 昭和43年に日本がGDP世界二位になったことを機に、世界トップになるための政策プランが発端、らしい。

 経済・技術・文化・国民能力をしゅに、総合的国家力を増強させようと各省庁が施策、実行してきた。同時に裏で進められたのが、初期の『人口適正化計画』だと言う。

 日本に適した人口数と個の能力を高める計画が、おもての政策と平行してバレることなく、着実に継続されてきた。


(つまり、表裏一体政策、っていうやつだな)


 出生率低下による少子化戦略、薬剤や添加物による難病死増加、弱肉強食社会や精神疾患増政策、熟年離婚方策などによる自害誘導策略。そして奉術師による囚人や加害者殺害も計画の一つ、と言うのだ。


 生唾を呑み込みながら、皆が聞き入った。




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