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第47話  接触する警察

 

 ***



 夕方5時過ぎ。


「いってきまーす」


 お務めを終えた後、速攻で着替え飛び出すように家を出る、元気な女子。

 今日の夕食は、涼夏の手作り料理である。レイは幼い頃から、親しんできた。亡くなった涼夏の母美紀から受け継いだ、千堂家の味。月一回の、和の食彩である。


 走ってはいけない境内。淑やかに歩き、別門から外に出るや否や、ダッシュ……のはずだった。

 そこに立っていたノーネクタイのスーツ姿の、2人。


「こんにちは」


 軽く挨拶し急ごうとする少女だったが、進行を邪魔するように男が動いた。気のせいと思ったのだろう、二度程男たちをけようとするも、やはり遮る。

 少しムッとした顔つきの女子。


「何ですか? 急いでるんですけど」


 普段より低めの声で。


「端上レイ、さんですね? 」


 眉が上がる。


「……どなたですか? 」


 上着の内ポケットから取り出し、見せたモノ。


「警察、の方?! 」


「少々伺いたいことがありますので、ご同行願いますか」


「なぜ? なぜ、私なんですか? 何もしていないと思うんですが……」


「お時間は取らせません」


 ジェスチャーする男の手。その方角には、神社駐車場の端に停まっている黒の乗用車。あの車に乗って欲しい、ということだろうが、怪しく感じるのは当然でこと。


「ちょっと待って下さい。これは任意、ですよね? 私、これから約束がありますので失礼します」


 再度、一歩ズラし行こうとするが、それをさせまいと男の腕が伸びた。


「いいえ、あなたは来なければなりません。あなたの母親、端上菜摘さんに関することだからです」


「ぇっ? ……母? 」


「はい、是非」


 2人のしつこさ。何より『母のこと』が少女の意思を曲げた。吊り上がっていた繭が、下がっている。


「わかりました。では約束の断りの電話をします。それに家の者にも伝えてこないと」


「いいえ、車の中でお電話ください。急ぎますので」


 再び、繭と目が吊り上がった。


「そんなこと出来ません。でなければ、今日はお帰りください」


「お母様がなぜ、亡くなられたのか、知りたくはありませんか? 」


「な、何をおっしゃっているんですか? 母は……両親は事故で亡くなったんです」


「違います」


 完全否定と断言された、男のセリフに唖然。


「事故ではありません。殺されたのです。ここの宮司、近所の方も知っている事件です」


「……そん……そんなの、ウソです! 」


「ウソではありません。事件について、そして犯人について、詳しくお話しします。その後にでも宮司さんに確認されてみては如何でしょう!? 」


 反抗心が既に失せていた。女子の表情は驚きよりも、困惑に近い。


「では、どうぞ」


 背中を押される少女は反抗もせず、足を揃えて歩き始めた。誘導されるまま黒車の後部座席へと、乗った。

 ムダな動きのない男2人は、運転席と助手席へ。V36型スカイラインのエンジンをかけた。が、同時に後部座席ドアから乗り込む第三者の男。ドアを締めるや否や、


「一緒に行きましょう」


 と。

 硬直しているレイには、隣の男が誰なのか、分かっていないようだ。まじまじ顔を見ていた。


「あべ・さか・くん? 」


 同級生の阿部阪あべさか嵩旡こうきに似ていた、のだ。

 自分の目を疑っているのか、数回早目の瞬きをし、目を細めたり太めたりしている。

 いつもボサボサ頭で、のんびりしてて、頼りなさそうな、あの嵩旡ではなかったからだ。髪をオールバックで固め、繭を吊り上げ、腕組みをし、前座席の男らを睨んでいた。


「なんだね君は? 降りなさい! 」


 運転席の者が指図する時には、助手席の者が外からドアを開けた。勝手に乗り込んだ男の左腕を掴み、引きずり出そうとする。

 男の手首を右手で掴む、嵩旡に似た男。警察を名乗る男の手は、徐々に、放されていく。


「続けますか? 」


 顔が引き攣り始めた男は、自ら腕を引いた。


 再び目を疑うことになる、少女。目前に、拳銃。本物かどうかは分からない。しかし運転席の男が、同級生らしき男子にそれを向けているのは、確かだ。「執行妨害で逮捕するぞ」と、脅しをかけて。

 一瞬にして凍りつく状況、になった。


「へ〜ぇ、あなた方は無防備の高校生に銃を向けるのですか? 大した刑事さんだ。それがどういうことか、分かっておられるんでしょうねぇ、刑事さん……いやっ、・・の手下さん」


 彼だけは冷静さを、失っていなかった。



 

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