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第46話  近づく、闇

 

 翌朝(6月14日)、明水神社――

 早朝の清掃や祈祷を終え、朝食。


「ご馳走様でした」


 3人の食器を洗い終えたレイは、多段チェストにある朝刊を手に取る。昨日の事故が気になっていたのだろう。一面の中央に写真付きで、あった。2人死亡、33人重軽傷の大事故として。

 亡くなった者の名前が載っていた。1人は大人男性、1人は……7歳の子ども。母親が『しょうちゃん』と連呼していたが、それらしき名前が。

 目を閉じる彼女は、後悔しているように見える。


(あの時、やめなきゃ良かった……)、と。


 溜息をつきながら朝刊を折り畳もうとしたが、ふと目に入る。


『逃走犯!? 変死体で発見』


 一面下左側の見出しが気になったのか、黙読始めた



 ――『昨日午前5時頃、福岡空港駐車場の車中で吐血し倒れている男を、巡回警備員が発見。搬送された病院で死亡確認された。博多警察署の調べで、男は平成15年12月京都市資産家強盗殺人事件で指名手配中の津吹透つぶきとおる(当時43歳)の可能性が高いとみて、身元確認中。所持していた免許証は別人になっており、住民票を不正に入手、別人になりすまし逃走していた可能性がある。

 近年、住民票の売買が闇ルートで行なわれており、その人物の所在確認および入手経路など、現在捜索範囲を広げている。

 また男は死後三日ほど経っており、駐車場に不審な人物が居なかったか、当時の現場状況を詳しく調べている。……』――



 この記事を読めば、(これも『加害者連続死亡事件』なのか?)と彼女なら思うだろう。つまり「奉術師の仕業なのか?」、ということだ。

 ただ、疑問に感じるはず。

 優秀な警察組織でさえも、名前を変えただけで十年以上発見出来なかった指名手配された者だ。もし奉術師の仕業なら、どのようにして探し出したのだろうか。いや、警察が探した後に、被害者遺族が奉術師に依頼したのかもしれない。だが、逮捕する前に遺族に情報を提供するなど、通常ではあり得ない。

 このことについて調べたいのは山々だが、今朝の少女は、救えなかった後悔で心は満杯だった。


 さて日曜の一日、明水神社のお務めである



 ***



 午前中、東京――


 高層マンション住民用の地下平置き駐車場。全住戸の一割にも満たない台数限定の特別な駐車場、である。そこに駐車してある、鮮赤の車中。


「もしもし、三穂です。おはようございます。偶然ですが、昨日命毘師の一人を見つけました。……名前は“はしがみれい”、女子高生です。……はい、確認済みです。○○町の明水神社に住んでいます。……はい……はい……えっ!? そうなんですか? 十五年前に……はい……でも、隔世遺伝と聞いていたので……はい……転移!? そんなことが出来るんですか!? ……はい……はい……確かに、それほど強い力は感じませんでしたが……そうですね……わかりました……はい……ではお願いします」


 電話しているのは女医。終えると、サングラスをかけながらの独り言。


「れいちゃん、また会えるかしら。それとも……会うことないかもね」


 地下から複重低音が徐々に、大きくなっていく。リモコン・カーゲートがアップ。徐行しながら、ゆっくりと公道へ出た。

 そして音域が一気に膨れ上がり、爆速。彼女の愛車、フェラーリ328GTBはT字路を左折し、姿を消した。



 ***




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