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ヴィタリスト =命と闇の合従= <ミングル編>  作者: 柳刃公平
第四章 志(インテント) 2017.8.30改造
32/109

第32話  教えてくれる者

 

「へっ? 命毘師みょうびし以外にもいるんですか? 」


 特別な力を持つ者は、日本では奉術師ほうじゅつし、世界共通としては“ヴィタリスト”と呼ばれていた。命毘師は、その中の一つであることを知った。


「転命を含めた奉術の部類とされている“力”は、紀元前からあったとされています。複数の“力ある者”を統制したのが、奈良時代の藤原公卿(くぎょう)です。真似事で人を騙すやからがいたのでしょうね。今で言う詐欺師です」


「詐欺師!? そんな昔にもいたんですね」


「金の匂いするところに詐欺師あり、ですね。そこで藤原公卿は、奉術の使い手を勅旨として七家系に命じました。隠密での活動を許し、それ以外の者たちを除外していきます。奉術を五種に分類、それぞれの家系に託された奉術が伝承され、現代にも引き継がれています。

 その一つが端上家の命毘師みょうびし。先ほどお話しした4人も端上家の子孫ということになりますね。と言っても苗字も違いますし、レイさんが直接会うことはないでしょうけど……。

 その他は、祓毘師はらえびし直毘師なおびし進毘師すせりびし建毘師たけびしと呼ばれていて、今も尚密かに活動を続けています」


 複数の存在にも驚いたが、それらのさまざまな“力と技”についても興味を示した。


「これらの力は、人のために本来使われるべき天から与えられた“力”です。しかし時代によっては、悪用された過去もあります。大昔のことだけでなく、昭和時代にも、そして現在も存在しています。その犠牲になったのが、今回亡くなられた方です」


「ぇっ!? 犠牲に、なった? 」


「はい。まだ確定していませんが、祓毘師はらえびしもしくは直毘師なおびしの仕業だと考えています」


「力で、大切な力で、人のいのちを奪ってる、ってことですか!? そんなこと、あり得るのですか? 」


「残念ながら……。もちろん本来の目的に反しています。ですが、奉術師といえども人間、普通の人と同じように辛い過去、醜い心を持つことはあります。そのような奉術師の弱さを、悪用する者が時に現れるのです」


 ショックを隠しきれない。微々に怒っているような感も否めない。彼女の性格上、天から授かった力を悪用する人がいることに納得できない、そして人の命を奪うことが許せない、そんな複雑な表情である。


「分かっておられるなら、何とかならないのですか? 」


「もし……捕まえたとしても、法で裁くことは困難です。その力を科学的に証明出来ないし、奉術師を公にすることは禁じられています。混乱を招く恐れもあるからです。

 僕たちに出来ることは、やっているのですが……」


「そんなぁ……」




「到着しました」


 運転手の男からの声に反応し、外を見た後部座席の女子が目にしたのは、“大阪けいさつ病院”という縦長の看板。車は一般駐車場ではなく、施設裏口側へと移動。運転手の案内で裏口から病院内の、ある一室へ。内部は一般的な病院と然程、違いはない。

 歩く先の通路に一人の制服警官が立っていた。ドア上部に“安置室”とある。少女は警官に会釈しながら、佐藤と共に怖々と入室。

 手前にスーツを着た2人の強面の男が立っており、奥に白い布で覆われているベッドがある。レイにとって、愛する祖母を先日なくした日のことを思い出すに値する、その光景。神妙な表情に変わった。


「佐藤さん、急にお願いして申し訳ないね」


 話しかけてきたのは、七三に分けた白髪の目立つ年配者。状況から、この部屋にいる男2人が警察関係者であると察することも、難しくない。

 佐藤は「いいえ」と軽く返事をしながら、少女をエスコートした。

 緊張感が一気に増す環境である。(しっかりしなきゃ)と自分に言い聞かているかのように目と口を力ませ、強面男たちに会釈し、部屋奥へと進む。



 

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