第12話 取引する相手(4)
☆―☆―☆間は、一人称視点の話です。
「そのように感じているなら、このような考えは如何でしょう。
ターゲットはトップから指示されるが、犯行者は各々自由に活動していい、放任主義的な関係、あるいは、ターゲットを『犯行者』が選んでいる……」
「その考え、アリですね。……コネクションが鍵になるのは事実です。被害者家族は、どのようにして彼らを知り、依頼しているのか。逆に、『犯行者』はどうやって被害者家族と連絡を取り、接触を試みるのか。ここを発見出来れば、組織に辿り着けるはずなんですが……」
「コネクション、は一つじゃない、はずなのに、ですね!? 」
「そうです。仲介者がいるのかどうかも……結局、『死因』つまり犯行手口から『犯行者』を炙り出したいのですが、取材すればするほど、犯行手口そのものが疑問だらけです。
どうやれば刑務所内の囚人を殺れるのか、どんな方法で体内に火傷を負わせることが出来るのか、どうすれば接触せずに葬ることが出来るのか……この辺りは専門家に確認している最中ですが、違和感が増す一方で……」
「そんな簡単な事件じゃないことは、理解出来てます。地道に探るしかありませんね」
「そうですねぇ。……犯行手口の専門性を精査すると、複数犯の可能性はかなり高いのですが……」
「複数犯……それを纏めている親分、指令している誰かがいる、ってことかぁ。……相当なやり手、なのかもしれませんね」
「長年続けている犯行実績、証拠を残さない手口……フッ、だからこそ挑みたい気分です。真実を明らかにし、本性を公に燻り出したくて仕方がありません」
「ハハハハハッ、あなたらしい。是非暴露いてください。楽しみにしてますよ」
笑みをもって、私は応えた。
二人ともカップを手に取り、少しばかりの休憩。コーヒーを飲み干し、まとめに入る。
「今度の記事は、被害者と犯行者とのつながりが不明であるため、一切触れていません。
全国にまたがる団体・組織に属する複数犯が活動している可能性、そして死因の人体内部の火傷について、かつ自殺も他殺の可能性があることを、重点に置いてあります」
「分かりました。帰って確認しましょう」
「お願いします。それから、USBには、あの案件に関する予定稿も入れてあります。追記することは出てくると思いますが、随時提供しますので。まだ社内の誰にも伝えないでくださいね。目を通したら、削除してもらっても構いません。……その特ダネも、面白くなりそうです」
「期待してます」
再び、満面の笑みを見せてくれた。
ひととき雑談をした後、私が先に退店。次の予定へと足を運ぶ。その中途、『被害者家族』と『犯行者』とのコネクションについて、思慮。
(『ターゲットを『犯行者』が選んでいる』? ……被害者の家族を調べ、相手から近づいてくるのだろうか? そうであるなら、何を基準にして被害者家族を選択しているのだろうか? )
国内の殺人事件死亡者は、現在年間300人から500人。
犯行者から被害者家族に接触を試みることには、無理があるように感じる。加害者への復讐のために近づき、提案するのは危険が大き過ぎる。警察に通報されれば元も子もない、からだ。
犯行者から接触していると考えると、旧事件十七年間の350人、ここ二年の33人という人数は少ないのかもしれない。もし犯行者が快楽的に実行しているとすれば、被害者家族は誰でもいいことになる。ただ、各地に快楽犯行者がいるとは考えにくい。被害者家族からコンタクトを取るほうが、自然である。
加害者に怨みを晴らしたい復讐心は、誰もが考える被害者家族の心情。自身がそのコネクションを見つけ出し、依頼する方がスムーズではないだろうか。
(接点は、どこにあるんだ? )
☆―☆―☆
3月30日、続編記事掲載の週刊誌が発売される。
記事タイトル――
『続報/加害者連続死亡事件
潜む必殺仕事人!? ヒーロー系犯罪集団か? 荒手の闇組織か? 』




