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ガスマスクと熱中症


 気が付けば、だらだらと日本列島に居座っていたはずの梅雨前線が姿を消し、うだるような暑さに見舞われる毎日が始まった。

全国的な真夏の節電対策として、わが社の社員さんたちも暑苦しいスーツを脱ぎ捨てて皆ネクタイのない涼しげな姿をしていて、

例によって漏れなく、噂の秋元さんも、半袖から少し日焼けした腕を覗かせてデスクに向かって仕事をしていたのであった、ガスマスクをしたまま。


「えーと……」


 一体秋元さんは何から身を守るためにあの格好をしているのだろうか。

花粉症の季節はとっくに終ってるし、日光過敏症なら半袖なのはおかしい。

なら、一体?たんたんとキーボードを叩くガスマスクをぼんやりと眺めれば視線がシフトするのを感じて。


「どうかした?」


「え、あと、その……」


「もうこんな毎日暑いと嫌になっちゃうよね、本当。冷房だって全然効いてないし、ネクタイがないのが唯一の救いだよ」


「いやいやいや!クールビズするとこ間違ってますよね!?」


「えっ!?」


「あっ!」


 しまった。


 いつもなら回想で終るはずの突っ込みが脳内を飛び出してぽろりと。

秋元さんの間抜けな声に続く私の声。

一瞬だけ妙な沈黙が広がった後、直ぐに周りのキーボードを叩く音が再開する。


「あ、あの、すみませ……」


「やだなぁ!これ以上クールビズしたら捕まっちゃうよ~」


「えっ?あ、はは、そ、そうですよね!」


よし!なんとか危機を乗り越えたみたいだ!


いやでも本当にシャツも脱いじゃいたいくらいだよ、そう冗談っぽく笑いながら秋元さんはシャツの襟に手を掛けて、第一ボタンが外される。


……ガスマスクを除けばイケメンなんだよな、秋元さん。

いや、素顔は分からないけどさ、背も高いし、少し骨ばった指なんかもなぁ、性格も柔和だし、仕事もきちんとこなすし。

少し汗ばんだ首元が色っぽいというか、その……


「今度はなーに?」


「いや、秋元さんイケメンですよね……」


「えええ!?なに、愛の告白ですか!?」


「えっ」


暑いと頭もぼーっとしちゃうよね、冷たい飲み物でもいれようか、とイスから立ち上がった秋元さんは少し照れているようだった。

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