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異世界で乱入者  作者: とりーと
序章
2/5

ー/ー

結城砕が異世界へ飛ばされている間はほんの数秒間であったが、彼には数分間にも数時間にも感じられていた。

その間、彼の脳内では色々な思考が渦巻いていた。

今の状況、どこへ行くのか、何が起こったのか・・・。

つまり彼は現在混乱していたのだ。

そしてやっとの思いで発せられた言葉は



「なにこれ・・・。」



思考を巡らせてこの言葉を発したこの間、約2秒。

さすがにコンマレベルにまで思考を加速させることはできなかった。

・・・そうじゃないか。

ともあれ、この言葉を発した直後



「ドン!」


「いてっ!」



ベットから落ちた時のような衝撃が結城砕の体に与えられた。

彼は周囲を確認しようとするために起き上がろうと床に手を付けたとき、その右手に何か違和感を感じた。



(なんだ?これ?)



ゆっくり起き上がり、その違和感の正体を確認する。

そこにあったのは剣であった。

結城砕はその鞘に納められた剣を抜き、状態を確認しようとした。

そのとき



「ひっ・・」



おびえるような声が聞こえ、彼はその声の方向へ顔を向ける。

そこには一人のどこかのファンタジーに登場するような服装をした少女が立っていた。

とてもかわいらしい顔つきで髪は長くその色は見るものすべてを見惚れさせることができそうなきれいな銀髪をしている。

しかし彼女は結城砕に対して恐怖していた。

普段なら妹に「おい咲、美少女だ。コスプレした美少女がいるぞ。」と警察を呼ばれかねないような発言をするのだが、こんな時にそんなことを言っていられる余裕はなく、



「あの・・・。」


「・・・!!」



普通に結城砕が声をかけたが、少女は彼が動いたことで、余計に怯えさせることとなってしまった。

そんなやりとりを何度か繰り返した後、結城砕は彼女が怯えている原因は剣にあるのではないかと考えた。

そこでまだどうして自分が剣を持っていたかはわかっていなかったが、彼は持っていた剣をその場に置き、両手を挙げて剣から距離をとった。



「これでいいか?」


「・・・。」



始めは彼がとった行動の意味が分からなかったみたいで驚いた表情をしていたが、次第に少女も自分に何かしようというわけではないということをわかってくれたのか多少は警戒しているが、結城砕の目を見るようになっていた。



「話を聞いてくれないか?」


「・・・はい。」



少女の声は透き通ったきれいな響きがする声であった。

そう言うと少女は部屋にあった椅子を二つ持ってきて一つを結城砕の近くに置いた。



「よかったら座ってください。」


「あ、うん。ありがとう。」



自分や妹の咲とあまり変わらなさそうな年に見えるのにいきなり剣を持って現れた見ず知らずの人間に親切にする少女に彼は感心してしまった。

そして彼は少女のに言われたとおり椅子に座る。

少女の警戒心はすぐに解けたようだった。



「まずお互いに自己紹介からしようか。俺は結城砕。」


「ユウキ・サイ・・・、不思議な名前ですね。私はリディア・ミラスタといいます。」



別に変な名前のつもりでは無いということを言おうとした結城砕だったが、ここが異世界であることを思い出しなにも言わなかった。

そもそも今からその異世界のことを聞こうとしているのに・・・なんと阿呆なことか。

結城砕はそれを誤魔化すようにリディアに話をさせる。



「じゃあリディア、俺がここにどう現れたか教えてくれないか?」


「突如ちょうどサイの座っているところの右側の肩の位置くらいに穴のようなものが現れたのです。そしてすぐにその穴からあなたが落ちてきたのです。その剣と一緒に。」



リディアは結城砕の持っていた剣を指さした。



「サイ、あなたは何者なのですか?」


「リディア、冗談みたいな話かもしれないけど俺は異世界から来たんだ。あとあの剣は俺が元々持っていたわけじゃない。この世界に来る時になぜか持ってたんだ。」



結城砕はリディアにこの世界に来た経緯を話す。

当初は信じられないという顔をしていたリディアだったが、結城砕の話を聞いて次第に信じるようになった。



「信じるしかないですよ。あなたが穴から落ちてきたのをこの目で見たのですから。それに見たことない服装をしています。」


「それでだ、君の知っているこの世界のことを教えてほしい。もしかすると元の世界に帰ることができるカギがあるのかもしれない。」


「ええ、わかりました。まずはどこから話しましょう?」


「この世界についてから頼む。」


「わかりました。」



リディアは話し始める。




――――私達が住むこの世界「エリア」は大きく3つの国に分かれています。

騎士の国「シュヴァリエ」、魔法の国「ソルシエール」、機械の国「マキナ」が存在しており、各々他二国の技術も取り入れながら個々の技術を伸ばしていきました。

そして現在、三国は昔の良好な関係が嘘であったかのように仲が悪くなり戦争が頻発するようになり全体の治安も悪くなり始めてきました。

今私やあなたのいるこの村は「ソト」。魔法の国「ソルシエール」の首都「マガ」から遠く離れた辺境の地です。

またこの村は騎士の国「シュヴァリエ」との国境付近にあるため時々この付近でも戦が起こっているみたいです。ですが、奇跡的にこちらに被害が出るということは一度もありませんでした。

・・・しかし、私たちの村はいつ戦争に巻き込まれてもおかしくない状態で別の遠い町へ逃げる者も現れ今ではこの村の人間は半分以下になりました。

・・・この世界についてはこの程度でいいですか?―――――




「その三国の戦争ってのはどこが一番優勢なんだ?」


「私も伝え聞いただけであまり詳しくはないのですがどの国も拮抗しておりどこが優勢であるとかは今のところないみたいです。」


「なら『騎士の国』や『魔法の国』とかっていうのは具体的にはどんな感じなんだ?」


「具体的に、と言われましても・・・。」


「質問が悪かったか・・・。あるだろ?どういう風に発展してきたのか、とかどういう体制を築いているのか、とか。」


「そういうことですか。ですけど私の家は貧乏で学び舎に通うお金が無く満足な教育を受けていないので詳しくはわからないのですが、『シュヴァリエ』では騎士団が国の秩序を守り騎士団長が国王に近い権力を持つほどに騎士の身分が高いのです。その反面、私たちの国『ソルシエール』では魔法が生活に必要不可欠なものになっており魔法に長けた魔導士様が地位を築いております。もちろん戦士様も存在するのですが地位はあまり高くなく戦闘では魔導士様の方が重要視されています。一方『マキナ』では機械という鉄の魔獣を用いて戦闘を行い、その国の戦士はそれに乗って戦うのです。これが私の知っている各国のことです。」



結城砕の解釈では騎士は脳筋集団、魔法はインテリ、機械はチキン野郎ということだった。

この少年、学校へ通っているはずだがひょっとすると教育を受けていないリディアよりも頭が悪いのかもしれない、・・・というわけではなく、ただ単に自分に覚えやすいように、わかりやすいように変換した。

実際にはこの少ない情報からかなりの考察をしている。



(おそらく脳筋は「騎士の国」と言われているくらいだから統率はいちばんとれていて国としてはいちばん秩序が守られているが一番よそ者を受け付けないだろうな。反面チキンは雰囲気が一番俺達の世界に似ているだろう。技術に一番貪欲そうだ。インテリは魔法だったな。多分俺がこっちの世界に来たのも魔法によるものだと思うからその魔導士様っていうのに会えば元の世界に帰ることができるかもしれない。そういう意味では「魔法の国」に飛ばされたのは運がいいな。)



と、結城砕は少しそれらしい顔をして考えていた。

しかしリディアはそんな結城砕の顔を見て少し怖かったのか



「あ、あの、何か不明なところがございましたか?」


「ああいや、そういうわけじゃなくて・・・」



結城砕の今後の目標ができたということを言おうとした時、急に空から声が轟いたのだった。



「全世界の異世界旅行者に告げる!」



聞くものすべてを畏怖させるような重みのある低い男性の声が響く。

急なことで何が起こったか理解できていなかった結城砕は次第にこの声が空から響いていることを理解し、「異世界旅行者」という言葉を聞いて自分だけが聞こえているのではないかと結城砕はリディアの方を向いたが彼女も先ほどまでの結城砕と同じように困惑しているようだった。

二人の理解が追いつかないまま声はそれを気にも留めず自分の話を進めていく。



「先ほど選ばれし2万もの人間がこの世界へと来訪した。貴様らにはこの世界で各々の欲望を叶えてもらうために殺しあってもらうことにした。」


「・・・は?」



唐突に告げられたことに結城砕は唖然とするしかなかった。

さらに欲望を叶えるというのはどういう意味なのか分からなかった。

結城砕には今命を懸けてまで叶えたいという欲望などなかった。



「殺し合いってどういうことだよ。欲望を叶えるってなんだよ。」


「殺し合いとは文字通りの意味だ。貴様ら2万人からは内に秘められし世界を揺るがす欲望を感じた。故に我はそれに応じ貴様らにチャンスを与えたのだ。貴様らには旅行者の証を授ける。そして、この戦いに生き残った5人の生存者にそれぞれの欲望を叶えてやろう。」



結城砕の疑問に答えるかのように声が話を続ける。

本当はただ声の話の続きが結城砕の、いやこの声を聞いている「異世界旅行者」のほとんどの疑問の答えになっていただけであろう。

そして結城砕の右腕に紫色の何かの金属でできたリストバンドのようなものが付けられる。

恐らくこれが「証」なのだろう。

さらに声はこの世界の人間に向けて告げた。



「さらにこの世界の者に告げる。そなたらにも旅行者の生死を決めることができる。そなたらの戦の戦力にするもよし、排除するもよしである。」



結城砕とリディアは互いに互いの顔を見つめる。

結城砕は直感的にこの世界の人間は各々自分達にはない力を持っていると感じた。

例えば騎士の国では騎士団、魔法の国では魔法、機械の国では機械・・・、一方結城砕達は剣一本だけだ。



「最後に告げる。内に秘められし欲望に気付けない者もいるであろう。そういったものはいつか現れる脅威に怯えながらこの世界の人間として暮らすということもできるだろう。・・・できたらの話だが。」



妙に含みのある言葉を残して声は聞こえなくなった。

こうして結城砕の・・・彼や彼女らの元の世界に帰るための死闘が始まったのだ。

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