奄美のリアル事件簿 『遺物窃盗未遂事件』
遺跡には古墳二基と、素掘りの墓穴が一基。それから古墳時代の竪穴住居跡が六軒、古代の道路跡がみつかっている。古墳と墓は七世紀、竪穴住居跡は四世紀、道路跡は七世紀から九世紀の間にあると考えている。
遺跡に出入りするのは、作業員十八名と調査員の私・奄美だ。
未舗装の道が遺跡の真ん中にきているものだから、散歩する人がのぞいてゆく。ただ集落の外れの高台で、そこを通る人は限られている。
自称郷土史家の沢田氏、犬を連れた西川夫人、遺跡に隣接した畑の所有者である神田氏くらいのものだ。
昨日、ちょっとした事件があった。
竪穴住居跡の床面にあった土器を覆っていたビニールが、何者かによって剥がされていたのだ。いまにも盗もうとしたのだが、散歩をする人か、隣接する畑の地主さんにみつかりそうになり、そのまま逃げたような雰囲気だ。出勤して遺跡に着いた直後の私が異常に気付いた。
犯人は誰か。
自称郷土史家の沢田氏は竹竿を杖にして、眼鏡をかけた老人だ。私や作業員に声をかけて、三十分以上遺跡にへばりつく。けっこう邪魔だ。昼ごろやってくる。経験上、こういうタイプは、人がいない朝とか夕にこっそりやってきて、遺物を盗むタイプだということを知っている。
西川夫人は無愛想だ。路際にシートを丸めて置いたところ、そこに犬が用を足しても気にも留めないでいた。遺跡にはまったく興味がない様子だ。
神田氏は遺跡調査範囲になっている土地の元所有者である。調査には非常に協力的で、資材などが遺跡地内に残っていたりした場合、報せると、速やかに撤去してくれる。いつもにこにこしていて、遺跡に興味をもっているようだ。
遺物のカバーに異常があった当日、郷土史家センセイは、昼にきた。
遺跡に無関心な態度の犬散歩夫人は夕方にきた。
すると犯人は、にこにこ顔の元地主さんだ。
カア~。
帰りがけ、つがいの烏が舞い降りて、例の遺物を覆っているビニールを引きちぎっていた。習性というのか、好奇心というのか、犯人は彼らだった。かくして探偵奄美は事件を解決したのである。
了




