随筆/茶屋魔女
私・奄美は名前の通りスイーツが好きだ。街道沿いにある古い田舎町で仕事をしていたことがあり、そこの和菓子屋・大甘堂にあしげく通っていたものだ。
軒先から奥に入ると、和菓子を収めたガラスケースのあるカウンターがあり、横にはテーブルを三つ並べた喫茶室がある。柏餅、団子、どら焼き。御茶うけをいくつか単品で買って、抹茶や珈琲を飲んでくつろいだものだった。
ふだんは買いにくる客ばかりで、喫茶室を使うということはない。ところが、日曜日のその日は珍しく、喫茶室に人が群れていた。先客は小母ちゃんばかり六人がいた。大福さん、ドラやきさん、草餅さん、それに、ユベシさん、羊羹さん、アラレさんまでいる。
「桜餅さんって、上から目線よね」横幅がもっともある大福さんがいった。
桜餅さんはその場にはいないのだが話題の人である。
「桜餅さん? こないだカラオケに誘ったのに、用があるからっていって断ったのよ。つき合い悪いわ」どら焼きさんがいった。
ユベシさん、羊羹さん、アラレさんが、「そうそう」と相槌を打つ。
ドラ焼きさんが話を続けた。「そのくせ彼女、男に、誘われると断らなかったりして……」
「やっだあ、それ、担任のモンブラン先生でしょ!」草餅さんが目ざとく反応する。
「やっだあ~っ!」ユベシさん、羊羹さん、アラレさんが歓声をあげる。
「あの二人身体の関係があるわよ」大福さんが小声でいう。
ぎゃあっはっはっは~っ。
そこで問題です。地球に隕石がぶつかって、生き残ったのは貴男と女性七名のみです。神様の御遺志により、誰か一人を伴侶に選べと命じられた貴男は、次の選択肢からどれを選びますか?
●小母ちゃん六人衆のうちの誰かを妻に選ぶ
●桜餅さんを妻に選ぶ
●妻帯を辞し、神の許しを請うため、切腹する
了
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ノート20130506/校正20160516