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妄想探偵事務所 『冷蔵庫のトリック』

 トヨタの普通乗車ビッツは、ホンダのFitをパクったかのようなデザインである。おんぼろな中古所用車には、二人の男が乗り込んでいた。遺跡調査担当者・奄美剣星と、助っ人の調査員である成田大学講師・祁門達郎の二人だ。年若い祁門が運転し、口髭の奄美は助手席にいた。現場にゆく途中、事故があったようだ。そのため道は混んでいた。ラジオをつけると、殺人事件に関するニュースを報じていた。暇だった。

「冷蔵庫から遺体が発見された――ほう、アリバイ工作か。死体の殺害時期を冷蔵庫で保存することにより攪乱。騒ぎが収まったところで、こっそりと、遺体をどこかに捨てる。そんな殺人プロセスが……」発掘会社職員の奄美が瞳を、きらり、とさせた。

「なるほど。素敵な推理小説ができそうですね……」身長百八十センチを超える若い大学講師の傍ら、嘱託職員として発掘会社に勤務する青年が相槌をした。「しかし、実際の事件がどうなっているか、裏をとる必要がありますよ」

「さすがは、祁門君だ!」中年の男がいうと、ノートパソコンを開いてネット検索を始めた。

 冷蔵庫に絡んだ事件は、ジェリー・ブルードス事件、パリ人肉事件(佐川事件)、ジェフリー・ダーマー事件、織原城二事件、福井県大野市九頭竜湖冷蔵庫遺体遺棄事件が存在する。時代別に挙げてみよう。

 第一のジェリー・ブルードス事件は一九六八年から一九六九年におけるアメリカの連続殺人事件。女性を狙った性犯罪で、コレクション癖がある。自宅ガレージに女性を言葉巧みに呼び寄せて殺害し、冷凍保存する。被害者が悶え苦しむ状況、死体に自分が収集した靴・下着を着用させて撮影する趣味があった。終身刑となる」

 第二のパリ人肉事件(佐川事件)は、一九八一年六月に発生した。フランス・パリ邦人留学生佐川一政が、知人オランダ人女性を自宅に呼び寄せ、カービン銃で射殺し、死姦後遺体を解体して一部を食べ、実況撮影して、残りをブローニュの森に捨てる。その際、通りかかった人に目撃・警察通報されて逮捕される。フランス警察側は精神異常による犯行で不起訴とした。犯人は出獄後、作家・タレントとして活躍する。

 第三のジェフリー・ダーマーの事件は、アメリカ・同性愛者による犯行で、一九七八年から一九九一年にかけて、計十七人の青少年を絞殺・死体切断・人肉食をするというものだった。遺体の冷蔵庫遺棄に関しては人肉食が目的だった。連続殺人事件の後期で、解体後、小分けにして冷蔵庫で保存し、ステーキにして食べた。1991年に犯人の異常さに気づいたゲイの相手青年が全裸で警察に駆け込み、通報によって逮捕された。終身刑となり、獄中でほどなく、他の受刑者に撲殺される。

 第四の織原城二事件(ルーシー・ブラックマン事件及びカリタ・リジウェイ)

は、二〇〇〇年から二〇〇一年に発生した。クラブに勤める英国人女性ルーシーさんをマンション自室に呼び出し乱暴後殺害。オーストラリア女性カリタさんをマンションに呼び出しクロロホルムで眠らせ乱暴後殺害。カリタさん家族に一億円の見舞金を送ったためか、死刑とはならず、無期懲役を言い渡される。

 第五の福井県大野市九頭竜湖冷蔵庫遺体遺棄事件は、二〇一二年五月二十一日、福井県大野市の九頭竜湖で、湖面の流木を回収していた作業員が湖のり面に放置されていた冷蔵庫を回収しようと、中をあけたところ女性の腐乱死体を発見し警察に通報、事件が明るみになった。警察のDNA鑑定により、失踪中の盛岡まどかさん当時27歳と判明した。愛知・福井県警合同捜査本部は、二〇一二年十月二十六日に容疑者二人を逮捕した。被害者はキャバクラ嬢で、容疑者は店の常連客二名で、月三十万を女性につぎ込んでいた。男のうちの一人は結婚を迫っていたという。しかし彼女にはすでに婚約者がいた。

 犯人は前年二〇一一年十一月二十四日に被害者女性を殺害した模様。犯人は犯行を偽装するため、二十五日にナンバーを外した被害者の自家用車を愛知県豊田市の山林に捨てる。殺害直後から十二月初旬まで、被害者女性が生存しているかのように装い、携帯のメールを、彼女の婚約者・同僚に送っている。二〇一二年現在取調中の事件だ。

 道はまだ渋滞していた。車中の男どもはゲンナリした顔になっている。

「げっ、猟奇殺人ばっかだ。性犯罪・屍食趣味まである。冷蔵庫で保管しているのは、死体コレクションまたは、解体した人肉を食べるためで、アリバイ工作じゃないですね。九頭竜湖の事件も遺体保存というよりは、死体を隠すための『箱』として使用しているようだし――」ハンドルを握っていた祁門がつぶやいた。

 奄美は不満げである。「いや、アリバイ工作はあるはずだ。逗子の織原城二事件では、犯人自宅ガレージの冷蔵庫から数体の飼っていた犬の死体が冷凍保存されていたって話じゃないか? きっと、犯人が連続殺人事件を起こすための、実験だったに違いない」

「いやいや、ジェリー・ブルードス事件で、犯人は美女を冷凍保存してコレクションしていたでしょ。織原には犬死体コレクションがあったってことにはなりませんか?」

(ぎゃふん)口髭の妄想探偵は、自説を若い講師に否定され落ち込んだ。

 それにしてもこの二人の世間話って……。

     了

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