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読書/佐藤究 『QJKJQ』 ノート20170422

  佐藤究『QJKJQ』感想文

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 2016年の第63回江戸川乱歩賞受賞作・佐藤究『QJKJQ』を読んだ。バックグランドのノリがラノベタッチで、ソフトバンクCMお父さん犬とその家族エピソドのようなシュールな家族設定をみるような感じ。家族は四人。全員が猟奇的殺人を趣味としているという話になっている。ヒロインは一見平凡な高校生で、いまどき普通のいじめられっ子だが、ライオンのように強靭な精神をもっている。

 物語の構造は、第一幕テーゼ→第二幕アンチテーゼ→第三幕アンサーとなる。

 第一幕では第一人称で語られるところの「私」およびその家族紹介。そしてキーマンとなる公園で鳩殺しを趣味とするOLポッポちゃんと出会いを描く。

 第二幕では乗り越えるべき「壁」の出現。猟奇的殺人犯であるところの兄が惨殺されたという問題発生に対し、ヒロインはプロの犯行とみた。ほどなく母親も失踪。父親の犯行ではないかという仮説を立て家出する。その際、父親はトランプのカードトリックをやって「QJKQJ」をだしてきた。並んだカードが示すものはESTO PERPEUAで、「汝の幸運を祈る」というメッセージとなる。それからヒントになる宅地関係の新聞を渡す。ヒロインは鳩殺しのポッポちゃんのアパートに転がり込んだ。――だいたいこういう場合、怪しい奴というのはミスリードの容疑者だ。

 そして第三幕、謎解きおよびヒロインの「変化」だ。ヒロインの仮説は外れ、全容解明はまた違ったものとなった。――結論からいえば、講評の作家先生がおっしゃるように、日本三大奇書の一つとされる、夢野久作の『ドグラマグラ』のような、狂気の遺伝子をヒロインにみつけ観察をする研究機関があり、ヒロインをつかった壮大な実験を行おうとしていたというわけだ。――ヒロインの世界観は一変し、出生の秘密とともに、いままで父親と思っていた人物と鳩殺しのポッポちゃんの実像が、いままで思ってもみなかった存在として、浮かび上がってくる。

 好き嫌いが分かれるところとなろうが、大変スラスラと読める物語である。

     ノート20170422

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   佐藤究『QJKJQ』講談社2016年 初出「小説現代」同年7月号

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