音楽/キエフ交響楽団来日公演
ときは十四世紀イタリア・ベローナ大公国の貴族・モンタギュー家とキャピュレット家は犬猿の仲で抗争を繰り広げている時代。モンタギュー家の御曹司ロミオは、悪友どもと、悪ふざけが興じて、キャビレット家の跡取り娘ジュリエットに出会い恋に落ちましたあ。二人は一目見て恋に落ち、修道僧ロレンス立会いのもと、結婚式を挙げます。
ところが、街角でロミオたちは、キャビレット一門の御曹司と鉢合わせとなり、親友を殺され、報復に相手を殺害。主君である大公はロミオを追放処分にします。他方、ジュリエットは父親から主君の大公一門衆と結婚するように命じられます。
ジュリエットに相談を持ち込まれた修道僧は、仮死状態
になる秘薬を授け、病死したように偽装。葬儀の後にロミオとともに駆け落ちするという作戦をたてるのですが、ロミオに話が伝わりません。ほんとうに死んだと思ったロミオは毒を仰いで死に、ジュリエットはロミオの短剣で後を追います。
修道僧から事実を知った両家は、抗争の無意味さを悟って、ついに和解するという筋立て。
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肥った交響楽団指揮者が、壇上で、指揮棒を振ります。繊細な棒の動きは、華やかなパーティーで貴婦人をエスコートするかのよう。太鼓が鳴ってジャンプ。ロミオがバルコニーに立つジュリエットに求愛。彼女が、「どうして貴男はロミオなの?」 肥ったロミオが、ぴょんぴょんぴょん。
シニアが多いこの楽団。客席からみた前列右手に妖精のごとき四肢の長い髪を後ろに束ねたヴァイオリニストの美女がおり、人目をひいているので、彼女をジュリエットと仮定。ロミオに熱い視線送るのだった(ということにしておきましょう)
するとロミオは今度は剣をふるうかのように、雄々しく指揮棒を振るいます。「キャビレット一門め、このロミオがぶっ潰す!」
悲しみを示すかのようなドキドキとくるリズムになります。墓場にて、肥ったロミオが、仮死状態のジュリエットを前にして自決。ジュリエットが後を……。横たわる若い男女の骸を前に、大公、モンタギュー家、キャビレット家の人々が集まり、修道僧から話を訊いて頭を垂れます。一同、激しく、反省。
指揮者、客席にむかって礼!
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演目の第一にくるP.チャイコフスキー「幻想序曲 ロミオとジュリエット」は、ちょっとした衝撃を食らいました。ヴァイオリンを初めとする管弦は、絹のような滑らかさ。打楽器やら吹奏楽器がシークエンスの要所とクライマックスで、雷鳴を轟かすような大胆さがありました。しかし全体としては緻密繊細。これぞ音を楽しむ――音楽だあ♫
ウクライナ共和国のキエフ国立交響楽団は、日本においてかなりの人気なようで、ネット検索をすると、2012年の来日ツアーは、下半期だけでも、8月、9月、11月、12月となっていました。11月は関東が主体。10・11・13・14・15・16・17・18日の各都市公演のうち、千葉県多古町公演は初回となります。
キエフ交響楽団という存在は耳にしたことはありましたが、山出しである私にとっては、いかなるものかは霧の中でありました。会社の取引先である教育委員会との義理で、半ば強制的に買わせられました3,000円の予約チケット2枚。家内と行きましたよ。多古町は大戦中に鉄道レールを撤去して軍事資材になり、列車アクセスできません。ゆえに車で九十九里浜から、自家用車で移動。10日、成田空港に近いけれども田園地帯である千葉県多古町で、何ゆえに名門楽団がきたかというと、宝くじを財源としたようで。他の都市に比べ数割引きから半値。前から3列目の席。いやあ、なかなか圧巻です。
楽団創設はロシア革命の翌年である1918年、旧ソ連により設立されます。初代指揮を務めた作曲家オレクサンドル・ホリライは、チャイコフスキーと個人的親交があったとのことで、ゆえに楽団が得意とするのはチャイコフスキー。恐らくこの作曲家の作品を奏でさせたら、右に出る者はいないのでしょうね。
指揮はヴォロディーミル・シレンコ 、ピアノはウラジーミル・ミシュク。曲目は、p.チャイコフスキーの、幻想序曲「ロミオとジュリエット」、ピアノ協奏曲第1番変ロ短調op.23、交響曲第5番ホ短調op.64。これにアンコールの曲目が2つ。
参考までに、Youtubeを検索すると、『華麗なるロシア音楽 -キエフ国立交響楽団』P.チャイコフスキー「幻想序曲 ロミオとジュリエット」というのがヒットしたので興味のある方はそちらでどうぞ。
了
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ノート2012/校正20160516