映画/『赤い高粱』1987年
原作者の莫言は、先日、2012年のノーベル文学賞受賞者となった。彼の原作を映画にしたのが、原題『紅高粱』、日本名『赤い高粱』だ。映画『赤い高粱』は、『芙蓉鎮』が評判となっているころで、NHKの中国映画シリーズのような時間帯があり、視聴した。
1920年。中国山東省にある広大な田園地帯が舞台だ。貧しい家の美少女・九児は、ロバ一頭と引き換えに、ライ病患者である老人のところに嫁ぐことになった。輿に乗せられての嫁入りだ。その途中、強盗団に襲われるのだが、輿の担ぎ手の一人だった余という男に救われた。実はこの余というのが強盗団の頭目である。嫁ぎ先は造り酒屋で裕福である。強盗団は二度目、少女を乗せた輿を襲撃。高粱畑の中で二人は肉体関係をもつ。
少女九児が嫁ぐと嫉妬した余は、造酒屋主人を殺し情夫の座に収まる。二人の間に子供豆官が生まれ、平穏な日々が続くのだが、そこに日本軍が進行してくる。ゲリラ部隊を組織した九児と余は軍輸トラックと交戦、九児は戦死し、余と息子の二人は生き残る。
夕暮れどき累々たる戦死者たち。呆然とする余、泣きもせず送り唄をする幼い息子・豆官の対比が印象的だった。
歴史ものであるのだけれど、一種のダークファンタジーとして観てもよいような気がする。
張芸謀監督、顧長衛撮影、趙季平作曲。1988年ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。
莫言作品は体制派だと香港などから冷たい声もあるとかないとか。まあまあそういわず、いい作品だと思う。さて同賞で、最有力候補といわれたのが、われらが村上春樹。『ノルウェーの森』は、『いちご白書』『卒業』のような青春ものを漂わせてはいるものの、まあ、エロ本ですからねえ。それにしても、この人の作品の読者層である彼の地の学生たち・青春エナジーの矛先が皮肉にも現地日本企業に……(汗)。
了
.
ノート2012/校正20160516