表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/100

奄美のリアル事件簿 『遺跡から爆弾がでた場合…』

 第二次世界大戦の要塞陣地など軍事施設をまとめて戦時遺跡という。考古学ジャンルとしてはかなりマニアックで、特別な要請がない限り、調査の対象にはならない。実際、私・奄美も調査というものをしたことはないのだが、対象となる中近世以前の遺構を壊して、それが構築されているのを目にしたことが何度かある。

 群馬県高崎市の外れには、長らく遺跡がないといわれていた場所があった。ちょうど関越自動車道前橋インター付近からイーオン高崎のあるあたりである。一メートル以上もある分厚い表土をめくると、直径二メートルはあろうコンクリート製排水管天井を壊し、小さな穴を空けてしまった。水が流れている音がする。地中に川を埋設したのだ。地元の人の話では、第二次世界大戦末期に造られた前橋飛行場の滑走路跡だという。とても大規模な造成跡があり、地面をならすため、何層も客土してあった。

 空港建設をするため、古い集落は強制的に取り壊されているため、古民家というのがなく、現在は田畑が広がり、そこを造成したま新しい建物がバイパス道に点在している。遺跡には対空砲陣地の砲座跡なんかがあった。残念ながら遺跡としての扱いはされていなかったため、調査はできなかった。

 茨城県水戸市の遺跡分布調査では、今は公園となっているため池のあたりでの、古墳の現況を視察するというものだった。このあたりにも旧軍飛行場があり、古墳やら横穴墓の横っちょに、墓室そっくりの窪みがあった。地元の人の話だと、航空機燃料貯蔵庫の跡なのだそうだ。

 この調査が終わるころ、拠点としていた元幼稚園だった施設の庭から、米軍の不発弾がでてきた。別件で遺物整理作業をしていた他業者が施設管理していた。責任者が、警察を通じて自衛隊に撤去を依頼していたのだが、なかなか来てくれず、都合一週間以上待つことになった。それでも作業員は避難はさせず業務が続いていたのである。紅白のピンポールを露出した爆弾を囲って地面に刺し、テープを結わえただけの処置だった。何事もなくて良かったと思う。

 一触即発の事態は、前回お話した神奈川県平塚市の遺跡調査だった。調査範囲は、丘陵地に築かれた、米軍上陸戦を想定して築かれた要塞陣地になっている。これも遺跡という扱いはなされていなかった。古墳時代集落のある斜面には、対空砲やら、防空壕があり、辛うじて、雑木の根っこで地面が支えられ、場所によっては、グラグラしているところもあったくらいだ。

 少し離れた他社が担当している調査区の対空砲陣地跡である。作業員さんが、「機関砲の弾をみつけたよ」といって、それを手に取り左右に振った。とても珍しい。遺跡全体を管理するゼネコン関係者、教育委員会関係者、各遺跡調査会社職員が、野次馬感覚で砲弾を囲んで、デジカメや携帯カメラで撮影している。砲弾は二十センチ強、径は五センチ弱というところだった。

 夕方で二十人くらいいた。気のいいゼネコン関連会社の重機のオペレータの小父さんは、股間にあてて、ちんちん、といいながら上下に揺さぶり、当時勤めていた会社の上司が、面白がってその様子をデジカメ動画撮影していた。

 ここでは警察・自衛隊が連携して迅速に動いた。

 夜、ゼネコンの所長さんと飲んでいてこの件の話題になった。

「処理班の人の話だと、信管が生きていて、あと二三ミリ押されたら、爆発していたんだとよ。殺傷能力半径三十メートルなんだとか……」

 ちんちん、ってやっていた小父さんが、地面に落としていたら全滅だった。

     了

.

ノート20130413

ついに100部め。『もう一度妻をおとすレシピ』第4集は、これにてお開き。出張先で画材がなかったとか、描いておいた絵がなくて出せなかった画集のパーツそろったので、ようやく完全公開できました。最後までご覧いただきました皆様には御礼申し上げます。では第5集でまたお会いしましょう。Adios!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ