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随筆/独身貴族はデートをしない

 人生の中で、単身赴任生活というのは、たぶん今年の夏を前に終わるだろう。ゆえに来月までの休日は貴重なものになる。独身貴族的ライフスタイルを楽しめるのも、あと一か月そこらになるからだ。

 平成二十五年四月十九日金曜日に辞表の封書を郵送で社長宅に送った。理由は、母が老いたことで、家を継ぐ必要が生じたからだ。再就職のほうは、まあ、なんとかなるだろう。根拠はないけど自信がある。起業するのも良い。そのために資格だの経歴だのがあるというものだ。

 さてさて、万年十九歳独身を詐称する私・奄美スイーツマンが学生のときのことだ。戯れに、占い師に手相をみてもらった。

「お客さんの友達は得をする。お客さん自身? 普通だね。熱いところもあるが、冷めたところが大半を占めている性格だから、それが災いする。情熱的な娘さんと結婚するといいよ。できれば年上の人がいいね。案外モテるみたいだ。破局するとしたら遊戯癖・ギャンブル相があるってところだね。ああ、それから、家族と縁遠い。そのくせ家長になるね。家族と縁遠いのは旅行運があるからだよ」

 モテるかいなかはさておき、矛盾する話ばかりだと思った。しかしそれから××年を経て当たらずとも遠からずな結果になった。

 遺跡発掘の依頼があればどこにでも行った。やることは一緒で、余暇といえば、自作小説の執筆か、資料整理ばかりやっていた。それ以外で見知らぬ町にゆくと、まずするのがレストランのチェックだ。

 洋食が好みなので、一番目がフレンチ、二番目がイタリアン、三番が鮮魚が売りの割烹食堂。そしてついでに喫茶店。ファミレスは珈琲が作り置きな上にティーパックなので入らなかった。ところが昨今は専用機を置いてレベルアップをしだしたのでファミレスにも入るようになった。

 二十一日日曜日。今朝がた、ファミレスのデニーズで、モーニングセットをとった。それから昼はアパートに近いフレンチ・レストランでランチを頼む。

 私は店に入るといつもやらかす癖がある。遺跡屋は土器で遺構の時代をみる。どうしても皿だの器だのをみてしまう。一種の職業病。デザートの後、コーヒーカップのソーサーをひっくり返してブランドを確認するだ。私にとっては儀式といってもいい。

 土器は氷河期が終わる一万五千年くらい前にアムール川にいた名もなき部族が発明し、それが世界中に、五千年くらいかけて、じわじわと、広がっていった。土器は地面に直接焚火をして作るか、ちょっとした穴を掘って焼く。

 中国で、五千年くらい前に、窯というものが発明された。煙突と天井のついた穴だ。そこで土器を焼くと高温だからけっこう硬い土器になる。釉薬を塗ったのが陶器だ。さらに二千年くらい前、磁鉱石というのが発見され、そいつで焼いて磁器ができた。十五世紀あたりまで、中国・朝鮮以外で磁器は作れていない。

 陶器や磁器は朝鮮半島から日本に伝わった。

 陶器の元になる、釉薬なしの須惠器は五世紀あたりに製法が伝わった。そのころの半島は小国がひしめいていて、よく滅びている。亡命者の中に陶工もいたというわけだ。陶器といえば瀬戸物、瀬戸物といえば愛知県から岐阜県あたりにかけてのものがメジャーになる。鳴海窯なんかもその一つだ。

 磁器はどうか。これは十六世紀末にあった朝鮮の役のとき、豊臣秀吉の軍勢が、朝鮮半島を攻略したが失敗。そのときに、陶工を拉致して、日本で磁器を作らせたのが始まりで、畿内の京焼や九州の有田焼が有名なところだ。維新の後、一時、有田焼は廃れ、ノリタケによって復興される。

 さて話を学生時代に戻そう。そのころ、宮崎アニメの『風の谷のナウシカ』が封切られ、私はオタ仲間と映画館にいっている。テレビのコマーシャルでは、ナウシカ・イメージガールとして売出した安田成美が歌っていた。当時のアイドルは愛嬌はいいのだがどうにも均整がとれていない容姿の娘が多かった。しかも歌が下手だときている。だが彼女は、当時としてはバツグンの容姿だった。惜しむらくは歌が最低レベルだということで、後にレコーディングされたという話は訊いたことがない。それでもアニメ映画がヒットしたので、成功を収めたということには変わらない。

 同じころ、お笑い芸人コンビの、とんねるずが、「ねるとん」という夜のバラエティー番組で売出していた。学内のイベントで、売出し中の彼らがきたことがあるのだが、出不精な私は会場にいかなかった。失敗。木梨憲武はほどなく安田成美と結婚する。

 ……で、オチね。とっくに気付いているでしょ、ナルミのいい人がノリタケだって。

    了

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ノート20130422

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