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漆黒の姫君(Caliburne Saga「1」)  作者: 首藤えりか
第四章・脱出不能の罠!?
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第四章・その三

事件の核心、それを求めていたカズンはその扉を開きます。

そして彼らを待っていたものとは?

 「いたたた…」

今頃になって痛み出したのか、きららが自分の首筋をさすっている。脇腹を殴られた私でも大きな重りぶら下げてるみたいにかなり疼いてるんだもん、ちょっと同情しちゃう…って、これはお互いだね。

「ああいう連中がもういるっていうのは大問題だなぁ…」

同じく首筋をさすりながらげんなりしているカズン。いくらプライバシーが保護されているオンラインゲームといっても、やっていいことと悪いこと、というのはあると思う。

「ほんと、なにか対策、取れないの?」

「もちろん運営会議で徹底的に対策を検討するさ! …って、それ以前に今ののトラブルを何とかしなきゃだが…」

カズンはひと通り憤っていたが、思い出したように急いで端末探しを始める。

「見つかんないねぇ、端末…」

きららがそう泣き言を言った時…

コツン!

大木の根元近くで、なにか異質な軽い衝突音。

「誰っ!?」

はっと振り返ったものの、誰もいる様子はないし…何だったんだろ?

「もしかして…?」

なにか気づいたのか、音のした方に駆け寄るカズン、そして…

「あったっ!」

どうやら端末を見つけたらしく、急いでそれを開くと慣れた手つきで操作を始める。

と…

「なんだよこれは、ここまでするのかよ…!?」

驚いたような、呆れたような表情でカズンは前方を見つめている。端末を操作する本人以外には操作デバイスもモニターも見えない仕様なんだ…

「どしたの?」

何も見えないもどかしさからか、きららもなにか不安そうに聞いている。

「三重のパスワードロックかけてやがる、あからさまにやりすぎだろ?」

「なによそれ・・・?」

あきれ果てているカズンの言葉に、私ときららは思わず声を上げてしまう。

「秘密主義らしいって言えばそうだけど、何か隠さなきゃならないことでもあるのかねぇ…」

言ってカズンが何やら端末操作をすると…

ふわっ…

おぼろげに四角い光源が浮かび上がり、次第にはっきりとしたモニターのものに変わってきて。

「…な、なにこれ…!」

画面にはパスワードウインドウが三つ重なって表示されてるだけ。いくらなんでも普通そこまで厳重にはしないでしょ?

「やばっ! ハッキングがバレた!」

カズンは慌てて端末を操作し、元通りのオブジェクトに戻すと私たちを立ち上がらせ

「なんか嫌な予感がする…急いでここから逃げよう!」

「えっ! どういうこと?」

不思議に思って私が聞くと

「システムにハッキング通報システムが組み込まれてたんだ。ハッキング元、つまりこっちの位置まで連絡するやつだよ!」

「まぢっ!?」

あまりに用意周到な罠に、きららも思わず愕然としてる。

「確証が持てないからなんとも言えないけど、今回は誰かが意図的にカマロンサーバに何か仕掛けてると思うんだよね。だからここまで警戒してたんだろうし、多少でも事情を知ってる僕たちはあいつらにとって非常に都合の悪い相手、口封じを狙ってくることも十分考えられるんだ」

「そ、それは・・・わからなくもないけど、でもそんなこと・・・」

「ありえない話じゃないよ、結果的に僕も産業スパイをしたって事実には変わりないし」

まだそんな事態が想像できない私に、しっかりと釘を刺すカズン。

「今の状態では下手に不用意な行動すると死ぬ可能性もあるってこと、これだけは肝に銘じるように!」

「う、うん…」

ダメ押しとも取れるカズンの言葉に、私ときららは生唾を飲んだ。


「…やっぱり来てる!」

そっと周囲の様子をうかがっていたカズンは、複数の足音を聞き分けて私たちを森へと誘導する。

「ほんとに来てるよ!」

物音だけでも二〇人はくだらないだろうという追手に、私たちはただ逃げるしか手段がないのが悔しい。けど、今選べる手段はこれしかないみたい。

それから数十分はたっただろうか、なんとか追手を振り切ったらしいと確信した私たちは、ひとまず休憩することに。けど、ここ、あの森のどの辺なんだろ…?

と、不意に背後でがさりという物音が!

「!」

全員が振り返る中、顔を出したのは…

「ネスト…さん…!」

みんなの声が不思議なくらいにハモる。そう、その姿は濃い青の服にごくごく軽い装備で身を包んだ美形の大剣使い、ネストさんと、そして…

「よっ♪」

後に続く暗灰色の…

「に、忍者!」

そう、以前グレートボアを瞬殺してみせたあのえらく長身の忍者男が!

「あんたらがやべぇ橋渡ってるみたいだべ、って伝えたらさぁ…」

忍者男は頭を掻きながらそう言うと

「おめぇも付き合え! って引きこまれちまったぺ」

目の下のくまにシワを寄せて、ニヤリと笑う。

「こいつはグレイ、うちの諜報担当さ。そして…」

さらに後ろから…

ごっつい鉄の塊が!

「…なっ!?」

カズンときららは平然としてるけど、私はさすがにちょっとびっくり! だって、巨大な岩のような重装備の男の人が顔を出したんだもん!

「来てやったぞ」

重装備の男は無愛想な口ぶりでボソリと言う。

「こいつがうちの切り札、ハンマー使いのダイゴだよ!」

「ほえぇぇぇぇ…」

フルプレートメイル、って言うんだっけ? 隙間なく全身を覆う頑丈そうな鋼色の防具は、団長ネストさんとは違うたくましさだよね! フェイスガードを開けたその顔はあくまでも無愛想そうで、ちょっととっつきにくいものがあるけど、ま、そういう人なんでしょ。

「で…」

そこでちょっと言いにくそうなネスト。なにかな? とみんなの視線が彼に集まる。

「事の次第を説明してくれないか? 今の状況が俺にはさっぱりわからないんだ」

…こけっ!

ま、まぁね、確かに私たちも極秘に調査してたし、というか、成り行き上仕方なかったんだけど…

カズンが今までのことを細かく説明すると

「うへえぇ、お前ビーコムの手先だったんだ!?」

「いや、ただのシステムチェック担当なんだけど…」

驚くネストにもじもじしながら答えるカズン。って、その関係ってちょっと危なくない?

「なんか恋人同士みたい♪」

きららが茶化しているけど、ほんとカズンってパッと見が美女そのものなんだよね、変な意味じゃないけど、見ようによったらいいカップルっぽいよ?

「ま、冗談は置いといて、だ…」

「もしお前の予想が正しいなら、許せねぇな、そいつら!」

真顔に戻ったネストのドスの効いたセリフに、私たち全員がコクリと頷いていた。

正体の見えない敵、敵の首謀者は? そして目的はなに?

真相を追い求める主人公たちの逃亡生活、まずは敵を振り切らなければ!

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