第八章・その三
超巨大作戦が決行され、四元龍たちが城壁に迫る!
自らの命をかけてプレイヤーたちはこの巨大な敵との戦いを開始します。
一〇時が来て、正門の前に集まったプレイヤーたちの数はすごいもので…
もう広い街道がぎっしり埋まるほどの人数だったの。人数的には一万人前後いるかも知れないね。
ターゲットがゲーム最強と言われる四元龍、つまり四大元素を操るという巨大モンスターとあって、ほとんどのプレイヤーが重装備で集まってる。楯と槍を持つプレイヤーも多いし、大剣やハンマーを持つ人もいっぱいいるし…
逆に片手剣や双剣といった小型武器を持つ人は少ないかな? あと軽戦士風の身なりの人も。
「皆さん、準備はいいですか?」
正門の前に立ったルミネスが大声でみんなに呼びかける。たちまち沸き起こる盛大な歓声、それは準備万端というみんなの返答を表してるみたい。
「防衛陣ですが、前衛は片手剣、ランス、シールドキャノンのガード主体プレイヤーで固め、次に双剣、太刀、大剣が立つとしましょう。ハンマーは遊撃手で好機を逃さぬよう四元龍の頭を狙ってください!」
城の正門前に集まったプレイヤーたちを前に、ルミネスは手早く作戦指示を出す。
「俺たちはどうすれば?」
意外と大勢いる弓使い、そのプレイヤーの一人が聞くと
「弓使いの方は城壁に上がり、接近してくるドラゴンを迎え撃ってください。そして十分な装備を持っていない方々は皆さんの救護に! では、城門を開きます!」
ルミネスの合図で城門が重い音を立てて開かれる。正面に広がる広大な畑と草原はまだ静かで、何かの近づく気配は伝わってこないけど・・・
「うっしゃ、俺らもやるぜぇ!」
赤と黒を基調にした、比較的軽装の防具に太目の長い双剣を背負ったノマドが続く団員たちにハッパをかける。盛大に喚声を発して続く取り巻きたちは全員がかなり長めのランス使いで、重そうな重装鎧に巨大な楯を並べてきれいに横一列に整列している。そしてノマドの隣にはあの怖い女団長、プラムが要所のみに厚手の鎧を装備して立っている。
「ファランクス隊形かよ!」
少し驚き加減のネストが、それでもちょっと感心したように呟いてる。これって有名な陣形なの?
そしてランス横隊の中央には同じく重装備に巨大な楯と太い筒? を持ったヒロロが。って、あの武器なんだろ?
「シールドキャノンとは珍しい武器を・・・」
愛用の重そうな鎧に巨大なハンマーを担いだダイゴも珍しそうに彼を見てる。そしてきららはというと、先日買ったばかりの赤いゴスロリドレスと防具、私と色違いの一揃いを着て私にウィンク、上物のツインカリバーンを構えて見せる。
「今回は決めちゃうぞ♪」
い、意外と様になってるんですけど!?
カズンも新品らしい大きめの長い楯に同系の丈夫そうな鎧一式と長めの片手剣、これも結構強そうかも♪
ネストは…いつもの青い軽装鎧に大剣ね。
運営メンバー、クラトス聖騎士団は白を基調とした騎士鎧に巨大な長方形の楯とランスで統一し、中でもルミネスは同じ楯を持っているけど赤いマントと太い片手剣で武装してる。聖騎士団は2組に別れるらしく、ルミネスを中心とした横隊と、武器をハンマーに持ち替えたライアスを中心としたT字隊形を組んでいる。
「まず前衛がドラゴンをガードで足止めし、左右から双剣や大剣、太刀が交互に攻撃します。前進が止まったら前衛はドラゴンを牽制しつつ両側面に展開し、すかさずハンマーが頭部を狙う、その作戦で行きましょう!」
「了解!」
ルミネスの指示に合わせてプレイヤーたちが随時隊形を組み替える。私たちのパーティーが前衛不足と見たプレイヤーの何人かがランスや片手剣の前衛隊形を整えてくれて…
「よろしく頼むぜ!」
「一緒に頑張ろう!」
カズンとともに鉄壁のガード態勢を整える。
たちまち城の周囲に、前衛に楯を構えた剣士を揃えた、三段構えの隊列がずらりと並んだ。
しばらくは静かな時間が過ぎていたけど、やがて地鳴りが一帯を包みはじめ、草原の彼方にいくつもの黒い塊がかなりのスピードで近づいてくるのが見えたと思うと…
「な、なんだあれはっ!」
誰かが叫んだその先には、とてつもなく巨大な赤いトカゲ状のモンスターが!
「で、でけぇ!」
みんながあまりの驚愕に、一様にざざっと後ずさる。
「前衛、ガードだ! 炎龍を止めるんだ!」
ルミネスが正面に立ち塞がり、すぐにずらりと聖騎士団が左右に並ぶ。
ぐわしっ!
炎龍の頭がまともにルミネスの楯にぶつかり、ずざざっ! と彼がかなりの距離を押し返された。
すぐに騎士団が左右から楯で押し返し、双方の動きが一瞬、止まる。
「攻撃開始!」
ルミネスの指示が飛び、後ろに控えていたプレイヤーたち、双剣や太刀を持った剣士が飛び出し、側面から果敢に斬り込んでいく。
グアアアッ!
太い咆哮と火炎を上げて暴れる炎龍に、じわりっ、と騎士団が押され始めるが、息を合わせて踏み止まる。
「ハンマー前へ!」
的確な指示の元、騎士団が左右に広がり、すかさず巨体のハンマー使いが正面に踊り出る。
「おりゃあぁぁっ!」
ハンマーとともに豪快そのものの喚声を上げると、彼は渾身の一撃を炎龍の額に叩き込んだ。
ぐわしっ!
鈍い音を響かせた炎龍が大きく怯み、騎士団が鋭い槍を次々と突き込んで行く。続けてハンマーの第二撃が顎を突き上げ、炎龍が大きくのけぞった。
「総攻撃!」
ハンマーを中心として、全員が一気に反撃を開始、炎龍はたちまちのうちにズタズタにされていく。
オオォォォォォォッ!
遠吠えのような長い絶叫を上げた炎龍は、それっきり動かなくなった。
「やったぞっ!」
「ナイスファイトっ!」
他のチームや城壁の上からも、長く惜しみない歓声が届く。
「次来ますよっ!」
警戒を怠らないようにとルミネスが鋭く叫ぶと、前衛一同が改めてガード隊形を整える。
そして…草原の彼方から数百頭以上もの雑多なドラゴンが、草原を埋め尽くそうかという勢いで姿を現した。
プローニャの街には「彼ら」がいた。
彼らはそこで何を見、何を考え、何を決行するのでしょうか?