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漆黒の姫君(Caliburne Saga「1」)  作者: 首藤えりか
第七章・傭兵団・プラチナソル
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第七章・その二

プラチナソルメンバーと変に親しくなったゴッドハンドの一同。

けどそのきっかけって・・・?

 あれから…

なぜかプラチナソルのメンバーと親しくなっちゃった私達は、とある場末の酒場に引きずられるように誘われて…

「よぉ兄弟! 今夜は俺のおごりだ! バンバンやってくれぃ!」

変に上機嫌の武骨な副団長。名前を…ノマド、とか言ったかな? 戦士というより、その辺の農家か土方のおじさん、という感じの人なんだけど…

「いやいや、それじゃあこっちも気兼ねしちゃいますよ。ここは一つ割り勘で…」

ネストは気を使って譲歩してる。まぁ知り合ったばかりの相手に借りを作りたくないってのもあるのかもだけどね。

「にしてもかわいいねぇ君、ほんとうちの傭兵団に来ないかい?」

ヒロロとか言う妙にキザなお兄さん…でいいのかなぁ、が馴れ馴れしく言い寄っては来るけど

「や、やだよぉ…」

私、そういうの嫌いなんだもん。

「そうそう! あっしらもいろいろお世話させてもらいますぜぇ!」

「俺なんて毎回座る椅子を事前に拭かせて貰いますだ!」

「じゃあ俺は毎回おしりを拭かせて…」

「それは許さねぇぞっ!」

取り巻きたちもなんか色々言っては来るけど…

「そういうの、結構です…」

やっぱやんわり断らなくちゃ、と静かに告げると

「おんやぁ? これくらいのサービスじゃ物足りないのかぁ?」

「ぜひぜひなんでも言ってくだせぇ!」

…だからそういうのが嫌なのに…シクシク

「まぁまぁその辺で、本人も困ってることですし…」

カズンが間に割って入ってはくれてるけど…

「なんだぁ!? 俺らの邪魔をしようと?」

「ガンつける気かっ!」

…って、さっきとぜんぜん態度違うんですけど。

「やめんかーっ!!」

ちょっと険悪な雰囲気になってきたなー、というところでノマドの酒場そのものを震わせるような一喝が炸裂! 一気に事態は収束しちゃった。

「いやぁ、すみませんなぁ。今度からしっかり教育しますんで!」

ノマドはこっちに向かってペコペコ、だ、だからその態度の変わり様はけっこう怖いんですけど…

「とにかく酒だっ! どんどん持ってこーいっ!」

彼はさらに振り返って、通りすがりのウェイトレスを捕まえて胴間声で注文する。

「は、はいっ!」

びくりとして厨房に走るウェイトレスは…あれ? まさかプレイヤーキャラの人?

長い黒髪に顔のそばかすがちょっと目立つけど、何か妹キャラ風のちょっとかわいらしい人だよね。

制服は黒いミニ丈のメイドドレスって感じ。スタイルもまぁまぁだからけっこう人気あるかも。

にしても…ここってもしかして、プレイヤーキャラだけで運営してたりするのかな?

「お待たせしましたっ!」

言葉ほどは待ってないけど、とか思うけど、この辺は営業スマイル、妹キャラ風だからニコッと笑うと、男の人ってちょっとかばってやりたくなるものかもね、とか思ってみたり。

「もしかしてプレイヤーさん?」

「ええ、そうですけど…」

物おじしないきららが聞くと、あっさり返事。やっぱそうなんだ…

「にしても酒場のウェイトレスさんとは変わった職業選んだのね」

「ええ、アクションゲームなのはわかってるんですけど、私、怖いんですよねー、チャンバラとか。でもそういう話題とかはけっこう好きで、酒場に勤めたらそういう話題、聞けるのかなぁって」

「へえぇ、言われてみればそうかもね!」

ふむふむと納得するきらら。私もその気持はわかるなぁ、なんてちょっと頷いてたり。

「あ、ごめんなさいっ! 向こうの人が呼んでるみたい!」

慌てて他の客の呼び出しに応対に行く彼女。やっぱ戦士系を選ばないプレイヤーさんもいるにはいるんだねぇ。

そんな中でも浮いてる人が…2人。酒そのものに興味が無いのか、それとも人と話すのが嫌いなのか端の方の席でツマミらしいものだけを黙ってぽりぽりやってるグレイと、ちょっと私の仲裁に入ってくれた以外はひたすらメニュー・ウィンドウと格闘し続けているカズン。誰かとメールの交換でもしてるのか、その手は仮想キーボードの上を目にも留まらぬ速さで打ち続けている。

「やっぱりそうか…」

そのカズンがいきなりぽつり、とほっとしたように呟いた。

「どしたの?」

こっそり聞くと

「もう僕達の体は病院についてて、完全看護されてるってさ。うちだけじゃなく、カマロンもいろいろ対策に苦労してるらしい」

「…どゆこと?」

「カマロンの技術担当の者がみんないなくなってるらしくて、サーバー室にすら入れないんだって」

「なにそれ…?」

「失踪したんだってさ、警察でも行方探してるらしいけど」

「へえぇ、失踪ねぇ…」

淡々と話してて、ふっと我に返る私。

「えっ? 技術担当が全員失踪!?」

あまりの驚きについ大声を出しちゃう私。つまりそれってビーコムだけで対処するしか無いんじゃ?

「なんだーっ? 失踪がどうしたってぇ?」

もうべろんべろんのネストさんがぼんやりしながら反応する。

「あ、こっちの話♪」

慌ててとぼけるけど、これはまだ黙ってたほうがよかったかも…

「あ、でもでも、なんで向こうのメンバーが失踪したの?」

「たぶん誰かが裏で糸引いてるなぁ…詳細は不明」

「じゃあ打つ手なしなんじゃ?」

「うん、打つ手なし!」

「そなんだ…って、じゃあ私たち、永遠にログオフできないのぉっ!?」

つい大声を上げた私の口を、慌てて押さえるカズン。

「しーっ、声が大っきいっ!」

小声でだけど、しっかり怒られちゃいました。

けど、私の大声にみんながきょとん、と反応して…

「てめぇっ! 何やってる!」

「抜け駆けする気かっ!」

私の口を押さえているカズンに気づいたプラチナソルメンバーが、一斉に怒りのブーイング始めちゃったの。

これはやばいよぉ…

「あ、あのですね、これは…その…」

「俺らの姫君からそのキタねぇ手をどけやがれっ!」

「そうだそうだっ!」

「だから落ち着いてっ!」

慌てるカズンに対し、怒りの輪はどんどん勢力を増していく。そこではっと気づいたカズンが急いで手を引っ込めると…

「やっちまえっ!」

誰かの掛け声で一斉にカズンに迫るプラチナソルメンバーたち。

「やめてえぇぇぇっ!!」

私、もうびっくりしてつい大声で叫んじゃったら、みんなすごすご引き下がってはくれたけど…

あ、カズンのほっぺに青あざができてる…

「…ダイジョブ?」

「あ、ああ、でもけっこう痛かった…」

「ごめんね、私がつい大声出しちゃったから…」

「いや、驚いて当たり前の話題だったからね、いいよ」

まぁそんなこんなで宴会の席もしらけちゃったので、私たちは酒場の二階に宿を借りて休むことに。

プラチナソルのメンバーもそれぞれねぐらに帰ったのを見計らって、私たちはネストさんの寝室に集まったんだけど…ネスト、大いびきかいて寝ちゃってるよぉ!

「ひとまずみんな、今夜は休むか」

副団長であるダイゴの一言で、みんなすごすご各自の寝室へ。けど…ダイゴかなり飲んでたように見えたけど、酔ってないのがすごいなぁ…

「珍しくダイゴが泥酔してたねぇ」

私の隣を歩きながら、呆れたようにぽつりと言うカズン。

「あれ、酔ってたの?」

「あの人、酔うと目がすわっちゃうんだよね。見た目は全然変わんないんだけど」

「へえぇぇ…」

いろいろあるのね、酔い方、っていうのも…

にしても、ログオフ出来る見込みが全然ないなんて、けっこう怖いなぁ…

きららとの相部屋でベッドに潜り込んだ私、でもその日は変に目が冴えてなかなか寝れなかったのよねぇ。

団員一同の中でも新人プレイヤー、つまり私ときらら、カズンの戦力不足を心配しているネストは、新たな課題をふっかけます。

その課題とは?

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