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漆黒の姫君(Caliburne Saga「1」)  作者: 首藤えりか
第七章・傭兵団・プラチナソル
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第七章・その一

傭兵団「ゴッドハンド」のメンバー一同は、新たな本拠地を求めてクラトスの街に到着します。

そこに現れる一団、それは・・・?

  第七章・傭兵団・プラチナソル


 クラトスは人口九千人と言われる、トラヌ自治都市群内でも指折りの大都市。

もちろんプレイヤーキャラの流入もそれなりに始まってて、この様子だとすでに二万人を越えてるかも知れないね。

現代なら一万人程度は田舎街でもざらだけど、この世界の狩猟や原始的農耕主体の生活では、それ以上に人が集まっても食料の確保が難しいらしくて、設定では九千人ってなってるけど…

まぁ、人口五千人設定のプローニャの街とは規模が倍も違うって話。

しっかりと整備された商店街は、全てがしっかりとした建物で、露店の類は見られないし、門にはNPCの衛兵が数人と受付嬢の姿が見える。

私たちが街の門に着いたのは夕食にはお手頃な時間帯で、街のあちこちから食欲をそそる肉やパンの香ばしい匂い、野菜のみずみずしい香りが漂い、私たちの胃を刺激する。

「お腹すいたねぇ」

「街に入ったらどこかレストラン見繕って食事にしよう」

などという会話をネストさんとしながら歩いてたら…

「待てっ!」

いきなり恐面の大柄な衛兵に呼び止められちゃった。

思わず敵の回し者かと焦っちゃったけど、どうやらほんとにNPCの衛兵みたいね。

「傭兵団ゴッドハンドの団長、ネストと団員その他計五名、本拠地移動のために来ましたっ!」

「傭兵団か、了解した。受付で入国手続きをとるように!」

きまじめに報告するネストも変だけど、変に威張って見せる衛兵もどこか変かも。

「さて、新居を構えるか!」

受付のサインを手早く済ませながら冗談めかして宣言するネスト。

続くみんなもテキパキとサインを済ませ…

「名前が違いますが?」

ついエステルと書いた私に、受付嬢が鋭い指摘。

「あ、そだった…」

頭を掻きながら、慌ててエステラーニャと書き直す。ほんと名前くらい変えさせてくれてもいいのに…

「とにかく、今は飯だ!」

「おおっ!」

ネストの宣言にみんなの元気な声がハモった。


一番豪華そうなレストランを見つけて入ってはみたものの、味付けは…うーん、まぁまぁかな? 花屋の収入は傭兵と比べるとかなり少ないから、いつも懐の心配な私が文句言える立場じゃないし…

「食った食った!」

それなりに満足したらしいネストはそれでもご機嫌そう。まぁお腹はいっぱいだから…私も満足かな♪

「今夜はどこに泊まろっか?」

めぼしい宿をあさりながら、きららはみんなに問いかける。

「私は…みんなに合わせるです」

金欠状態の私は控えめに小声でボソリ。やっぱ立場上わがまま言えないもん。

「ねぇ、あそこのホテル、オシャレでいいと思わない?」

「俺はこっちの落ち着いた宿の方が…」

きららとダイゴはそれなりに自己主張、カズンはというと、何やら運営と連絡をとっているらしく、必死にメニュー・ウインドウを操作してるし、ダイゴは…あれ? なんかえらく警戒してるけど?

「…来たな…」

「ああ…」

ダイゴと目で会話していたネストが、押し殺した声でみんなに警告を出した。

そこに現れたのは…

さして長身というわけではないが、がっしりとした体格の無骨な男と、すらりとした妙にキザったらしい長い金髪の青年。無骨な男はかなりの業物と見える長い太刀を背負い、キザ男は巨大な楯とともに太い筒? のような物を背負っている。

その後ろにはいかにも取り巻き、といった十人あまりの傭兵たち。

「…見ねぇ顔だな? ここは傭兵団プラチナソルの縄張りだと知ってて来てるのかよ!?」

言葉と異なり、あらかさまに敵意を剥き出しにした無骨な男はリーダー格みたい。同時に取り巻きが揃ってガンつけてきたんだもん。

「元プローニャの傭兵団、ゴッドハンドの団長ネストだがそれがどうかしたのか!?」

負けじと凄みを利かせて答えるネスト。二人の睨み合いはしばらく続いていたが…

「あーっ!!」

後ろのキザ男がいきなりこっちを指差して叫び出し、その緊張が一気に崩れたの。

「いきなりどうしたヒロロ? 今大事な時だってわかるだろうが!」

「けど副団長、こいつめっちゃかわいいからうちに欲しいんだよ!」

ヒロロと呼ばれたキザ男はこっちを指差しながら駄々をこねる。

「なにわがまま言って…!?」

頭ごなしに怒鳴りかけた無骨な副団長は、そこまで言いかけてこっちを見るなり言葉を失って…

「め、めんこいべっ!」

鼻の下をだらーんと下げ、とろけるような眼差しでこっちを見ている。

「副団長、よだれよだれ!」

取り巻きその一に指摘されて、慌てて口元を拭う副団長。けど、あの人たちが見てるのは…?

きららは私の隣にいるから…うん、きららだねっ♪

「ねぇきらら、あの人たちあんな事言ってるよ?」

私がきららにそっと耳打ちすると、きららは私をじとーっと見つめて…

「あれ、えっちゃんのことだよぉ…」

拗ねたように囁き返してきた。って…まぢっ!?

「そこの黒ドレスのお姫様、どうかプラチナソルにおいでませ♪」

さっきとは打って変わった猫撫で声で呼びかけてくるのはあの副団長。そして一緒に手招きして来るヒロロ以下取り巻きたち。

なぜか周囲はすごい人だかりになっていて、その視線は一点に…って、それが私だなんてっ!

「その姫様はお前のとこの団員か?」

副団長とやらがふと気になって、ネストにそう問いかけると、ネストはご丁寧にも

「うんにゃ、うちで預かってるだけのただの元花屋の店員だ!」

なんて答えたものだから、周囲の輪が更に狭くなって…みんなギラギラした卑猥な目で見てるよぉ。

「助けてカズン、あの人たち怖いっ!」

必死にカズンの後ろに回り込むけど、どこに回っても周囲の視線から隠れることはできない私。

「やめろっ! この子は、俺の…、俺の…」

私を庇いながらカズンはそこまで言うと言葉を詰まらせ…

「俺の…なに?」

「俺の…従姉妹だっ!」

こけっ!

搾り出すように叫んだカズンの一言に、私たち全員が思いっきりこけていました…

ひょんなことから傭兵団「プラチナソル」とのかかわりを持ち始めたネストたち、今後「プラチナソル」とどんな関係となっていくのか?

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