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第五王子青牙の書いた筋書きは、歴戦の参謀である翡翠から見れば、とても甘い計画だと言わざるを得なかった。
秦を動かす──確かにそれは可能だろう。だが、肝心の日数について、彼はまったく考えていなかった。
王宮内における権力闘争で疲弊した王都で、戦を起こすために一体どれだけの費用が掛かるのか、兵をどれだけの人数集めるのか、その人数分の武器と食料を揃えるのに掛かる日数は何日なのか、それだけの計算をするだけでも数日掛かるのに、実際に人や食料を集めれば、軍事大国の颱であれば三日で終わるだろうが、通常であれば数ヶ月はゆうに掛かる。
その間に、巍と颱の戦は終わってしまうだろう。
それでも犀蒼瑛は、他の武将達は、青牙の策を受け入れた。
今すぐ巍を潰すためでなく、現巍王を戦場へ引きずり出すための方策として。
元々戦上手な秦国は、常であれば機を見るに聡い者達ばかりである。
匿名の書状が来れば、おそらく間諜を国境付近に寄越すことだろう。
事実を探り出し、前王の無念を晴らすべく、彼等は能力の最大限を引き出して、あらゆる情報を手に入れようとするだろう。
そうして望んでいた以上の収穫を手に入れた彼等は、巍を叩く、一番効果的な機会を探るはずだ。
そのために、颱は何度でも巍を相手にしなければならないのだが。
命を受けた密使は、誰にも知られずに颱を発ち、そうしてふたつの国を目指した。