第六話:城塞都市アルクス
馬車というのは、想像以上に乗り心地が良くない。
クッションが欲しい――揺れる荷台に寝そべった俺は、胸中でぼやいた。かれこれ半日近く馬車に揺られているので、いい加減身体が痛くなっている。
それでも横になっていられるのは、エレンの柔らかな太ももを枕にしているからだ。そうでなければ、今頃俺の後頭部はコブだらけになっていただろう。
あの後、俺はあの村で一晩を過ごした。どうやら村は元々廃村で、そこに彼らが勝手に住み着いていたらしい。
案内された部屋で、俺はエレンに、幾つかの質問をした。
《ネバー・エンディング・ストーリー》という単語に聞き覚えはあるか。PC、NPCとは何かわかるか。《ドリームマシン》は? 日本、アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアという国名を知っているか――返ってきた答えはすべてNOだった。
いくつもの質問を重ね、その結果解ったことは、ここは俺の知っている世界ではないく、そして何故か《NES》の世界に類似した点があるという、俺の推測を裏付けるものであり――同時に、その推測を否定するものだった。
エレンによれば、ここはルイゼンラートという国の、バスカヴィル伯爵領という場所らしい。俺の記憶が正しければ、そんな国名は《NES》に存在しなかった。
怪訝に思い、持ってこさせた地図に記された世界は、《NES》のワールドマップそっくりだった。しかし地図に記された、ルイゼンラート以外の国名にも覚えが無く、その国境も俺の記憶と一致していない。
この世界は何故か《NES》に類似している。しかし全てが同じというわけでもないようだ。いずれその違いに足をすくわれるかもしれない。
そして、地図に記入してある文字は少し崩れてはいるが、アルファベットだった。川、山、海、街道など、国名以外の単語を拾い上げてみると、使われているのは英語だと解る。
しかしエレンたちが話しているのは日本語だ。確認してみると、漢字、カタカナなど日本の文字は知られていないようだった。
日本語で物事を理解し、書き記すときはわざわざ英語を使っているか、あるいは理解は英語で、話すときは日本語なのか。どっちにしろ不自然だ。英語はともかく、日本語というのは「書く」と「話す」が密接に関わっている。漢字を抜きにして日本語を理解することなど出来ないはずなのだ。
この世界はおかしい。
だが、事実としてこの世界の人間は――少なくともこの国の人間は――そういった摩訶不思議な言語を使い、しかも俺は今、その世界の土を踏んでいる。細かい疑問は後回しにして、今は言葉が理解できることを素直に喜んでおくべきだろう。
俺は日本語はもちろん、英語もそれなりに習得している。父の「これからの時代、英語くらいは出来ないと社会でやっていけない」という意見に基づき、俺も妹も小さいころから英会話教室に通わされていたからだ――しかし流石の父も、まさか息子が異世界で英語を役立てることになるとは思わなかっただろう。
とりあえず生活基盤を確保すべきだ。俺は声に出さず、呟く。
最大の問題、つまり生存に関してはそこまで難しくない。朝になってから身体能力やスキルを細かく確認したが、今の俺にはPCの――対人戦闘に限れば《NES》で最強クラスであった《ソラト》の能力が備わっていた。盗賊になる前には傭兵の真似事もしていたというライオネルに、この世界に生息しているモンスターやその強さ、そして昨夜の騎士の力量とその位置づけを比較させた結果、俺は常識外れと言って良い強さ備えているようだった。
この野蛮な世界で単純な戦闘能力ほど心強いものはない。エレンから聞き出した範囲では、この世界ではちゃんと文明社会が存在するものの、まだ未発達であり、野蛮だ。司法も未成熟だし、街の外などほとんど無法地帯と変わらないようである。
――だからこそ、楽しめることもあるのだが。
人を殺す感触を思い返し、俺は口の端をつり上げる。
「如何なさいましたか?」
「いいや」
尋ねてくるエレンに手を伸ばし、彼女の腰をさすりながら、昨夜の情事を思い返す。
エレンの見目は悪くないし、何より処女だった。性病のまともな予防、治療方法がありそうに無いこの世界では、「使用済み」の女なんて怖く抱けない。つまり、女を犯すにも気を使わねばならないのだ。しばらく性欲の処理はエレンで行うべきだろう。
――いや、俺は《調合》スキルを習得している。毒薬ばっかり作ってたが、まっとうな薬を作れないわけじゃないんだ。状態異常を回復するポーションで、病気の類も治るかも知れん。
《索敵》のように《調合》スキルも変化してる恐れがある。実験が必要だ。薬も、毒も。
「見えてきたぜ。アルクスだ」
『人体実験』という素敵な響きに心を躍らせていた俺は、ライオネルの言葉に身体を起こした。
馬車に居るのは俺とエレン、そして御者台に座るライオネルだけだ。他の連中にはアジトの移動を命じてある。兵士は全滅させたが、あの廃村はすでに目をつけられているのだ。ぼやぼやしてたらまた兵士が――今度はもっと大勢で――やってくることになる。
雑事をするつもりがない俺は、ライオネルに近くで一番大きな街――バスカヴィル領最大の都市であり、領主の膝元である城塞都市アルクスへと案内させた。いろいろと手に入れたいものがるし、情報も集めたい。何より俺は廃村で生活する気などさらさら無いのだ。しばらくはアルクスを拠点に活動するつもりである。
廃村からアルクスへは馬車で半日ほど。盗賊である彼らは交通の多い場所、つまり最も栄えてる街の近辺を根城にしていた。合理的ではあるが、そんなところで盗賊なんてやってたら直ぐに討伐されるに決まってる。
それでもかれこれ数ヶ月の間、彼らが生き残っていたのは、被害が小さかったため――つまり小物だったので、手が空くまで放置されてただけではないかと俺は思ってる。
「あれか」
荷台を覆う幌から顔を出すと、遙かなる道の先に、大きな壁が――城砦都市アルクスの城壁が見えた。
ルイゼンラードという国名と同じように、アルクスという街の名にも聞き覚えは無かった。そして実際に訪れて解ったことは、見覚えもないということだけだ。
アルクスは城砦都市の名に恥じず、街全体を大きな城壁が覆っている。更に内部にはもう一枚城壁があり、つまりアルクスは二重の城壁に囲われていることになる。
というよりも、都市の発展と共に壁の外にも家屋が建てられ、それを覆うためにもう一枚の外壁が作られたのだろう。城塞都市には良くあることだ。アルクスが更に発展し、土地が足らなくなればまた壁の外にも人が暮らし始めるに違いない。そしていずれ、もう一枚の壁が作られるのだろう。
経緯はどうであれ、二重の城壁というのは都市の防衛という点において非常に高い効果を発揮する。ここから更に北にある砦が建設されるまでは――いや、建設された今でなお、ここが王国北部防衛の要であるらしい。
「しかし、せっかくの城壁も、番兵があれではな」
城壁の入り口には番兵がいた。が、聞かれたのは名前と、どこから来たのかくらいだった。身分証の提示すら求められない。もっとも、この世界には戸籍があるかすら怪しいので、身分証なんて持ってないのが普通なのかもしれないが。
さらに驚くべきことは、税金を取られたり、荷物を詳しく調べられることも無かったことだ。これではせっかくの城壁も意味がない。俺がアルクスを攻めるならば、少しずつ旅行者に見せかけて兵を送り込み、内部から制圧するだろう。
「もともとアルクスは交易によって栄えた街ですので……あまり人を遠ざけるような真似は出来ないのだと聞いたことがあります。ですが、二枚目の城壁では厳しい審査があるそうです」
短い間とはいえ、アルクスで暮らしていたらしいエレンが俺のつぶやきに答えた。
彼女の答えに、俺も一応は納得した。怪しい者を片っ端から拒めば治安は保たれるだろうが、代わりに物流が滞って衰退するというわけだ。
しかし人にも品にも税をかけないんじゃ、いくら人が集まっても金にならないだろう――そう思ったが、直ぐに答えに思い当たった。
人にも品にも税が掛からないなら、商売に税をかけているに違いない。おそらくこの町で店を出し、続けるには、結構な金が掛かるはずだ。聞けば、然るべき所に申請さえすれば、露店や屋台の類は簡単に出せるそうである――もちろん、申請には金が掛かるが。
「なあ、まずはどこに行くんだ?」
「服屋だ」
ライオネルの問いに俺は即答する。
今着ている服はサイズがあっておらず、着心地が良いとは言い難い。それに何より、貧相だ。もっと良い服を手に入れるべきである。
街を歩き回り、俺が見つけたのは古着屋だった。エレンに訊ねて知ったが、この世界で衣服は仕立て屋が注文に応じて手縫いするものらしい。当然値段は高くなり、王侯貴族か裕福な商人しか買うことが出来ない。では庶民はどうしているのかと言うと、自家製のものを着るか、古着を購入するのである。古着は裕福な人間のお下がりなので、くたびれてはいるものの立派なものが少なくない。大金持ちになると一回着ただけで手ばなす者すらいるので、そういった新品同然のものを安く手に入れることも不可能ではないらしい。
俺はかなり時間をかけて選び、黒地に銀糸で刺繍が施された、上等な服を選んだ。更に同じく黒のゆったりした外套を羽織る。店には靴も置いていたので、頑丈そうな皮の長靴を選ぶ。
支払いは、殺した兵士達の懐を漁って手に入れた金で払った。このルイゼンラート王国ではルイゼンラート硬貨――銅貨、半銀貨、銀貨、半金貨、金貨の五種類が使われている。他国の通貨を使えるのは国境沿いの町か、他国でも商売をしている商人相手くらいらしい。他の場所では両替商に両替してもらうしかない。
他に紙幣――ギルドごとに発行しているギルド紙幣というものあるらしいが、詳細は解らない。
服の次は武器屋に向かった。場所は古着屋の店員に尋ねたので、探し回る事は無い。
「武器って……手に入れた剣があるじゃねぇか」
何も解ってないライオネルの言葉に俺は皮肉っぽい笑みを返した。
「装備に妥協するのは、馬鹿のやることだ」
現在、俺の装備は殺した兵士から奪った剣だ。《鬼蜘蛛》――なんて大層な名前を、盗賊団は名乗っていた――の連中が装備しているのも同じである。
質としてはそれなりで、決して悪いものではないのだが、やはりもともとは他人の持ち物である。だから俺は、今ある装備をいくらか売り払うつもりだった。幸いにも、現在の盗賊団の人数からすると。手に入れた装備の数の方が多いのだ。ある程度予備は必要だが、それでも余裕がある。いらない武器を売った金で、改めて自分に合う装備を買いなおせばいい。
少しばかり馬車を走らせた後、剣を二本交差させた看板を見つけることが出来た。入り口の両脇には武装した男が二人、立っている。俺達が近づくとじろりと視線を向けてきたが、特に何も言われなかった。
「いらっしゃい」
武器屋に入った俺を出迎えたのは、意外なことにまだ若い――といっても俺より年上だろうが――女だった。こういう店はいかにもな頑固親父が経営しているものと相場は決まっているのだが……単なる偏見なのは解っている。
「あら、可愛いお客さんだ」
カウンターに頬杖をついて座っていた店員は灰色の髪をかき上げると、けだるげな声でそう言った。
「そっちこそ、随分と魅力的な店主さんだ」
「残念、ただの雇われだよ。で、坊や、なにが欲しいんだい?」
ひょっとして店主の娘か何かだろうかとも思ったが、雇われの店員らしい。
それにしても『坊や』か。まあ、年上の美人に呼ばれるなら許そう。
「短剣とナイフを幾つか見せて欲しい」
「長剣じゃなくていいのかい? 坊やくらいの子供は大抵、立派な長剣を欲しがるよ」
俺の注文に、店員はからかい混じりの笑みを浮かべた。俺はそれに、にやりと笑みを作って返してやった。
「幼い憧れだな。でも、そう馬鹿にしたものじゃない。その子供達の中から、未来の英雄が生まれるかもしれないんだから」
店員の娘はそれもそうね、と頷いた。彼女の目から侮りが消え、変わりに面白がるような様子が浮かび上がった。どうも俺の切り返しは彼女の興味を引いたようである。せっかくだから寝台まで持ち込みたいところだが、今は別の用事がある。
「ああ、それと買い取りも頼みたいんだ。そっち先にお願いできるかな」
「構わないけど……どこにあるのさ?」
「馬車に積んである。おい、もってこい」
俺の指示で、ライオネルが剣を運び込む。その数は実に三十組を超えていた。
「こりゃまた結構な量だね。どうやって手に入れたんだか」
「さあね」
まさか伯爵の兵士を殺して奪いましたとは言えない。余った鎧も売り払いたいのだが、領主の紋章が刻まれているため、バスカヴィル領内で捌くことは難しそうだ。
品を確かめ始めた店員から離れ、俺は店内を見て回る。剣、槍、斧……品揃えはそんなに悪くない。客層が同じであるためか、防具も一通り揃っている。場合によっては店をいくつか回ることも考えていたが、ここだけで済ませられそうだ。
「終わったよ。そうだね、全部で……」
「値段を言う前に、手間賃をあげるよ、お姐さん」
俺は硬貨の詰まった財布をじゃらりと鳴らした。
「へぇ?」
店員の目が鋭くなる。商売人の目だ。
店内の商品には、値札らしきものはついていなかった。つまり、この店で商品を買うには、一つ一つの値段を店員に尋ねなければならない。そんな面倒な方法をとる理由は――もちろん馬鹿な客に吹っ掛けるためだ。
同じ様に、俺が持ち込んだ品を彼女は安く買い叩こうとするだろう。ろくに商談もしたことがない俺では、それを防ぐのは難しい。そもそも相場が解らない。
エレンやライオネルも、商才に溢れているようには見えず、彼らに任せる気にはならない。だから俺は別な方法で駆け引きをすることにした。つまり、向こうから良心的な値段を付ける状況を作るのである。
店員と店がイコールでないこと。その差を攻める。
「良心的な店員さんには、手間賃を弾んじまうかもな」
言って彼女の手をとる。両手で包むようにして優しく握り――彼女の手に銀貨を握りこませる。
雇われ店員は、客から商品を買い叩いても、その利益が自分の懐に収まるわけではない。逆に言えば、良心的な値をつけても自分は損しない。彼女からすれば店の利益より自分の利益。流石に赤字になるような真似はすまいが、ちょっと色を付けるくらいは彼女の裁量の範囲である。
「……金貨十二枚」
ちらりと手の中に視線を向けた後、笑顔でそう言った。
ちなみに、金貨一枚で、平民が一年間、何不自由なく生活できるそうだ。工業の発達していないこの世界では剣や鎧などはハンドメイドの工芸品、芸術品も同然で、非常に高価なのだ。店の前立っていた武装した男達は、商品を守るための警備員なのだろう。
「もう一声」
「もっと出せって?」
俺の直接的な要求に、女店員は顔を顰めた。もう一度手を握ってやると、硬貨を確認しつつ、しぶしぶといった風に値段を改めた。
「……追加で半金貨一枚。これ以上出すと私が怒られる」
「じゃあ、これを付けると?」
言って腰に下げていた剣を渡す。俺が手に入れたなかでは一番良質なものだ。
「……銀貨三十枚ってとこね」
合計で金貨十二枚と半金貨一枚、銀貨三十枚。そして剣一本の値段が大体銀貨三十枚前後だと解った。仕入価格だから、販売価格はもっとするのだろうが。
「じゃあ、次はそっちの品を見せてくれ」
VRGでは、一昔前のゲームと違ってボタンを押せば自動で剣を振ってくれる、ということはない。自分の手で握り、自分の腕で振るのだ。そうなると、武器に設定された攻撃力などのステータスの他に、どうしても無視できない要素が出てくる。つまり「扱いやすさ」だ。
そんな中、注目されたのが短剣やナイフ、打棒などの武器だった。
それらの武器は、長剣や斧、槍やハルバードと比べ、どうしてもリーチや破壊力で劣る。だが「扱いやすさ」「取り回しのよさ」という点では大差で勝るのだ。また《NES》においてはスキルによるアシストが存在するため、リーチや破壊力の差も、現実より容易に埋め合わせることが出来る。おかげで「武器に迷ったら、取りあえず短剣か打棒」が常識と化していた。
PKを繰り返し、他のプレイヤーの装備を強奪していたおかげで、俺はレアな武器を数多く所有していた。そのなかで最強の性能を誇ったのは禍々しい装飾の施されたハルバードだったが、愛用していたのは使いやすい短剣、ナイフの類だった。それには「手に感触が伝わりやすいから」という猟奇的な理由もあるのだが――なんにせよ、俺はこの世界でも短剣を得物にするつもりだった。
今回、俺が購入したのは、切れ味よりも頑丈さを重視した、肉厚の短剣を一振り。斬る、突くのどちらにも使える両刃の短剣を一振り。優美な曲線を描く、切れ味の良いナイフを二本。刃のない、アイスピックのような形をしている刺突用ナイフを二本。スローイング・ダガー、スローイング・スパイクをいくつか。
これで金貨一枚と半金貨一枚、銀貨四十枚になった。
武器はこれでいいとしても、問題は防具だ。俺はこの世界の標準と比べると、体格に恵まれているとは良いがたい。満足のいく品で、俺の体に合うサイズのものがある可能性は低いと言わざるを得ない。
かといって、合わない防具を装備して、動きが阻害されてしまうのは恐い。もとより俺は防御よりも、敏捷さによる回避を重視した戦い方を好む。下手な防具は無いほうがマシなのだ。
しかし、必要最低限の防具はつけるべきでもある……どうするかと悩んでいた俺の目についたのは、革で作られた軽鎧だった。革といっても、内部に鎖が織り込まれていたり、金属片が打ち付けられていたりと、防御力はなかなかのようだ。革紐でサイズの調節ができるようになっており、これならば動きを阻害することは無いだろう。
何より気に入ったのは、同じく革で出来た兜だった。頭部を完全に覆う形状で、面甲は目の部分だけ穴が空いている。正直兜はあまり好きではないのだが、顔を隠せるメリットは大きい。持っていて損はないだろう。
それなりに値段はしたが、金属鎧ほどじゃない。金属鎧は、まとまった金を作ってからオーダーメイドで作ることにしよう。
「なかなか似合うじゃない。また何か必要なものがあったらおいで」
装備を整えた俺を見て、店員は顔を綻ばせた。
「次に来るときは花束でも持ってくるよ」
「あはは、楽しみにしてるよ」
彼女は冗談だと受け止めたようだが、俺は半分本気だった。地元の人間とのつながりは作っておいて損はない。相手が美人となれば尚更だ。
店を出る前に、俺はふと思いき、尋ねた。
「ああ、そうだ。ついでに酒場の場所を教えてほしいんだが」
俺の問いに、店員は首を傾げた。
「酒場なんて幾つもあるよ。どんなところがいいんだい?」
「この街で一番柄が悪い店」