第212話 冥府崩壊
アダプトキングの進化が始まった瞬間、冥府回廊の空間そのものが悲鳴を上げた。
黒い玉座の奥にいた“核”が初めて明確な敵意を見せる。
圧力が一段階上がる。
戦場が沈むように重くなる。
だが、その中心で光が広がっていた。
◇
「押し切るぞ!」
ヴァルグランが叫ぶ。
影王が核へ突入する。
夜狼王がそれに続く。
もう制御されていない。
本来の動きに戻っていた。
空間が裂ける。
死霊騎兵が崩れ落ちる。
再生が追いつかない。
◇
核が動く。
圧縮。
空間ごと潰す一撃。
リリスが叫ぶ。
「来ます!」
だがその瞬間。
アダプトキングが前に出た。
「全部繋げ」
短い言葉。
◇
終号が反応する。
⸻
統合進化完了
⸻
アダプトキング
→
アダプト皇王
⸻
軍団リンク完全接続
⸻
◇
光が爆発する。
世界が一瞬静止する。
そして。
“繋がる”。
◇
ヴァルグランの視界に影王の位置が見える。
夜狼王の呼吸が分かる。
飛行部隊の軌道が共有される。
全員の判断が一つになる。
◇
リリスが息を呑む。
「これ……全部同時に……」
「見える」
アダプト皇王が言う。
◇
核の攻撃が来る。
だがもう遅い。
◇
影王が影を裂く。
ヴァルグランが正面を破壊する。
夜狼王が上空から食い込む。
飛行戦力が逃げ道を塞ぐ。
◇
そして。
アダプト皇王が一歩踏み出す。
「終わりだ」
◇
一撃。
それだけだった。
◇
核が止まる。
空間が割れる。
冥府回廊が崩壊を始める。
◇
リリスが呟く。
「勝った……?」
「勝ったな」
アルベルトが静かに答える。
◇
その瞬間。
夜狼王の拘束が完全に消える。
赤い瞳が澄む。
そして――
ゆっくりと地面に降りる。
◇
沈黙。
◇
終号が表示する。
⸻
冥府回廊崩壊
⸻
奪還対象解除
⸻
夜狼王
復帰確認
⸻
◇
リリスが息を吐く。
「戻りましたね……」
「戻ったな」
◇
ヴァルグランが笑う。
影王が影を収める。
飛行部隊が上空を旋回する。
◇
だがアダプト皇王だけは、まだ奥を見ていた。
「まだ終わってない」
◇
全員が見る。
核の奥。
そこには扉があった。
黒い。
重い。
そして――
見覚えがある。
◇
アルベルトが目を細める。
「最終保管庫……か」
◇
リリスの顔が強張る。
「ここに繋がるんですか……?」
◇
終号が反応する。
⸻
接続確認
⸻
三十年前の研究記録
完全一致
⸻
◇
静寂。
勝ったはずの空間に、新しい“入口”が開く。
◇
アダプト皇王が言う。
「行けるな」
◇
アルベルトは短く答える。
「当然だ」
◇
忘れられた洞窟は冥府回廊を突破した。
だがその先にあったのは、勝利ではなく“続き”だった。
三十年前の研究。
王喰。
そして最終保管庫。
すべてが、まだ終わっていない。
戦いは終わりではなく――次の段階へ進んでいた。




