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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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210/223

第210話 再戦

冥府回廊の門が開く瞬間、空気そのものが軋んだ。


忘れられた洞窟の軍勢が踏み込んだ先は、もはや“ダンジョン”という言葉では足りない空間だった。地面は黒い水晶のように脈動し、天井は存在しているのか分からないほど遠い。視界の奥で、死のように冷たい魔力がうねり続けている。


アルベルトは一歩踏み出した。


「来たな」


短い言葉。


だがその瞬間、終号が反応する。



冥府回廊


侵入確認



適応領域:敵対環境



戦力補正:敵優位



リリスが息を呑む。


「これ……普通のダンジョンじゃないです」


「分かっている」


アルベルトは即答した。



最初に動いたのは影王だった。


影が広がる。


しかしすぐに異変が起きる。


影が“薄い”。


この空間そのものが、影の概念を拒絶していた。


影王が眉をひそめる。


「干渉されている」


ヴァルグランが前に出る。


「なら殴るだけだろ」


その瞬間、地面が割れた。



冥府騎兵。


死霊軍団。


無数の影が立ち上がる。


それは数ではなかった。


“質”が違う。


一体一体が英雄個体に近い圧力を持っている。


リリスが即座に判断する。


「下級ではないです!」


「中級でもない」


ミレイが静かに言った。


「つよい、、」



その中心。


黒い玉座のような影があった。


そこに“それ”はいた。


夜狼王。


ただし。


以前の夜狼王ではない。


目が赤い。


魔力が濁っている。


そして。


意思がない。


「洗脳……」


リリスが呟く。


アルベルトの目が細くなる。


「いや」


「違うな」



夜狼王が立ち上がる。


空間が揺れる。


その一歩だけで圧力が増す。


周囲の死霊騎兵が一斉に動いた。



ヴァルグランが笑う。


「来るぞ」


そして真正面から殴り込む。


轟音。


死霊騎兵が吹き飛ぶ。


だが。


すぐに再生する。


「再生持ちかよ!」


珍しく苛立ちが混じる。



アダプトキングは全体を見ていた。


「構造が違う」


「どう違うんです?」


リリスが聞く。


アダプトキングは短く言う。


「“王中心ではない”」



その瞬間、夜狼王が動いた。


消えた。


次の瞬間。


影王の背後に現れる。


一撃。


影王が吹き飛ぶ。


壁に叩きつけられる。


沈黙。


リリスが息を呑む。


「今の……」


「速い」


ヴァルグランも表情を変える。



アルベルトは見ていた。


夜狼王の動き。


しかし違和感がある。


「本来の動きじゃない」


「操られている」


ミレイが即答する。



その時だった。


空間全体が“笑った”。


誰もいないはずの空間。


だが確かに“声”が響く。


『成功作だ』


リリスが固まる。


「今の……誰ですか」


終号が反応する。



識別不能



危険度上昇



冥府回廊中枢干渉確認



アルベルトの目が細くなる。


「出てきたな」



死霊軍団が一斉に動く。


今度は包囲ではない。


“処刑”だった。


圧殺する動き。


逃がさない。


全方位。



ヴァルグランが押し返す。


影王が再起する。


しかし戦況は明らかに悪い。


リリスが声を上げる。


「このままじゃ……!」



夜狼王が再び動く。


今度は正面。


アダプトキングと真正面で衝突する。


轟音。


地面が崩れる。


アダプトキングが初めて後退した。


「重い」



リリスの顔色が変わる。


「まずいです、これ」


ミレイも静かに言う。


「王として完成しています」


アルベルトは目を細めた。


「まだだ」



その瞬間だった。


夜狼王が咆哮する。


空間が割れる。


魔力が圧縮される。


“死の波動”。


ヴァルグランが吹き飛ぶ。


影王が押し込まれる。



アダプトキングが膝をつく。


「……格上だ」


初めての言葉だった。



リリスが震える。


「負けます」


誰も否定しない。



アルベルトは夜狼王を見る。


そして静かに言った。


「まだだ」



その瞬間。


終号が警告を出す。



統合進化条件


未達



不足要素:核欠損



アダプトキングが顔を上げる。


「核……?」



夜狼王が再び動く。


今度は決定打。


圧倒的な一撃。


空間ごと押し潰すような力。



アダプトキングが叫ぶ。


「全軍退避!」



だが。


アルベルトは動かない。


夜狼王を見ている。


そして。


小さく笑った。


「見えたな」



冥府回廊の奥。


黒い玉座のさらに奥。


“本体”。


まだいる。



その瞬間だった。


夜狼王が一瞬だけ動きを止める。


ほんのわずか。


だが確かに。



リリスが気付く。


「今の……」


「揺れた」



アルベルトが言う。


「取り戻す」



夜狼王が再び動く。


戦場は崩壊寸前。


だがその奥で。


確かに“何か”が見えていた。


冥府回廊の核。


そして。


本当の敵。



戦いは終わっていない。


むしろ今。


始まったばかりだった。

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