動画
三題噺もどき―はっぴゃくななじゅう。
ベッドに寝転がり、ぼうっと天井を眺める。
真っ白に見えるけれど、点々と灰色にも見える。
ざらざらとした質感のせいなんだろうか。
「……」
両腕を広げるように投げ出し、右手の先はベッドから落ちている。
反対側の左手は広げきれずに、並んでいるぬいぐるみに当たる。
その手の中に握っていたスマホの画面をあげると、灯りがつき、時間が表示される。
その背景には向日葵の写真が写っている。
「……」
頭を動かさず、視線だけを動かして確認する。
……昼とも夕方とも言えない微妙な時間。
幼少の頃はこの時間が一番の楽しみだったかもしれない。
所謂おやつの時間というやつだから。ホントにこの時間におやつを食べていたかどうかはさておき。
「……」
まぁ、今はそんな時間存在しないので。
別に空腹でもなければ、動く気にもなれない。
何もしたくないし、何も考えたくない。
「……」
まぁ、そのためにはスマホが持ってこいなんだけど。
ついさっきまでは、いわゆるショート動画と言うのを見てたんだけど。
横になった状態でスマホをいじっていると、だんだんと気分が悪くなってくるもので……少々休憩も兼ねてスマホをいじるのをやめたのだ。起きる気にもならないし動く気にもならないので、ぼうっと天井を眺めていたわけで。
「……」
特にジャンルも脈絡もなくいろんなものを見ているから疲れるんだろうか。
落ち着いた音楽が流れる中で、ただ料理を作っているものとか、おしゃれな雑貨の紹介をしているものとか……かと思えば激しくスポーツをしていたり、ゲームをしていたりするものとか。流れるモノをひたすら見ているだけという感じで。
「……」
これがさ、興味があるものが1つでもあれば、それを検索して見てみて。
それを学んだAIが同じようなジャンルの動画を流してくるんだろうけれど。
特に何もないから……さっきはバトミントンをしている動画を眺めていて、一周してスライドしたら次にはなぜか地球儀が回っているだけの動画が流れてきた。
どういう流れでそうなったのかだけ教えて欲しい。
「……」
長期休暇がある時期とかは、観光スポットの動画とか、おすすめ食べ歩きとか流れてくる。
あとはたまに本の紹介動画とか、絵を描いているものとか……動物系は割と多いが、吼えてるのはあまり好きではない。あと喧嘩とか警察のとか。サイレンの音が苦手なもので。
「……」
そういうモノから目を離して、ぼうっと天井を眺めている。
ベッドから落ちた右手が少し落ち着かない。
足も片方落ちている。先どころかふくらはぎまで全部。
ぶらぶらと動かしては止めて、動かしては止めて。
「……」
もう一度スマホを見てみてもたいして時間は経っていない。
そりゃそうだろう。
ぼうっとしているだけなんだもん。
スマホをいじっているときはあっという間に過ぎていくのに。
「……」
背景に広がる向日葵を見て、なんとなく、あの子の事を考える。
今日は一緒に帰ることができた。
途中までだけれど、それはいつものことで。まぁ、帰路が反対なので仕方ない。
「……」
どれだけ話しても話し足りないと思う程にいろんな話をしながら帰った。
不思議なものだ。話のタネなんてそんなにないはずなのに、あの子と居るとずっと話しているような気がする。
そんなことはないんだけど。無言でいても気まずさというモノを感じないだけだろう。
「……」
スマホの画面には、黄色の明るい向日葵が咲き誇る。少し前までは百合の花にしていたんだけど、なんとなく気分を変えて向日葵にしてみた。
あの子が好きだと言ってくれた向日葵の写真だ。
あの子にもあげた。
「……」
この写真を好きだと言ってくれた人は、もう1人いた。
もう居ないけれど。
「……」
「……」
「……」
あぁ、暇だ。
することないし、スマホでもいじっていよう。
お題:地球儀・バトミントン・向日葵




