魔族少女との初めての出会い
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ヒック……ヒック……
「ねぇ……どうしてしょんぼりしているの?」
空から降り注ぐ光がまぶしく、一面の芝生が風で左右に揺れる。
遠くには点々と背の高い木々が見えるような場所で茶色い木のベンチに座りながら、一人で肩を落として下を向いていると、横に誰かが横に座った。
そして横から私に優しく声をかけてくれる。
誰が座ったかもわからなかったし、興味もなかった。
でも……その優しくかけられた言葉に一つの想いが芽生える。
――今の気持ちを誰でもいいから聞いてほしい。
横に誰が座ったかも確認せず、その優しさに甘えて私はぽつぽつと今の気持ちを吐露してしまう。
今は勇者になる前の期間であること。
勇者になるための剣術や魔術の修行が辛いこと。
女ということもあって、過去の勇者とよく比較されてしまうこと。
その上、戦闘のセンスが無くて、強くなれている自信もないこと。
そして、修行から逃げて、よくこの町外れに一人でサボっていること。
何より……勇者になるという宿命が辛いこと。
よく泣いてしまうこと……
勇者の家系だから当然とばかりに、周りからはいつも「勇者、頑張ってね」と期待される。
だけど、その期待の大きさ、そして会った事もない魔王を殺すという目的。
すべてが私にとって重すぎた。
全てを話し終わった後、目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「ねぇ……どうして勇者と魔王って殺し合うんだろうね。もし仲が良かったら、勇者もいらないし人間も魔族も、みんなで幸せになれるかもしれないのに……」
「そんなこと、勇者になる君が言っても大丈夫なの?」
「たぶん良くないけど……本当の気持ちだから」
「因みに、勇者にはいつなるの?」
「来週……でも嫌なんだ。正直、まだ勇者になりたくない」
「ふーん……因みに1年間伸ばすことはできるの?」
「わからない……でも、私の実力が足りないから、どうせ勝手に伸びると思う」
私が愚痴っぽく話した瞬間、少し強めの風が吹く。
遠くでカサカサと葉っぱがこすれる音が一面を覆う。
――私はどうしてこんなことを、全く知らない人にすべて話しちゃったんだろう。
たぶんこの声が、思いやる言葉が、そうしたのだと思う。
そんなことを考えていると、横から優しく、それでいて元気な声が聞こえた。
「なら、まずわたしと友達になって一緒に修行でもする?時々、魔族の町を巡ったりしながら。こう見えて、私ってかなり強いよ!」
「えっ!?」
あまりにも意味が分からなさ過ぎて、この時初めて隣に座ってくれた子の方を初めて見た。
一目見た瞬間、ドキリとしてしまう。
濃い青のワンピースを着た少女がその長い黒い髪を風になびかせながら、私の方を向いてニコリと笑っていた。
少女は自分より二~三歳ぐらい年上に見える。瞳は透き通るような青色で落ち着いた可愛いというよりかは落ち着いたお姉ちゃんという印象だった。
でも間違いなく言えることは、今まで出会った女の人の中では最も可愛く、そして美しいことだった。
少し見惚れていると、青い瞳の少女は首を傾げた。
「ねぇ、どうしたの?」
「う、ううん。もちろん嬉しいけど……どうして初めて会う私なんかと、友達になってくれるの?」
「ねぇ、友達になるのに理由が必要なの?」
「必要というか……どうしてベンチで泣いて座っていただけの私と友達になりたいのかなって」
「うーん……そうね。友達の理由じゃないと思うけど……」
少女は指パッチンをした。
少女の頭からは人間ではなく魔族であることを示す、二本の大きく黒い角がパッと現れた。
私はその角を見て青ざめて叫んでしまう。
「ま……魔族!!!」
「ちょっと傷つくなぁ。君は人間と魔族で仲良くしたいんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「なら、まずは私から仲良くならなくちゃ!」
「う、うん」
人型で普通に話しかけてくる魔族を初めて見た……
優しくしてくれているのが魔族という事実に私はショックを受けて、言葉が続かない。
すると、少女はポケットから何かを取り出し、私に手渡そうとする。
「とりあえず、涙は拭こうよ。私が泣かしてるみたいじゃない」
少女の手には白の無地のハンカチがあった。
一瞬ためらったものの、それを見た少女がハンカチを持った手をぐいと突き出してくる。
恐る恐る少女からハンカチを受け取った。
そして涙を拭っていると、声をかけてくれる。
「ねぇ、そろそろ教えてくれない?」
「何を?」
「君の名前。君としか呼べなくて会話がしにくいのよ」
「仲の良い人からは、クロって呼ばれてる」
少女は笑顔になってうんうんと頷く。
「クロ、良い名前だね!私は……」
少女は何かを思い出したかのように、ちょっと言い淀む。
何かを思いついたのか、手をポンと叩いてから答えてくれた。
「私は……リンって言うの。クロ、よろしく!」
「リンちゃん、よろしく!あとこれもありがとう!」
私は借りていた白の無地のハンカチを畳み、ちゃんと返そうと両手でハンカチを持って渡そうした。
すると、リンは満面の笑みで……握手のつもりなのか、両手で私の両手を包み込んだ。
雪のように白く細いその手からは、信じられないぐらい温もりを感じる。
――魔族も人間と同じで、手はあったかいんだ。
少し恥ずかしくて目線を手に落とすと、少し手からはみ出たハンカチの片隅には小さな青紫の一輪の花が力強く咲いているのが見えた。
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