戦いの終わり
目を開くと、ちょうど目の前の兵士が襲い掛かろうとし始めている瞬間だった。
手前からリリィとメルナが戦いに備えて構える。
だけど、何故かその行動がほとんど止まって見えた。
まだ夢なのかも……
そう思いながら、私は夢見心地で夢の続きを小さく呟いた。
「疾風雷撃」
一面に吹く風が一瞬止まった。
そして、そこにいる人のすべてを包み込むように風が吹き始める。
さっきまで穏やかな風が吹いていたのが急に変わったためか兵士も、リリィもメルナも一瞬、足が止まった。
「なんだ、この風は……」
アイクは小さく呟く。
「これは一体……でも、何かに優しく包まれている感触が」
「僕も……この風が包み込んでくれてる」
リリィとメルナは直前の険しい顔が和らいでいく。
バチッ!!!
「ギャアアア!!!!」
突然、大量に居た兵士の中の数人が突然大声を上げて、気絶して倒れ始めた。
すると、その声は連鎖し始める。
「ギャアアア!」
「痛い!!」
「どうなってやがる……どうしてみんな倒れ……うわ!!!」
「何が起ってる!」
「どうするんだよ!!」
「知るか!」
阿鼻叫喚の光景が広がる。
兵士たちは意味の分からない状況に困惑する。
「もう嫌だ!!俺は逃げる!」
「おい、ちょっと待て!!」
「助けてくれ!!!」
一人が逃げ始め、それを隊長らしき人が止めるが、雪崩のように人が逃げ始めた。
「なぜが……どうなっている」
座ってみていたアイクが呟く。
ピカッ!
アイクの首からぶら下げていたペンダントのリングが光った。
急に光ったことにアイクが驚いて手に乗せてじっと見る。
ピカッ!
再び光った。
アイクは独り言のように何かを呟く。
「……このペンダントがなぜ光る。これは雷にしか反応しないハズ……雷の魔法は……いや、まさか!!!」
アイクは目を見開いてジッと風を見た。
そして何かに気づき、叫ぶ。
「お前、まさか、風に雷の魔法を乗せたのか!?雷の小さな球体をたくさん作り、それを風の魔法で運んで、相手にぶつけて破裂させる……いや、そんな魔法をどうしてお前ができるんだ!?」
「私にも……わからないわ。覚えていないもの」
素直に答える。
実際、意識して唱えたというよりは、ただただ夢の続きの呪文を口に出しただけ。
どんな魔法だったのかも覚えていなかったし、知らなかった。
「でも……この呪文は私が昔、凄く苦労して作ったって言うことだけはわかる。なぜか体が覚えているからね」
「くっ……」
アイクは悔しそうにつぶやいた。
そうしている間に、戦場にいた兵士で倒れていないものは全員逃げ帰ってしまい、気絶して倒れている者以外はリリィとメルナ、アイクを除くと誰一人と立っていなかった。
「クロ、凄いね!!僕、見直しちゃったかも」
「ふふふ。ありがとうございます。おかげで助かりました」
リリィとメルナがこちらに近づいてくる。
「あんまり覚えていないけど……とりあえずラディアの町を守れてよかった」
「そうそう!元々の目標通り、誰も殺さずに追い返せたし!」
「正直、本当にできるとは思ってなかったけどね」
「ふふふ。クロ様がそんな弱気だなんてびっくりです」
「さすがにあの兵士の量を見たら……ね」
「ねぇ」
メルナは目の前で座って何もできていないアイクを見て話す。
アイクは唇を噛みしめている。
「こいつはどうするの?クロの仲間なんでしょ?」
「……ほっておこうかな」
「えっ!?また攻めてくるかもしれないよ?」
「そうだね。でも……」
私はアイクをじっと見つめて話す。
「何度来ても……私が相手になるから。もし魔族を殺したいのなら、いつでも私に戦いに来なさい。あと、あの女神にも伝えておいて」
私は深呼吸してから叫んだ。
「お前だけは絶対許さない!!ってね」
そういうと、倒れている人間の兵士とアイクが空から現れた光で覆われる。
そしてどことなく声が聞こえる。
『クロ、あなたの考えはわかりました。お望み通り、魔族を滅ぼす前にあなたを殺したいと思います。わたくしに歯向かった罰、その身に受けてもらいましょう』
光がやむと、そこには誰もいなくなっていた。
「はぁ……疲れた」
つい呟いてしまう。
「ふふふ……わたくしも流石に疲れました。ラディアの町に帰りましょうか」
「賛成~。ねぇ、リリィ、おんぶして~」
「メルナちゃん、あなたは空を飛べるでしょ?」
「飛ぶのも疲れるのよ~羽をパタパタって動かさないといけないでしょ?あぁ……もう無理」
メルナは芝生の上で寝ころんだ。
私もそれを見て、芝生の上にゴロンと転がった。
リリィも同じく、芝生の上に座った。
私は、何も言わず、ただ目を閉じた。
三人の間に心地よい風が通る。
その風は、私たちを労ってくれているかのように優しい風だった。
次で最終話です。
投稿は2/2日になりますので、ご容赦くださいませ。




