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勇者になる直前の記憶がない私、なぜか魔王の側近メイドと旅をする  作者: 美堂 蓮


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強さと夢

★☆★☆★



「そろそろ修行も終わりだね」



ベンチに座りながら、リンは私に話す。



「ねぇ、私との1年間の修行はどうだった?」

「とっても勉強になったし、楽しかった!!色々な魔界の町に言って、実際に魔族について知れたのも良かった!」

「私もとっても楽しかったよ!」



リンはニコニコしているようだ。

だけど、私はずっと気になっていたことを聞く。



「ねぇ……リンちゃん」

「どうしたの?」

「私って、この一年で本当に強くなった?」

「どうしてそんなこと聞くの?クロは色々な魔法も使えるようになったじゃん」

「でもさ、リンちゃんには全く勝てないから……」



リンはげらげらと笑った。



「ハハハ!私に勝つなんて、100年早いね」

「むー……」



即答されてしまって、ちょっと膨れてしまう。

やっぱりリンちゃんはそれぐらい強いってことはわかってる。

でも……




「でもさ、百年たってもリンちゃんに勝てるイメージが湧かなくて。もしかしたら、あんまり強くなってないのかなぁって、思っちゃった」

「……」



私はこれまでの修行を思い出しながらも、自分の想いを吐露してしまう。

さっきまでゲラゲラと笑っていたリリィは、笑うのをやめて、真剣な目をこちらに向ける。



「ねぇ……強さって何なんだろうね?」

「えっ?」



突然のことで、戸惑う。

確かに強くなっているかを聞いてみたものの、強さについて聞かれると思わなかった。

頭の中をグルグル回しながら、言葉を紡ぐ。



「えぇっと……相手に勝てるってことだと思うけど」

「勝つって言うのは?」

「……相手を倒すことかな。リンちゃんには一度も倒したことないし」

「なるほどね」



リンはベンチから立ち上がる。



「クロが思う強さって言うのは、相手を武力でやっつけることをイメージしているわけだ。確かに間違いじゃないね」

「そうでしょ?」

「でもそれってさ」



リンは首をかしげる。



「本当にあっているのかな?」

「?」



言っている意味が分からない。

間違いじゃないって言ってくれたのに。

そもそも相手を倒して強く無いことなんてあるのだろうか。



「私はね、強いって言うのは信念が大切だと思っているんだ」

「信念……」

「そう。別に誰かに勝った、負けたというのは結果であって、強さとは別だと思ってるの」



うーん……

わかるような、わからないような。



「でも結局、勝たないと強いって言えなくない?」

「そこじゃないかな。結局、何を成し遂げたのかの方が大切ってこと」

「成し遂げた?」

「うん」



リンはベンチから立ち上がる。

そしてそのまま、遠くを眺めながら話を続けた。



「戦うってことは、そこに何かしらの想いがあるはず。別にその人に勝ちたいっていうのもあっていると思う。でも……例えば、大切な仲間や町を守りたいとかもあるわけじゃん」

「うん。それはわかるかな」

「なら、目の前の人に戦って勝ったとしても、仲間や町を守れなかったら意味が無いと思わない?」

「……そうだね」



リンはベンチで座ってる私の方に振り向いた。



「別に時間稼ぎでいいなら、戦う必要もないかもしれない。結局、何をしたいのか、何を成し遂げたいのかが大切だと思うの」



ちょっとだけ、わかった気がする。

私がリンと戦って勝ったとしても、それは戦って勝ったという事実しか残らない。

そうではなくて、リンと戦って何を成し遂げたのかの方が重要だと言いたいのだろう。

もしそこに何の意味が無いのであれば、そもそも戦うことに意味が無いって言いたいように聞こえた。



「ねぇ……クロはこの一年で私と修行をして強くなったし、勇者としても一流になったと私は思ってる。でも、勇者になって、何をするつもりなの?」

「……」



パッと答えられない。

下を向いて目を瞑り少し考えてみる。

そして、前から少し思っていたことを口に出す。



「元々勇者になって魔王を殺せばいいと思っていたの……でも、魔族の色々な人に触れてその考えは変わった」

「……」

「私は……」



私もベンチから立ち上がった。

そしてリンの方を見つめる。



「私は勇者になって」



風が二人の間を通る。

二人を包み込んでくれるかのように。



「人間と魔族が……みんなで仲良く一緒に遊べる世界を作ることが夢なんだ」

「一緒に遊べる世界……」



リンは目を輝かせてこちらを見てくる。



「魔族の町に行ってよく分かったんだ。色々な魔族と話して、遊んで……でも、これって別に私が特別とかではなくて、普通の人間でもできることじゃないかって。だから、みんなで遊べる世界を作りたいの」

「……簡単なことじゃないね」

「うん。それはもちろんわかってる。この世界にはたくさんの憎しみが広がってるから、できるかどうかも分からない」



少し深呼吸をした。



「でも諦めたら、そこで終わっちゃう気がして……だから、私は勇者になっても魔族を殺さないようにしようかなって思ってる」

「魔族を殺さない……勇者?」

「うん。憎しみの連鎖は私で止めたいの。人間が魔族を、魔族が人間を殺す限り、憎しみは止まらないからね。だから私の前で魔族は殺させないし、人間ももちろん守る。勇者の名に懸けて」



私はじっとリンの目を見ながら話す。

リンは目を細めて、ニコリと笑った。



「やっぱり……クロは私よりよっぽど強いね」

「だから……まだリンに一度も勝ったことは無いよ!!」

「もちろん、戦いじゃまだまだ私には勝てないと思う。でも、そんな私ですらそんな夢を考えたこともなかったから」

「そうなの?誰でも考えそうじゃない?」



私はきょとんとしてしまう。

リンはげらげらと笑った。



「普通はそんなこと考えないよ」

「えっ!私、わざわざ魔族を殺さないためだけの新しい呪文も新しく考えたぐらいなのに!!」

「えっ、どんな呪文?」

「えっとね」



私はその呪文を唱えた。



★☆★☆★


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