アイクの奥の手
ザッザッザッ……
人数が多いからか動くのはゆっくりであるものの、遠くから足音が聞こえ始めた。
アイクは兵士の列を見ながら話す。
「この戦い、負けるわけにはいかなかった。だから、奥の手も準備していたのさ」
「なぁ、どうして……あんなやつの言うことを聞いてるんだ!!」
私はアイクに怒鳴る。
だが、アイクの目は少し寂しそうになる。
「呪い……みたいなものさ」
「呪い?」
「なぁ、どうして勇者パーティーは簡単に変更できないと思っていた?」
「……女神が決めたからとしか聞かされていない」
「実際は違う。勇者パーティーの勇者以外は全員、女神と何かしらの契約をしているのさ」
「契約……?」
これまで聞いたことのない話が飛び出てくる。
「そう、契約。各々、どういう契約をしているのかは知らないけどな」
「因みに、あなたはどんなことを契約したの?」
「俺は『魔物を滅ぼすためなら何でも行う』だ。この契約の代わりに、身体能力をはるかにあげてもらった。だから……」
アイクは私の方を指さした。
「契約によって魔族を滅ぼすためなら……俺は仲間であるお前も殺さないといけなくなったってわけさ」
「……つまり、戦場で私を殺したのは、その契約が原因ってこと?」
「あぁ。誰が好き好んで、仲間であるお前を殺さないといけないんだよ……」
アイクは吐露する。
涙を流しながら。
「ねぇ、どうして……そんな契約をしたの?」
「俺は……魔族に復讐さえできればそれでいいと思ったからさ」
「……」
「契約をした時は何も変わらないと思っていた。憎い魔族を殺す、そのために力を貰い、それを実行する。何も矛盾はないって本気で思っていた」
アイクは肩を落とす。
「でも……実際は違う。魔族であれば、女性や子供も関係なく殺さないといけない。戦場でも、お前が見ていない所でどれだけの魔族を殺したことか」
「……」
「それだけならまだよかったのか。結局、俺はこの手で魔族ですらない仲間であるお前を殺し、魔族を滅ぼすためにここにいる。今でも思うさ、本当にこれで良かったのかって」
アイクはニコリとして、私を見る。
「でも、頭の中では『魔族を滅ぼせ』と今でも聞こえてくる。唯一その言葉を聞かないのは、魔族を殺しているときだけさ」
「……」
私は何も言えなかった。
アイクがそれほど苦しみながらこれまで戦ってきたことを知らなかったから。
アイクはリリィの方を見た。
「あんたみたいなやつに……早く会いたかったよ」
「今からでも遅くないですよ。だから共に……」
「いいや、遅すぎた。さっき言っただろ?今この戦いを辞めたら、それこそ俺自身の否定になるって」
「本当に……不器用な方ですね」
「あぁ、知ってる」
アイクは急に目を鋭くさせる。
「さて……俺は正直もう戦えない……が、本陣の約六百人は目の前にいる。クロの雷槍はすでに使ったから次の大きな一本はもうない。そこにいる魔族のお二方もすでにお疲れのご様子。どうやって戦うつもりだ?」
「……」
私は何も答えることができない。
すると、横から明るい声が聞こえてきた。
「僕はまだまだ頑張れるよ!!あと、三百人ぐらいは行けるかな?」
「ふふふ。わたくしもです」
リリィとメルナが元気に声をかけてくれた。
だが、二人とも至る所に怪我をしていて……強がっているのは目に見えている。
恐らく、リンの言うことと、私のわがままを聞いて誰一人殺さずに戦っていたからだろう。
殺していいのであれば、こんな人数でも二人なら何てことないハズなのに。
そんな二人が無理をしているにも、かかわらず答えてくれていた。
私は何も言えず、唇を噛み血の味が口の中に広がる。
……どうしてこんなにも私は弱いのだろうか。
アイクの言う通り、巨大な雷槍はもう出せない。
嵐牙も大人数にはそこまで効果的ではない。
戦うことはできるけど、六百人もの大勢と戦うほどの能力は全くない。
アイクのように、剣の腕良くない。
リリィのように、強化魔法ができる訳でもない。
メルナのように、竜に変身したり炎を吐いたりできる訳でもない。
ついに、目の前に六百人の兵士の先頭が見え始めた。
リリィもメルナもボロボロになりながら、構える。
私は結局、何もできないのだろうか。
どうして……強くないのか。
そう思った瞬間、急激な頭痛が来る。
その痛みに耐えかねて、両目を閉じた。
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