女神様
アイクと同じく私も片膝を付いて頭を下げる。
「女神様……どうしてこのような場所まで」
「エデン城の女神の間でずっと祈りを続けていたのですが、あなた達二人が無駄な戦いをしていると聞き、わざわざこちらまでやってきました」
「……」
私も、アイクも何も答えない。
だが、私は女神の方を一度見る。
女神は両手を組んだまま、目を開いていた。
白い目がこちらをにらみつける。
「クロ、そしてアイク。勇者の式以来……だいたい5年ぶりぐらいですか」
「はい。その通りです」
「あなた方は一体……今、何をしているのですか?」
「私たちの信念のための戦いをしているところです」
「信念……ですか」
女神は感情が全くない、凍えるような冷たさで答える。
横にいるアイクは頭を下げた状態でガタガタと震えはじめた。
そんなアイクの横で、女神を見ながら話しかける。
「大切なことだと思いますが……」
「えぇ、おかしいですね。五年もたっているにもかかわらず、どうして魔族の町への進行が進んでいないのですか?」
「それについては、大変申し訳ございません」
私は頭を下げる。
女神は大きくため息をついた。
「はぁ……これまで担当してもらった歴代勇者と勇者パーティーの中でもとびぬけて進捗が無いのですね。どうなっているのですか」
「ご容赦頂きたく。今、それどころではないので」
「それどころでは……ない?」
女神は少し首を傾け、鋭い目線で私を睨みつけてくる。
「もちろん。今は、その進め方についてパーティー内で揉めているだけですから、ご心配なく」
「進め方について揉めている?そもそも、私があなた達を勇者パーティとして組んでもらった理由をお忘れで?」
「いえ、もちろん覚えています」
少し息を吸って、心を落ち着かせる。
私はわざと女神が激怒しそうな回答を答えた。
「この世界を平和にするため、と理解しています」
「いいえ、全く違います。何を言っているのですか?」
「全く違う……何がですか?」
「勇者に与えた定めは、この世界の魔族を滅ぼすことですよ」
「……」
私は何も言わず、まずは再び頭を下げた。
その後、頭を上げ女神の方を向いて真面目な感じで話しかける。
「大変申し訳ございません。私に頂いた勇者としての定めなのですが、私の記憶がすっぽり抜けてしまっているようでして……たぶん、それが原因だと思います」
「記憶が抜けている……?あなたが抜けている記憶は勇者になる前の話でしょう。どうして勇者の定めまで抜けているのですか?」
「……」
――あぁ、やっぱり
私はスッと立ち上がり、思いっきり女神を睨みつけた。
「女神様、どうして……抜けている記憶が勇者になる前だと知っているのですか?」
「……」
女神は表情を変化させずに少し黙る。
そして、何かを思い出したかのように口を開いた。
「そう……少し前にアイクにお会いしたときにそのお話を聞かせて貰ったのですよ、ねぇアイク」
「……」
アイクは何も言わず、ただ頭を下げたまま何も答えない。
「先ほど、五年間は会っていないと話していませんでしたか?」
「あぁ、それはあなただけに言ったつもりでした。アイクはエデン城に常日頃からいるので、時々会っていました」
「なるほど。でもおかしいですね……この話をアイクにしたのはつい一週間前のはずなのですが……」
女神の眉がピクリと動く。
私は気づかないふりをして話を続ける。
「まぁ細かいことはいいでしょう。であれば、アイクが私を殺したという話もお聞きになっているということですね」
「もちろんです。アイクにやめておけ、と言ったのですが聞く耳を持たず……」
「アイクに殺せと言った、の間違いじゃなくて?」
「……」
女神はぴたりと言葉を止めて、何も答えない。
そのまま私が話を続ける。
「アイクと以前この場所で話した時に、一つ気になった言葉があったんです。それは、
『復活にはかなり時間もかかるし、復活する場所も魔界の奥地だっていう話だったはずなんだが?』
――という言葉。アイクはどうして私が復活する時間がおそくて、魔界の奥地で復活すること知っていたのかという部分です。おかしいですよね?勇者の復活場所は私ですら知らないというのに」
「アイクが……そんなことを口走っていたのですか」
女神はアイクの方を睨みつける。
アイクは未だに顔を上げていないが、震えが悪化している。
「その時にすっかり忘れていた違和感について思い出したの。そもそも、どうして私は魔界で復活したのか……勇者の復活先を変更できるのは人間でも魔族でも不可能。この勇者の能力を与えた女神様以外にはありえないのじゃないかって」
「……」
女神は何も言わない。
だが、私を見る目だけは明らかに鋭くなっていた。
「そう考えれば、アイクに私の復活の時間や復活する場所を教えたのは女神様だろうと想像が簡単に着きました。でも、そのことを教えたということは、私を殺そうとしたのも女神様だろうってね」
「さすがですね」
女神は笑顔になり、優雅に拍手を始める。
「まさか……バカな貴方がそこに気づくとは思いもしませんでした。迂闊でしたね、勇者の復活場所を魔界なんかにしてしまったのは。人間界の最果て……とかにしておけばよかったです」
「因みに、私の記憶を封印したのも……」
「えぇ、もちろん。わたくしです」
下卑た顔でニヤリと笑った。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
「この話面白い!」「続きを読んでみたい!!」思う方は、是非以下をお願いします!
①ブックマークのほど、何卒よろしくお願いします!
②広告の後にあるポイント評価欄を
『☆☆☆☆☆』⇒『★★★★★』
にして評価をしていただけると、めっちゃ喜びます!!!
どれも私のモチベーションにつながります。
毎日を更新を続けるためにも是非お願いします!




