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『不殺の勇者』と『雷槍』



不殺ふさつ勇者ゆうしゃ



私がちまたで言われているあだ名だ。

理由は単純でこれまで私は魔族を殺したことが無いから。

女だから魔族が殺せない、なんて悪口を良く言われた。



でも、実際はそうじゃない。

私は自分の意思で魔族を殺すのを止めているのではない。

無意識に魔族を殺すことができない、という方が正確だろう。



魔族を殺そうと意識した瞬間に手が震え、手に力が入らなくなる。

それどころか私の視界内で魔族を殺そうとする奴を見てしまうと、意思にかかわらず守ろうとしてしまう。

呪いの類かと思い教会や女神様へのお祈りなども行ったが、どれもこれもうまくいかなかった。



未だに理由はわからない。



だが、魔族が殺せない勇者というレッテルは瞬く間に世間に広がった。

私のパーティーメンバーも初めはそれがお前らしいと笑ってくれた。

だが、魔族を殺せないという事実によって町で罵声を受けるようになり、

私は次第に……パーティー内でも孤立していった。

今では優しく声をかけてくれる奴なんていない。



因みに、今使っている勇者の剣にも細工が施されている。

この剣、実は刃の部分は潰れていて切ることができなくなっている。

理由は単純で勇者として初めて魔族と戦った時、何度も魔族を切る寸前で何度も手を止めてしまい……一度死んだからだ。

だから魔族と戦う時は気絶させるという形でしか戦うことができなかった。

リリィの手から血が出なかったのもこの剣が原因だったりする。



――とはいえ、片手で簡単に止められるとは。

私の全力と速度も乗っていたというのに。

全身からドッと汗がにじみ出てくる。



リリィに片手でつかまれている剣を押したり引いたり、右や左にねじったり……両手で必死に動かそうとするがピクリとも動かすことができなかった。



私よりも明らかに細い腕のどこに力があるのか不思議だなぁ、とかそんなことを言っている状況ではない。

必死に暴れる。



「どうしてそんなにも戦おうとするのですか?わたくしはまだ何もしていないのですよ?」



目の前にいるリリィはそんな私が不愉快なのか、今にも泣きそうなぐらい悲しそうな顔をしている。



――ちょっと可愛いかも。



リリィをじっと見ていると、そう思ってしまう。

いや、何考えているんだ!

相手は魔王側近だ!!

私は自分に言い聞かせるために小さく呟くと、自分に芽生えた感情を振り払うかの如くリリィに叫ぶ。



「なら、その手を離して!!」

「それはお断りします。わたくしも痛いのは嫌なので」



そして剣を握っていない手をそっと頬の近くに寄せて困ったような仕草をしつつ、泣きかけていた顔がスッと戻ってニコッ笑顔になる。

いちいち可愛い……いや、そんなことを言っている場合じゃない。

そう感じた私は剣から両手をパッと手放し、距離を取るために少し後ろに飛んだ。

呆気に取られているリリィを他所に、右手を宙に突き出して体に染み込んだ言葉を叫ぶ。



雷槍サンダーランス!」



右手から一般的な槍と比べてかなり太く長い、雷で出来た槍が現れる。

それを握り、リリィの方に向かって全力で投げた。



バチバチバチバチ!!!!



雷特有の音を発しながら、目に見えないほどの速さで飛んでいく。



私が子供の頃から愛している十八番おはこの魔法。

ただ正直、この魔法ぐらいしかまともな魔法は出せないのだが......

雷の槍を高速で飛ばすことで相手を感電させダメージを与える呪文。

魔族を殺さず、それでいて大ダメージを与えることが可能な私の創作魔法。

どんな大物の魔族であってもほとんどは気絶させ、気絶させられなくとも膝を付かすことはできた。

復活したばかりでも、この呪文だけは出せる自信があった。



肺に溜まっていた濁った空気を出して深呼吸する。

魔王側近のリリィであったとしても、この距離なら避けられないだろうし無事じゃないハズだ。



そう思った瞬間、リリィは頬を抑えていた手が知らない間に前に出ていた。

その手からはリリィの体を守るように青い半透明のバリアが現れる。

雷槍がそのバリアに当たった瞬間……雷槍が霧散した。

一体どうして……こんな近い距離で放ったのに対応されるの!?

余りに衝撃的すぎる光景に私は口を開けて唖然としてしまう。



「クロ様の代名詞ともいえる雷槍……ただ、いつもと違って威力も速さも全く出ていませんよ」

「くっ……」

「この強さであればわたくしでなくても、ちょっと強い魔族なら止められます。まだ恐らく復活されてからそれほどお日にちがたっていないハズでしょうから、全力が出せてないということですね」

「くそっ……いや待って。どうして私が復活したばかりだと知っているの!?」



言った瞬間、私は手を口をふさぐように覆った。

しまった……必要ないことまで言ってしまった。

私の言葉を聞いた瞬間、リリィの笑顔は柔らかい感じに変わる。



「ふふふ。復活したばかりでしたとは。復活には結構なお時間がかかるんですね」

「……」

「はぁ、沈黙とは寂しいです……せっかくなんで、少しお茶でもしませんか?復活したばかりということは、お疲れでしょう。ついでに魔王城にお越しになった理由などをお聞かせいただければ嬉しいですけど」

「ま、まて。ここは魔王城なのか?人間の城……エデン城じゃなくて!?」

「よかった!話してくれました!!」



リリィは勇者の剣の刃の部分をそのまま手に持ちながら、ニコニコしている。

そして、私にその剣を返すためか、こちらにゆっくりと歩いてくる。

敵だというのに、いい笑顔なので調子が狂う……とはいえ、今は情報を集めないと。



そもそも、どうして私は魔王城なんかで復活しているんだ??



私は少し頭を下げながら剣の柄を手に取った。

すると、リリィはパッと手を離してくれた。

警戒しつつもリリィから受け取った剣を腰にぶら下げている柄に片づける。



「間違いなくここは魔王城です。ついでに言えば、ここはその食料庫ですね」

「……確かに見たこともない食べ物がゴロゴロ転がっている」



赤い実がいくつか転がっていた。

……正直、とてもおいしそう。



「ふふふ。魔界にしかない食べ物などもたくさんありますよ。おひとついかがですか?」

「もちろ……いえ、結構です」



危ない、乗せられるところだった。

私は、顔をしかめながら首を振った。

どこの世界に敵に出された食べ物を警戒もせずに食べる勇者がいるというのか。

そう思っていると、リリィは床に落ちていた赤く丸い果実のような食べ物を二つ手に取り、一つをこちらに投げてきた。



パシッ!

私はそれを反射的に受け取ってしまう。



「誰も見ていないですし。復活したばかりでお腹も減っているでしょう?」

「だから食べないって!」

「復活したばかりでお腹が減っているんじゃないですか?」

「そんなこと……」



ぐぅ~



お腹の虫がなる。

余りにありきたりなシチュエーションなのと、お腹の音を聞かれた恥ずかしさで私は顔から火がでるほど恥ずかしかった。



リリィは、ふふふ、と少し笑ったのち、見せつけるように赤い果実を一口かじる。

モグモグモグ……

悔しいけど、とてもおいしそうに見えてくる。



「ほら、毒なんて入っていないですよ。もしわたくしの渡したものが嫌なのであれば、そこらへんにたくさん転がっていますので、どうぞご自由に選んでいただければ」

「くっ……頂きます」



私は呟くような小さな声で返事をする。

リリィから受け取った赤く丸い果実のようなものを、ためらいつつも小さくかじった。

さっぱりしつつも甘みがあってとてもおいしい。

バクバクとかじっていたら種もなく、丸々一つ食べきってしまった。


ここまで読んで下さりありがとうございました。

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