復讐とその先
「ハァハァ……ゴホッ……。さすがに……完全にあばらが折れてるな……」
「ハァ……ハァ……これで無傷だったらあんたは化け物よ」
吐き捨てるように言ってやった。
「へへっ……。雷槍の後ろからお前自身がすっ飛んでくるとは。あれはやっぱり風の魔法か?」
「えぇ、そう。風の魔法の応用……なのかな?」
「雷の魔法、それも雷槍しか使えなかったお前が……ね。この戦いは俺の負けだ。で俺のことはどうするんだ?やっぱり殺すのか?」
「そんなことはしない。私は、守りたいものを守れればそれでいいから」
そう。別にこいつを殺すために戦っていたわけじゃない。
痛めつけれたら十分だから。
「俺が回復したら、また攻めに来るけどいいのか?」
「えぇ。何度ご自由に。私は人間でも、魔族でも関係なく……何度でも守るから」
「……そんな綺麗ごとを!!!」
アイクが血を吐きながらも起き上がる。
そしてよろめきながらも立ち上がった。
にらめつけるように、こちらを見てくる。
その目は、怒りに満ち溢れていた。
でも、私も一歩も引くことはできない。
同じくアイクを睨みつける。
「綺麗ごと……?やってみてもないのに、どうしてすぐに諦めようとするの?」
「諦めるとかそんな話はしていない!これまでの人間と魔族の戦いの歴史は習っただろ?」
「えぇ、もちろん。知っているわ」
「ならわかるだろう?これまでずっと……長い間、争って来たんだ。魔族に子供を殺された人もいれば、妻や夫、友達を殺された人もいる。故郷を燃やされた人もいる。そいつらに対して勇者としてどう顔向けするつもりなんだ!!!!」
アイクは顔を真っ赤にして怒鳴った。
アイクの根っこにある『正義』なのだろう。
この気持ちは……絶対に無下にしてはいけない。
「もちろん、あなたの考えが間違っているとは言わない」
「あぁ、事実、間違っていないからな」
「なら、人間に家族を殺された魔族であっても何をされてもいいの?」
「……」
アイクは苦虫をすりつぶしたような、引きつった顔をする。
「魔族にも子供はいるだろうし、妻や夫、友達もいるでしょう。故郷がある人もいる。それを私たちが壊してもいいってわけ?」
「だが、それは魔族が我々を攻撃したからこそ……」
「それは……いつの話?ここ数年は魔族からの攻撃は止まっていたハズでしょ?」
「くっ……数年止めたからって、その前の罪が消える訳じゃない!」
「そうね。でも、誰かが止めないと。憎しみからは憎しみしか生み出さない」
「なら、俺の親を殺した、その罪はどうしてくれるんだ!!それも我慢しろと言うのか!!」
「……」
アイクは手をギュッと握りしめ、目を見開いて叫ぶ。
今初めて……知った。
アイクの親が魔族に殺されていたことを。
これまで勇者パーティーで一緒だったにもかかわらず。
いつも明るいアイクがどうしてここまで魔族に対して憎んでいるのか……気になったことはあったが、聞く機会はなかった。
アイクがどうして私を殺してまで魔族を滅ぼしたかったのかを。
ほんの少しだけ……理解ができた気がする。
そして、私の言葉でその感情に対して何か答える方法は何も思いつかなかった。
「魔族を代表して、謝らせてください。本当に申し訳ございませんでした」
ふと後ろから、珍しく髪の毛が少しだけ荒れているリリィが現れた。
そして……満身創痍で立っているアイクの前で深々と頭を下げた。
アイクはリリィのその姿を見て、顔が歪む。
「おまえ……今更俺に謝って、どうなるんだ!俺の親が返ってくるとでも言いたいのか!!」
「いえ……でも、わたくしがすべきだと思った事をした、ただそれまでです」
リリィは頭を下げたまま、答える。
「であれば、謝ることなどしなくていい!お前達が滅べば、すべて丸く収まるのだから」
「それはお断りいたします」
リリィは頭を上げた。
その目は、決意に満ちた鋭い目をしていた。
「我々魔族にも親を亡くされた者や友達を無くした者もたくさんいます。わたしの役割はその方達をお守りし、誤った道に進まないようにするのが役割なので」
「誤った道?」
「そう、あなたのように復讐という道に進まないように。私はその方々を誤った道に進まないようにする責務があるので」
「俺の……俺の親の復讐をして何が悪い!!」
アイクは怒鳴り散らす。
それでもなお、リリィは冷静でありつつ信念を持った声で受け答えをする。
「ではその道の先は……何があるのですか?」
「なに……?」
「貴方の夢がかない、魔族をすべて殺したとしましょう。その先には何があるのです」
「……」
「その先には何もありません。夢も、希望も」
アイクは何も言い返せなかった。
私もゆっくりと自分の想いを伝えるために口を開いた。
「別に私は……魔族が悪くないとかそういうことを言うつもりは全くない。でも……だからといって、魔族を滅ぼしたとしても、何にもならないと思うの」
「そんなこと、わかっている……わかっていたさ」
アイクはこれまでとは違い、力なく答える。
「目の前の魔族を殺しても、魔族の町を壊しても、俺の親は返ってこない。そんなことをしても親は喜ばないだろうし、何もないってことは」
「なら……」
「だがな、もう止まれないんだよ」
アイクは血を吐きながら叫ぶ。
「振り上げた手を下ろすには遅すぎなんだ!!俺の手は真っ赤で……血に汚れすぎている。これまで出会った魔族は全て殺し、一緒にパーティーを組んでいた勇者のお前を殺し、大量の兵士を引き連れてここまで来た俺が……今になってやめることはできないんだ!!」
「……」
「それこそ、ここでお前たちと戦うのをやめちまえば……俺自身の存在の否定になっちまう。それだけは許されることじゃないんだ」
遠い目をしながらアイクは語る。
「その通りです。魔族は、必ず滅ぼすべき存在なのです」
急に空から光が差し込む。
その光からは背中に白い翼を二本持ち、両手を組んで目を瞑り、何かに祈っている女性が急に現れた。
その髪は金色に輝き、頭には光り輝く輪っかが浮かんでいる。
その顔はこの世界の誰でもなく、それでいて誰よりも争いごとが嫌いそうな優しい顔。
透き通るような白い肌でかすかに微笑んでいた。
その顔を見ているだけで、つい心が落ち着いてしまう。
アイクはその声を聞いた瞬間、スッと片膝を付いて頭を下げた。
その光の中に立っていたのは……
女神様だった。
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