約束の戦い
アイクは後ろから来る兵士たち長に何かを伝え、その場に待機させた後、一人で歩いてきた。
そして、私たちが座っているベンチの前に立った。
「おぉ、久しぶり~ってちょうど一週間ぶりだな」
「えぇ、そうね。お久しぶり」
「そちらは確か前回もいたリリィさんで……そちらのお方は?」
アイクはメルナの方に目線をうつす。
「僕はメルナ。リンとリリィのお友達みたいなもの」
「あぁそうか、よろしく。俺は勇者パーティーをやっている戦士のアイクだ」
悪意もなく、アイクは手を差し出した。
メルナはプイっと横を向いてその手を取るのを拒絶する。
「僕、弱い男は嫌いなんだよね。あっち行ってくれない?」
「まさか、こんな可愛い少女にまで嫌われるとは……地に落ちたもんだな」
がっくりと肩を落とす。
「その子、私たちよりはるかに年上よ」
「えっ!?うそでしょ?まさか年上のお姉さんだとは!!」
アイクはメルナの方をジッと見つめる。
「……どっからどう見ても十歳かそこらにしか見えないんだけど。ちなみにおいくつで?」
「女性に年齢を聞くとは言い度胸ね。僕の年齢を聞いた人はすでにみんなこの世にいないんだけど、それでも聞きたい?」
「いえ、結構です。勘弁してください……」
アイクはメルナに頭を下げる。
本当にこいつの前では調子が狂う。
「アイク、別にそんなことを言いにわざわざ来たんじゃないでしょ?」
「まぁな」
アイクは頭を上げる。
「約束通り、一週間たったから人間の兵士を連れてここまでやって来た」
「本当に……そういうところだけは律儀ね」
「約束は守る男なもので」
「……知ってる」
「で、次はお前が約束を守る番だ」
「約束?」
「あぁ」
アイクの目が座り、いつにもまして真面目な顔になる。
「お前は……結局どっちに着くんだ?人間側か、それとも魔族側か」
「あぁ、そのこと」
私はベンチから立ち上がった。
アイクの目の前に立つ。
二人の間に風が流れる。
この場所特有のゆったりとした優しい風が。
私の背中を押してくれるかの如く……
「いっぱい悩んだ。寝れない夜もあったし、何が正しいのかも考えた」
「ほうほう、それで?」
そして、ずっと悩んで出した答えを口にする。
「私は、どちらにもつかない」
「はっ!?」
アイクはあんぐりと口を開ける。
「人間とか魔族とか、そういうのはどうだっていい。私は……守りたい者を守る。ただ、それだけ」
「おいおいおいおい……お前、ふざけているのか!?」
「あなたには、私がふざけて話しているように見えているの?」
「あぁ、見えるね。そんな綺麗ごとがこの世界で成立するとでも思っているのか!!」
「えぇ。きれいごとだろうが、何だろうが私が決めたことなの。私はこの考えを守るためにあなたに立ち向かうわ」
「はぁ……ここまで馬鹿だとはね。お前人間にも、魔族にも嫌われることになるぞ」
「もちろん、それは覚悟の上かな」
「……」
目を話さずにアイクに伝える。
するとアイクはスッとベンチに近づいた。
「そのベンチはこれで守っておけ」
丸いコインのようなものを出して、ベンチにくっつけた。
ベンチの表面に薄いピンクの膜が張られた。
「ある程度の魔法と物理攻撃を緩和してくれる代物だ。気休めだがな」
「……ありがとう」
「お礼なんていい。俺もこの美しい場所は残したかっただけさ」
手をひらひらさせながら背を向ける。
「戦いは1時間後、ここで。おしゃべりもなしだ」
「えぇ。わかったわ」
「じゃあな。クロ、元気で」
「あなたこそ。アイク」
アイクはそのままゆっくりと去って行った。
すると、メルナがプクーと膨れながら呟く。
「あいつ、僕に年齢聞くなんて、死にたかったのかな?」
「ふふふ、メルナちゃん。いつまでその話を気にしているのですか?」
「だって~……久々に聞かれたよ。年齢なんて」
「人間は特に年齢を気にするのですよ。魔族と違って、とても短い人生だから」
「そうかもしれないけどさ……」
メルナはグチグチと言っている。
私は立ったまま、椅子に座っている二人の方を向く。
「これが、私が出した答えだったんだけど……どう?」
「僕は好きだよ。人間も魔族にもつかないって言うのは」
「ふふふ。わたくしも、クロ様らしくて良かったと思いました」
「そ、そう……ありがと」
「でも」
リリィは少しだけ目を細めた。
「その信念、必ず忘れないでくださいね」
「えっ?」
聞き返したものの、リリィはニコリとしただけで何も答えてはくれなかった。
すると、メルナが急に立ち上がり、全身のコリをほぐすかのように伸びをしながら呟く。
「さてと。僕はどうやって戦おうかなぁ……竜の姿に戻ったら、流石にこの場所が焼け野原になっちゃうし」
「メルナちゃん、それは流石にやめた方が良いかと」
「だよね~。でも、この姿で戦うの久々だし」
リリィも同じく立ち上がる。
そして、手を開いたり閉じたりし始めた。
「ふふふ、私も戦うのは久々です。ちゃんと手加減できるかしら……」
「うわぁ。リリィと戦う人は可哀想。全治3か月コースかな?」
「そんなメルナちゃんみたいに、二度と歩けないようにするとかしないので、とっても優しいと思いますけど」
「えっ!さすがの僕もそんなことしないよ!!」
リリィとメルナは二人でキャッキャしている。
話している内容はとても恐ろしいものの、パッと見る限り今から戦う感じには到底思えないほどリラックスしていた。
――二人はそれぐらい戦いに自信があるのだろう。
「ねぇ、リリィ。メルナ」
「どうかいたしましたか?クロ様」
「なに?クロ」
二人がこちらを向いて話を聞いてくれる。
――前のパーティーでは、こんな当たり前のことすらできなくなっていたというのに
それがとても心強く、嬉しかった。
私は緊張を解くため深く息を吸って、吐く。
「私、どうしてもアイクと戦いたいから、他の人たちを二人に任せていい?」
「……」
「……」
二人とも、何も言わない。
風が芝生の上を走る音が一面に響く。
そして……あたり一面に笑い声が広がった。
「ふふふ……そんなことですか。もちろん、お願いしますね」
「ははっ!!なーんだ。急にかしこまって話すから、何か町に忘れてきちゃったのかと思っちゃったじゃん。もちろん、クロがあいつをぶっ飛ばしてよね。僕の年齢を聞いた分もちゃんと殴ってよ!」
「わかった、ありがとう。ちゃんと、ボコボコにしてくる!」
二人の笑顔に私も自然と笑顔になる。
仲間っていいな……と心の底から思った。
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