約束の日の昼間
アイクと出会ってちょうど一週間後、約束の日。
私とリリィとメルナは人間の町サーフィアと魔族の町ラディアにある、例の木のベンチに三人で座っていた。
昼間なのでお日様が昇って、ぽかぽか陽気を体全身で感じる。
一面の綺麗な芝生を見ながら、心地の良い風が三人を包み込みこんでくれる。
「ここが、魔王様とクロが出会ったところかぁ」
「ふふふ。いい所でしょ?」
「良い所すぎ!どうして僕はこの場所知らなかったんだろう。今日はここでのんびり昼寝でもしようかな」
「別にいいですけど、もし人間が襲ってきても起こしませんよ?」
「良いよ~。人間ごときに僕は殺せないと思うから」
メルナとリリィは空を見ながらのんびりと話していた。
何をするわけでもなく、ゆったり流れる時間を楽しんでいる。
私たちは自主的にここにいた。
昨日リリィから、人間達の軍隊がすでにサーフィアにかなり集まっていることは魔族側の情報で入ってきていた。
つまり、もうすぐアイクが攻めてくる。
あいつは約束をちゃんと守る男なので、ちょうど一週間後に攻めるつもりなのだろう。
ただ、サーフィアからラディアに行くためには、この場所を必ず通らないといけないようになっていた。
町の偉い人に話して軍隊を準備してもらうこともできたが……やめた。
悲惨な戦いになることが容易に想像できたからだ。
だから、私たち3人で食い止めると決め自主的にここでのんびりと待つことにしたのだ。
「ここに来るまで暇だったらどうしようと悩んでいたけど、この場所が素敵すぎてずっといられる~」
「そうでしょ?私、小さいころからずっとここで座っているのが好きだったの」
「でも、どうせ泣いていたんでしょ?」
「泣いてない時もあった!」
「ふふふ。魔王様からはこの場所で修行するときはいつも泣いてたっておっしゃってましたよ」
「嘘!!そんなずっと泣いてなかった!!!たぶん……」
「記憶が無いってこういう時辛いね」
「メルナちゃん、酷い!」
「ごめんって!!冗談だよ!!」
三人とも大声で笑った。
本当にたわいもない話で盛り上がる。
辛い時、その悲しみを吐き出すために来ていた場所だったのに、その場所がとても素敵の場所に変わる。
いや……元々変わっていたのかもしれない。
「因みに、リンは私のことをどんな風に話していたの?」
「ふふふ。やっぱり知りたいですか?」
「えっ……も、もちろん!」
恥ずかしくもあるが、やはり聞いておきたい。
リリィは少しだけ遠い目をした。
「毎回、魔王城に帰って来ると、凄く笑顔だったことはよく覚えています。今日はこの呪文覚えたとか、この剣術を教えてあげたんだ!とか。とっても飲み込みが早くて教えがいがあるとも聞いたことがありますね」
「僕もよく色々な町と魔王城の往復するときに一緒だったんだけど、人間界で流行っているお菓子を一緒に食べた!とかも言っていたかな。だから僕も会いたい!!ってお願いしてクロと何回か会ったことがあるって感じ」
「そうなんだ。でもさ、よく勇者になる予定だった私と何度も会ってくれたよね」
「今だからお話できますが、もちろんわたくしは止めていましたよ」
「やっぱり」
リリィが怒っている様子が目に浮かぶ。
リリィが魔王の側近というポジションであることを考えると、普通に考えれば止めるだろう。
「でも、『友達に会うのはダメなことなの?とても優しい子だよ!』と言って、全くわたくしの言うことを聞かなかったのですが」
「夢の中のリンちゃんを見る限り、そんな話の聞かないこのように見えなかったけどなぁ……」
少し思い出したリンちゃんの姿は、本当にごく一部ということなのだろうか。
「ふふふ。魔王様はなかなかお転婆でしたよ。わたくしを何度困らせたことか。メルナちゃんにも何回も怒ったことがあるぐらいですから」
「いやぁ、あの時は辛かったなぁ。魔王様からはこっそり行かせてって言われて連れて行くんだけど、帰ってきたらもちろんリリィがとてつもない顔をして仁王立ちで待っていて。毎回僕と魔王様の二人でかなり怒られた記憶が……」
「メルナちゃん。とてつもない顔ってどんな顔ですが……?」
リリィは笑顔でメルナに話しかける。
明らかに目は笑っていないが……
「い、いえ!何でもないです!!!」
メルナはそう言うと無意識だろうか、自身の頭を手でさすり始める。
恐らく、リリィの愛の鉄拳がそこにぶつけられていたのだろう。
その光景につい笑ってしまう。
「あはは!メルナちゃんでもリリィに怒られるのは怖いんだね」
「笑い事じゃないよ!リリィは怒ったら本当に怖いんだから」
「ふふふ、そんなことないと思いますけど」
「その『ふふふ』って声が笑ってないの!あと、クロは知らないと思うけど、リリィは本気で怒ったら手をギュッと握りしめるんだけど、その時にメキメキって音が鳴るんだよ!」
「あぁ、この音ですか?」
メキメキメキメキ……
リリィは笑顔のまま右手を前に出して、力いっぱい握っている。
メルナの言う通り、どこからともなくメキメキと音が鳴っていた。
すると、メルナ怯えた様子で頭を手で覆った。
「むりむりむりむり……その音だけは勘弁して!トラウマなの!!」
「なら、わたくしが怖いということは撤回していただけますか?」
「撤回する!だからやめて!!」
「ふふふ、メルナちゃんと理解しあえて嬉しいです」
右手をパッと開ける。
音がピタッと止まった。
「ホント、バカぢからなんだから……」
「ふふふ、最近耳が遠くて。何か言いましたか?」
「いえ、何も言ってません!」
メルナ背筋とぴしっとして返事をする。
その姿を見て、再び笑ってしまう。
すると、メルナが私の方に近づいて小さな声でボソッと話してくる。
「クロ……気を付けて。リリィはこう見えて本当に怖いからね」
「うん……それは見てて十分わかったよ」
「なら、よろしい」
メルナは私からは慣れつつもうんうんとうなづいていた。
リリィは何も言わずふふふ、と笑っているだけだった。
ふと、今の光景を見ていて思い出した疑問をリリィにぶつけてみる。
「ねぇ、リリィ」
「はい、どうかしましたか?」
「リリィは、どうして魔法をあまり使わないの?私の雷槍を止めたときに使っていたと思うけど、そのほかは使っているのを見たことが無くて。アイクの戦いのときも結局何も使っているようには見えなかったし」
「いえ、今でもずっと使っていますよ」
「ずっと使っている……どういうこと?」
すると、メルナが苦笑いをしながらこっちを向いた。
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