ドワーフのルド
宿でリリィ手作りのご飯を食べた後、メルナが気分転換に外に行こうと言い出した。
メルナ曰く、外に出ないと元気が出ないから!とのことだ。
私もずっと寝ていたせいか体のあちこちが痛かったので、賛成した。
「やっぱりリリィのご飯はおいしかったな!」
「ふふふ、ありがとうございます。また機会があれば作りますね」
「約束だよ。次回はあのぷくぷくに膨らんだ魔界魚……名前何だったっけな? あれを使った料理が食べたい!」
「わかりました、また今度準備しておきますね」
リリィとメルナが私を挟んで両隣でずっと話している。
私はその話を聞きつつも、町の様子に驚いていた。
町の中は石畳で舗装された横に広い道が広がっていた。
その両脇には平屋のお店が立ち並んでいて、人間の町と全く遜色がない。
綺麗な衣服を店頭にきれいに並べ、お客を引き入れようと必死に声をかけているゴブリン。
その横の店では、ほとんど話さないものの綺麗に加工された装飾品を並べて座って売っている初老のドワーフ。
平屋で開いていないお店の前には露店が開かれていて、おいしそうな香ばしい匂いが漂っている。
その匂いに誘われて見てみるとリザードマンが肉を焼いており、横でパタパタと飛んでいる小さなピクシーが大声を出して客寄せをしていた。
もちろん人間は私以外、誰も居ないものの街全体に活気が溢れ、数多くの魔族が行きかっている。
「魔族の町って活気があっていいね」
「えっ、そう?……結構地味な方だと思うけどね」
「これで地味なの!?」
へへん!と自慢げにメルナが胸をはった。
「もちろん。魔王城の城下町だと、リッチが骸骨を使って演劇をしているし、ドワーフたちももっとたくさんいて、ここでは見られないような煌びやか宝石とかがたくさん売ってるから。あと、屋台ももっと数多くあるしおいしそうなの!!」
「骸骨の演劇は遠慮したいけど……屋台は羨ましいな。魔界の食べ物はほとんど知らないから、一回食べてみたいかも」
「おいしいものがたくさんあるよ!一緒に行こうね!!」
「……うん」
無邪気に話しかけてくるメルナを見ていると、自分の存在を忘れそうになる。
目の前にいるのは伝説の赤竜であり、私は人間の勇者。
私みたいな人が魔王城の城下町を共に歩くことなどありえるはずがない。
だから……いい返事ができなかった。
そんなことを考えていると、横でメルナが頬を膨らませていた。
「ねぇ、僕と一緒に行きたくないの?」
「ううん。そんなこと無いよ。もちろん、一緒に行きたいし、色々な物を一緒に食べたいけど……」
「けど?」
「えっとね……私みたいな人間の勇者が魔王城の城下町に行けることはできないだろうなって思っちゃってさ。せっかく誘ってくれたのにごめんね」
「えっ、そんなこと悩んでるの?そりゃ人間界の王様とかさっき話のアイクとかだったら全然無理だけど、クロだったら普通に来れるよ」
「ありがとう。気持ちだけで十分嬉しいよ」
「クロ様。メルナちゃんの言葉を信じていないと思いますが、私も同意見です。クロ様であれば普通に来れるかと」
「えっ……どうして?」
そんなはずはない。
魔族に嫌われているだろう勇者であるのに。
私が疑っていることを察知したのか、リリィは周りとキョロキョロとし始める。
「であれば、どうしてこの町では大丈夫なのでしょうか。ここも一応魔族の町にはなりますよ。人間もクロ様以外いらっしゃらないですし」
確かに。
よく考えれば、今でも私のことを敵視している魔族がいてもおかしくない。
でも、どうして誰も何も言ってこないんだ?
よく観察してみるとリリィやメルナがいるためか、魔族達からの視線はいくつかはある。
流石に勇者だから顔は知られている可能性も高い。
だが私を見ても、誰も何も言ってこない。
何なら、目の前の子供の魔族は私の方を見て指をさして母親と話していた。
「ママ!ねぇ、あの人!」
「こら。人に指をさしてはいけませんよ」
「でもでもでも!!広場の像の人に似てない??」
「広場の像?どこのことかしら」
「ここから東に行ったところの広場!!」
「そんなのあったかしらねぇ……」
「あったよ!ねぇ!!」
そんなことを言いながら、母親に手を引かれてどこかに行ってしまった。
「ねぇ、リリィ」
「クロ様、何でしょうか」
「どうして人間……それも勇者である私がいても、誰も何も言ってこないの?やっぱりリリィとかメルナちゃんがいるから?」
「ふふふ、違いますよ。クロ様が素敵な方だからじゃないでしょうか」
「はぐらかさないで。普通に考えたらこんなことあり得ない。人間の勇者が魔族の町に来ているのに、石一つ投げられないなんて。あと、どうして子供たちは私のことを指さしてくるの?」
「それはクロが変な格好だからじゃない?それこそ、人間の格好だもの」
私の話に興味なさそうに、メルナが適当に答える。
確かに今、私は勇者の服装を着ていた。
他の魔族が来ている服とは明らかに異なってはいる。
でも、子供が私を見るその目は恐怖や物珍しさではない気がした。
そんなことを考えていると、急に店の中から、おっさんのような声が響いた。
「あっ!リリィとメルナじゃねぇか。久しぶりだな!!」
その店にはピカピカに磨かれた、盾や防具がびっしり並んでいる。
中からトコトコ出てきた魔族は、体は小さくひげがもっさりしていた。
頭も少し剥げていて、体より大きな金属のハンマーを持っている男のドワーフだった。
「ルド様。お久しぶりです」
「ルドじゃん。久しぶり!!」
リリィとメルナは仲が良いのか、笑顔で手を上げながら返事をした。
そしてルドと呼ばれたドワーフの方に向かう。
「二人ともが一緒にこんな町をぶらぶらしているなんて珍しい。どうした、こんなところで。昔みたいに仕事から抜け出してきたんじゃねぇだろうな?」
「ふふふ、ご冗談を。わたくしは仕事を抜け出したことなど、これまで一度もございませんので」
「僕はよく抜けるけどね……そうじゃなくて、クロと一緒に散歩しながらこの町を案内してるの」
「クロ?」
ドワーフは二人の間から私をみる。
私は慌てて二人の横に立って、頭を下げた。
「初めまして。クロって言います」
「……」
ルドは私の方を、眉をひそめながらじっと見る。
急に、満面の笑みで笑い、私の腰あたりを叩き始めた。
「がっはっはっはっは!!!嬢ちゃんのお友達じゃねぇか!懐かしいなぁ。何言ってんだ!!初めましてじゃねぇだろ?」
「嬢ちゃんの……友達?」
「まさか、儂のこと忘れちまったとか??やっぱりここ数年で頭の髪がさらに抜けちまったから……」
「ルド様。昔から変わりませんよ」
「リリィ~そりゃないだろ。ほらここ!最近、ここの髪の毛も無くなっちまってよ」
ルドは頭のてっぺんをリリィの方に向ける。
確かに……少しない。
「ねぇ、そんなことどうだっていいよ!」
リリィとルドの話にメルナがプクーと膨れながら怒っている。
だけど、そんなことよりも気になる点があった。
『嬢ちゃんの友達』って言うのは……まさか。
「すまんすまん。つい、いつもの癖で」
「あのぉ……」
意を決して尋ねる。
「おぉ。どうかしたか?儂のこと思い出してくれたか!?」
「嬢ちゃんって言うのは……リンちゃんのことですか?」
「リンちゃん……あぁそうか。確かあの頃その名前で呼べって、ずっと怒っていたな。儂が嬢ちゃんっていうたびに毎回怒られてたなぁ」
「リンちゃんを知っているんですね!?」
私はズイッと近づいて尋ねる。
ルドは大きく頷く。
「もちろん、あの嬢ちゃんとは長い付き合いだったからな」
「なら……今あの子はどこにいるのですか?」
「細かいことまでは知らないけど、噂話なら知っとるぞ」
「それでもいいので、教えてください!」
「別にいいが、リリィからは教えて貰わなかったのか?あいつの方が一番ちゃんとした情報を知っていると思うが……」
「リリィは何も教えてくれなくて」
「なぁ、リリィ。儂がしゃべっていいのか?」
ルドはリリィの方を向いて話す。
リリィは何も言わず、ゆっくりと縦に頷いた。
「そうか。なら言うが……」
ルドは少しだけためらう素振りを見せる。
だけどしっかりとこちらを向いて、目を見て話してくれた。
「ホントかどうかは知らんが、今は行方不明……っていう噂が流れとるぞ」
「行方……不明?」
私はリリィの方を見る。
リリィは眉をピクリとも動かさず、一言も話さなかった。
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