赤い瞳の少女
ふと、目が覚める。
全く見たことのない天井がそこには広がっていた。
私はかけられていた布団をのけつつ座り、周りを見回してみる。
部屋は狭く、私がいつもつけている勇者の服と剣が椅子に掛けてあった。
窓からは明るい光が射しこんでいる。
ただ他にはなにも置いてない殺風景な部屋だった。
恐らく……宿屋だと思う。
ふと自分の体を触ってみると、もちろんつけていた服はすべてなく、宿のだと思われる無地の白いパジャマを着ていた。
この場所はどこだろうか……
いや、そもそも私はどうして……
そんなことをぼんやり考えながらも、無意識に右手の手のひらを天井に向けて、突き出す。
夢での中で見た魔法を、そのまま呟いてみる。
「疾風」
窓も空いていない部屋であるにも関わらず、びっくりするほどの突風がふき荒れる。
ガタガタ……ガシャン!!!
部屋の窓はガタガタと揺れ、机やいすなどは大きく動いた。机の上に置いてあったコップやなどは空を一瞬飛んだのち地面に落ちてしまい、割れて大きな音が部屋に響く。
「ど、どうかしたの!!」
突然、部屋に見たこともない、かわいい少女が飛び込んできた。
小学生みたいな背の高さで、腰まである髪は真っ赤。
瞳も赤く、頭には可愛さが一切ない紅色の角が二本ついていた。
逆に背中からは、小さくて可愛い赤い翼が二本パタパタとしている。
緑の服に赤いリボンがついていて、赤いスカートをはいていた。
スカートの下から長い尻尾が見え隠れしている。
そんな少女が私の方を見て目を真ん丸にした。
驚きも隠さずに扉の外に向かって大声で叫んだ。
「リリィ!クロが目を覚ましたよ!!!」
そして、バタバタと私の方に駆け寄ってきて、胸に飛び込んでくる。
少し目に涙をためていた。
「大丈夫!?しんどくない??痛い所は?」
「何もない……かな」
「本当に?あっ……お茶とか飲む?すぐに持ってこようか??」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
……誰?
心の中ではそう思いつつも、目の前の少女はすごく安堵していたので、言えなかった。
心配してくれるのはとっても嬉しいけど、どう話せばよいかわからない。
「クロ様!?お気づきになりましたか!!」
すると、リリィも部屋に入ってきた。
そして少女と同じように私の方に駆け寄ってきてくれる。
「リリィ……私は……」
「クロ様はアイクとの戦いのあと、急にその場に倒れて意識を失ったのです。すでに三日は寝ていたかと」
「確かリリィとアイクが戦って、その後にアイクに色々言われちゃって……その後からってことね」
「はい。なので、私の方でクロ様を安全な場所……魔族の町ラディアまでお運びいたしました」
「えっ!?ここって魔族の町なの?」
私は慌てて窓の外をよく見てみる。
行きかう人は、確かに人間ではなかった。
ドワーフ、コボルト、ピクシーなどなど。
特徴ある魔族の顔や体をしている者しかいなかった。
「本当なんだ……初めて魔族の町に来た。というか、この町までどうやって私を運んだの?」
「ふふふ。もちろん、わたくしがクロ様をおんぶして」
「えっ、リリィが私を?結構距離があったと思うけど……」
「ちょっぴり、大変でした」
いつもの笑顔でにこりとしながら話すリリィ。
パッと見た限り、か弱そうなメイドの女性にしか見えないし、そんな細腕で私をおんぶして歩けるとは思えない。
が、脳裏にアイクとの戦いが浮かぶ。
アイクの剣を片手で止めていたし、見かけによらず余裕だったのかもしれない。
そんなことを考えていたら、横にいる少女が膨れて少し怒った様子で話しかけてくる。
「僕も大変だったんだから!町に着いてゆっくりお昼ご飯を食べていたら、珍しくリリィから念話が来て、焦った感じで『今すぐ宿をとってほしい』なんて言うからさ」
「この街にいるのは見てましたから。あと、わたくしがクロ様をおんぶしてこの町の中をずっと歩くのは、流石にあまり良くないと思って」
「それはそうだけど……でも、びっくりするじゃん!リリィがクロをおんぶしてるし、クロはボロボロな上に気絶しているし……ホント、意味わかんない!」
少女がプリプリと怒っている。
そんな少女にリリィはさっと近づき、頭を撫でながら話しかける。
「怒らないでください。でも……本当に助かりました。ありがとう、メルナちゃん」
「メ、メルナちゃん!?」
私はつい大声で叫んでしまう。
あの巨大な赤竜がこんな可愛らしい少女に!?
メルナは今更何を言ってるの、と言わんばかりに首をかしげながら話しかける。
「クロはこの姿の僕の方が見慣れてるでしょ?」
「いや……あの……前に乗せて貰った大きい竜の姿しか知らないんだけど」
「えっ、まだ記憶が戻っていないの!?あなた、記憶を取り戻すためにわざわざあの丘まで行ったんでしょ?僕との思い出は?」
「あの……ごめんなさい。まだ思い出せてないの」
「メルナちゃん、ちょっと」
横にいたリリィがメルナの肩をトントンと叩いた。
「クロ様も必死に記憶を思い出すために頑張っていたのですが、思い出せなかったのです。その上、仲間の方が来てしまい戦いになってしまったので、正直それどころじゃなかったの」
「そっか……そうだよね。クロ、ごめん」
メルナは頭を下げる。
こんな素直で素敵な子なのに、未だに記憶が戻っていないことが辛い。
私は首を大きく横に振った。
「いえ、私がちゃんとメルナちゃんのことを思い出せないのが悪いから。私の方こそ、ここまで頑張って連れて来てくれたのに、ちゃんと思い出せなくてごめんなさい」
「遅くなってもいいから、ちゃんと思い出してね!あと、僕は前の移動で疲れちゃって当分この姿で居るから、よろしく!」
「その姿だと疲れにくいの?」
「もちろん!体も小さいから省エネだし、何より燃費がいいからね!」
メルナは背中の小さな翼を少しだけはためかせる。
すると、ほんの少しだけ浮いた。
「僕一人ならこっちで移動したほうが楽なんだ。さすがに魔王城近くでは背中に誰かを載せることがほとんどだから、あらかじめ竜に変身することの方が多いんだけど。でもね、あの姿って正直疲れるんだよね~」
「そうだったんだ……」
伝説の竜がこんな可愛い人型になることも知らなかったが、竜の方が疲れるというのも意外だ。
メルナは何か思い出したかのように私の方に指をさしてきた。
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