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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第87話 ケルちゃん、童話になる



文明というものは、

芽生えた瞬間が一番危険だ。

理由は簡単。

想像力にブレーキが無い。


桃太郎事件(※エルフ史上初の物語摂取)から数日後。

仮設住宅の一角で、

エルフたちが何やら集まっていた。

「……ここは、こうじゃないか?」

「いや、もっと神秘的に!」

「夜にした方が雰囲気が出る!」

「ケルちゃんは光ってるべきだろう!」

「光る必要ある?」

熱い議論の中心には、

木の板と炭で書かれた文字。

――物語だった。

「……何してる?」

通りがかった統括が声をかける。

「おお!統括殿!」

「実はですね!」

族長が、

誇らしげに板を掲げた。

「新しい物語を作っております!」

「ほう?」

「題して――」

族長は、

妙に荘厳な声で読み上げた。

『三つの影を従えし白き番犬』

「……」

統括、嫌な予感しかしない。


読み上げが始まる。

白き森の外れに

小さく、しかし偉大なる番犬がいた

その背には主を乗せ

五十歩を一息で跳び

怒れば地獄の炎

優しければ神の癒し

三つの影は一つにして

世界の門を守る――

「……待て」

統括が手を上げる。

「それ、誰の話だ?」

エルフたちは、

キラキラした目で答えた。

「ケルちゃんです!」

「やっぱりか」


その頃。

当の本人――

ケルちゃんは。

広場で、

クロ・ポチ・ハナと遊んでいた。

尻尾をぶんぶん振りながら、

ボール(※岩)を追いかけている。

「ワン!」

「……?」

そこへ、

数人の若いエルフが

おそるおそる近づいた。

「……あ、あの」

「ケ、ケルちゃん様……」

「?」

ケルちゃん、首をかしげる。

「こ、これ……」

差し出されたのは、

拙い文字で書かれた紙。

『ケルちゃんのぼうけん

~もりをすくったしろいいぬ~』

「?」

ケルちゃん、

さらに首をかしげる。

クロがぼそっと言う。

「……なんか、偉そう」

ポチは尻尾を振る。

「食べ物じゃないなら興味ない」

ハナは微笑んだ。

「可愛いですね」


数日後。

事態はさらに悪化する。

「聞いたか?」

「ケルちゃん童話、第二巻が出たぞ」

「今度は鬼人族を追い払う話だ!」

「三つの影が合体して巨大犬になるらしい!」

「……それ盛りすぎでは?」

誰も止めない。

むしろ、

盛る方向に全力だった。


ある朝。

統括の前に、

エレブスが現れる。

「父上」

「……嫌な予感がする」

エレブスは、

分厚い紙束を差し出した。

「エルフたちが作った

“児童向け物語集”です」

「……何巻ある?」

「現在、七巻です」

「増えすぎだろ」


読み始める統括。

ケルちゃんは

わるいこをみると

おしおきをする

でも

なおしてもくれる

だから

こわいけど

やさしい

「……教育に悪くないな」

次のページ。

ケルちゃんは

かんりしゃよりえらい

でも

かんりしゃがだいすき

「待て」

統括、

ページを閉じる。

「誰だ、こんな事教えたの」

エレブスは視線を逸らした。

「……自然発生です」


問題の場面は、

その日の夕方に起きた。

広場で、

子エルフたちが遊んでいる。

「ケルちゃんごっこだ!」

「ぼくがケルちゃん!」

「じゃあ私は影その一!」

「私は影その二!」

「治す係やるー!」

ケルちゃん本人が、

目の前を通りかかる。

「……?」

子エルフたち、

一斉に整列。

「「「ケルちゃん様!」」」

「?」

ケルちゃん、

完全に困惑。

その様子を見た統括が、

深くため息をついた。

「……文化、早すぎたか」

エレブスが真顔で言う。

「ですが父上」

「尊敬される存在がいるのは

統治に有利です」

「……それが犬なのはどうなんだ」

その瞬間。

ケルちゃんが、

統括の方を見て――

嬉しそうに尻尾を振った。

「ワン!」

統括は、

少し笑った。

「……まあいいか」

「本人は何も分かってないし」

こうして。

エルフの文明史に、

新たなジャンルが生まれた。

――ケルちゃん童話。

本人は、

最後まで

**「?」**のままだった。



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