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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第85話:食の女神と大革命



森には、まだ入れなかった。

理由は単純だ。

――入った瞬間、森が「無理です」って音を立てるからである。

「というわけでだ」

統括は、森の外縁を指差した。

「ここに仮設住宅を作る」

白くて、無機質で、

**木目? なにそれ?**みたいな建物が並ぶ。

エルフたちは即座に顔をしかめた。

「……落ち着かない」

「木がない……」

「土の匂いが、薄い……」

「文明の香りがする……」

「それは褒め言葉だ」

そんな中――

一歩前に出たのが、デーメーテールだった。

「今日は、別の再教育をしましょう」

「再教育……?」

嫌な予感しかしない。

「“食”よ」

その瞬間。

「……は?」

「食?」

「我々は森の恵みのみを――」

「果実と木の実で十分だ」

「肉など、不浄!」

「血の気が多すぎる!」

「筋肉が育たないわよ?」

――即死。

言葉のナイフが、

エルフ三種族の胸に突き刺さった。

「……な、なぜそれを」

「だって」

デーメーテールは、

エルフたちの腕を一瞥する。

「筋トレしてる割に、細いもの」

「ぐはっ」

「精神ダメージ!」

「でも命は奪わない!」

その時。

「でも、美味しいよ?」

エレブスが、

純度100%の無邪気さで言った。

「……は?」

「え?」

「いや」

「肉」

「普通に」

「美味しい」

空気が、凍った。

次の瞬間。

デーメーテールの口角が、

悪役みたいに上がった。

「……そう」

「なら、見せてあげるわ」

指を鳴らす。

――ドン!!

即席とは思えない厨房が出現。

同時に、

とんでもない匂いが広がった。

「……な、何だこの香り」

「森の実……?」

「いや、違う……」

「……腹が、鳴る……」

「鳴ってない!」

「鳴ってない!」

「……鳴った」

並べられた皿。

・鶏肉の香草焼き

・ベリーソースたっぷり

・見た目は上品

・匂いは犯罪級

「……これは?」

「鶏肉よ」

「……鳥?」

「飛ぶやつ?」

「……命では?」

「あなたたちも植物の命食べてるでしょ」

「……ぐうの音も出ない」

「さあ」

「どうぞ」

エルフたち、

10秒間フリーズ。

最初に動いたのは、

元ダークエルフ代表だった。

「……一口」

「一口だけだ」

フォークを震わせながら、

肉を口へ。

――もぐ。

「…………」

「………………」

「………………!!?」

目が、

見開きすぎて白目が見えた。

「……は?」

「なに、これ」

「……柔らか……」

「……噛んだ瞬間、消えた……?」

「……ベリー、裏切らない……」

二口目。

三口目。

「……あ」

「……止まらん」

「……俺、今、獣になってないか?」

「大丈夫、それ文明」

次に、

元エルフ代表。

「……不浄……」

「不浄……」

「……」

もぐ。

「…………」

「………………」

「……っ!?」

「……甘い……」

「……肉が、甘い……」

「……何この幸福」

フォークが、止まらない。

最後に、

元ハイエルフ代表。

「……」

「……」

「……」

誰よりも時間をかけて、

一口。

「………………」

「………………」

「………………」

「……なぜ」

「……我らは」

「……これを拒んでいた?」

――悟り。

次の瞬間。

「おかわり」

「は?」

「おかわり!」

「え?」

「もう一皿!」

「二皿!」

「香草多めで!」

「ベリー追いがけ!」

「皿が足りない!」

「文明が進みすぎている!」

デーメーテール、

完全勝利の笑顔。

「でしょう?」

その日。

エルフ三種族は、

初めて肉を巡って揉めた。

「俺の分だ!」

「いや、私が先だ!」

「筋肉が求めている!」

「理性が負けている!」

誰かが、呟く。

「……この生活」

「……続けたい」

「……続けるには?」

「材料が要るな」

「育てる?」

「狩る?」

「……」

「呼ぶか」

エレブスが言った。

「クロノス」

――農耕の神、降臨。

結果。

・エルフ:農耕を学ぶ

「土、楽しい」「育つの早くない?」

・ダークエルフ:狩猟を学ぶ

「狙う」「仕留める」「筋肉が喜ぶ」

・ハイエルフ:料理を習う

「切り方が違う!?」「火力!?」

「……我ら、何をしているのだ」

「文明だ」

その夜。

仮設住宅の周囲には、

笑い声と、

肉の焼ける音と、

腹いっぱいの呻き声が響いた。

エルフ三種族は理解した。

これは、料理ではない。

これは――

生き方の再構築だ。

そして。

「……明日も、肉?」

誰かが聞いた。

デーメーテールは、

にっこり笑った。

「もちろん」

森の再生より先に。

エルフたちの価値観が、

胃袋から崩壊した夜だった。



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