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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第77話 揺れる森の民/逆ギレと現実



白い収容区画は、異様なほど静かだった。

騒がしさはある。

だがそれは怒号ではない。

恐怖とも違う。

――価値観が音を立てて崩れる音だった。

「……本当に、神の世界なの?」

「ここ……天界、って……」

誰も確信を持てず、

互いの顔を見ては、視線を逸らす。

「ハイエルフ様が……」

「さっき、正座……してた……」

その事実が、

何よりも現実を突きつけていた。

これまで彼らの世界には、

明確な“上下”があった。

ハイエルフは上位。

エルフは従属。

神の意志は、ハイエルフを通じて降りてくる。

――そう、思い込んでいた。

「……ねえ」

「神の使い、じゃなかったの?」

誰かが、恐る恐る口にする。

「神様本人が……」

「“自称だ”って……」

言葉が、宙に落ちた。

否定する声は、出なかった。

「じゃあ……」

「私たちが信じてたのは……」

沈黙。

「……森が壊れかけたのは」

「世界樹が折れたのは」

「……私たちが、止めなかったから?」

誰かが呟いた瞬間、

空間の奥から、足音が響いた。

正義君に乗った統括が、

静かに現れる。

エルフたちは、反射的に身構え――

そして、次の言葉で、完全に固まった。

「いいか、よく聞け」

統括の声は、低く、だがはっきりしていた。

「神の前には上も下もない」

一拍。

「神は、平等だ」

ざわり、と空気が揺れる。

「ハイエルフだから偉い?」

「違う」

「古いから?」

「違う」

「魔力が高いから?」

「それも違う」

統括は、淡々と続ける。

「そもそも俺はな」

「お前らを“神の使い”だと思ったことはない」

「ちょっと魔力が高いだけの、

神の使いを自称したエルフだ」

言葉が、胸に突き刺さる。

「だからだ」

「怠惰も」

「放置も」

「見て見ぬふりも」

「全部、同じ重さで“失敗”だ」

誰かが、唇を噛んだ。

「……でも」

「もう、遅い……?」

「遅くない」

即答だった。

「やり直す」

「管理を学ぶ」

「責任を取る」

「それを選ぶなら――道は残す」

その言葉に、

エルフたちは初めて“前”を見た。

恐怖の中に、

逃げではない選択肢が、確かにあった。



隣の区画は、空気が違った。

「ふざけるな!!」

怒声が壁を叩く。

「我らは戦ってきた!」

「血を流し、森を守った!」

ダークエルフの代表が、

拘束具を鳴らして叫ぶ。

「安全な場所にいた連中と、

同じ扱いだと!?」

統括は、腕を組んだまま。

「……で?」

その一言で、怒りが爆発する。

「神気取りが!」

「違う」

統括は、静かに言った。

「神だ」

「だから言う」

一歩、近づく。

「お前らの怒りは理解できる」

「だがな」

「それを弱いところにぶつけた時点で、

正義じゃない」

「暴力だ」

「黙れ!」

その瞬間。

「燃やすぞ?」

背後で、ポチの炎が揺れる。

「逆ギレ、だめ」

クロの水が床を凍らせる。

「痛み、必要?」

ハナが、にこりと笑う。

「……っ!」

ダークエルフの膝が、落ちた。

統括は、容赦なく続ける。

「管理を放棄したのは誰だ」

「報告を怠ったのは誰だ」

「協力を拒んだのは?」

沈黙。

「答えは一つだ」

「全員だ」

「だから――全員、やり直す」

「神の前では、平等だ」

ダークエルフは、拳を握り――

やがて、力を抜いた。

「……完全敗北、か」

「そうだ」

「でも、終わりじゃない」

統括は背を向ける。

「次は、選択だ」

扉が閉まる。

残された者たちは、

初めて理解した。

――これは弾圧ではない。

――裁きですらない。

逃げられない現実を前に、

どう生き直すかを問われているのだと。

そしてその全てを、

三首の神獣が、静かに見守っていた。

次は――

本当の「管理」が始まる。



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