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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第74話 全員捕獲



朝――

それは、あまりにも唐突に起こった。

エルフの森が、淡く、しかし逃げ場のない光に包まれる。

木々の影が消え、地面と空の境界が曖昧になり、

森全体が「一つの空間」に封じ込められたかのようだった。

「……な、何だ?」

最初に異変に気付いたのは、森の外縁で狩りをしていたエルフたちだった。

次の瞬間、どこからともなく“声”が降ってくる。

『テステス。聞こえる? ……うん、問題なし』

空そのものが、しゃべった。

エルフたちが凍り付く中、続く声は妙に気の抜けたものだった。

『じゃ、始めようか』

その言葉を合図に、

森の上空に巨大な魔法陣が展開される。

重なり合う光の輪。

精密すぎる構造。

それはエルフたちが知る「魔法」とは、明らかに別物だった。

「神……?」

誰かが呟いた。

だが、答えはない。

次の瞬間――

地面が、消えた。

否、正確には違う。

地面はある。木もある。だが“重力の主導権”が、完全に奪われた。

エルフも、ダークエルフも、ハイエルフの居城にいた者も、

すべてが一斉に宙へと浮かび上がる。

悲鳴。混乱。魔法の詠唱。

しかし――

どれも、発動する前に止まった。

「燃やすぞ?」

森の中央に、三つの首を持つ黒い影が出現する。

ポチの口から、赤い炎が灯り、

クロの周囲に、森を鎮める水の流れが走り、

ハナの瞳が、淡く優しい回復光を帯びる。

三つの声が、重なった。

「動くな」

「逃げるな」

「抵抗すると、ちょっと痛いよ?」

“ちょっと”の定義が狂っていることを、

この森の者たちは、まだ知らない。

次の瞬間。

――お仕置き(調整版)。

炎が、直接触れない距離で燃え上がり、

水が衝撃だけを伝え、

回復が「致命傷にならないギリギリ」で追従する。

痛みだけが、正確に与えられる。

「ぎゃああああああ!」

「な、何だこれは!?」

「死なない……だが……!」

統括の声が、上空から淡々と響く。

『はいはい。説明するね』

姿は見えない。

だが、その声には、圧倒的な確信があった。

『今から君たちは、全員“捕獲”されます』

『殺さない。壊さない。逃がさない』

『理由? 簡単だよ』

一拍。

『――君たち、管理放棄したでしょ』

ハイエルフの居城から、怒号が上がる。

「何者だ! 我らに無礼を――」

その言葉は、最後まで言えなかった。

ケルちゃんが、ゆっくりと首を傾げる。

「燃やすぞ?」

次の瞬間、

ハイエルフの足元だけが一瞬で高温化し、

即座に冷却され、

同時に回復がかかる。

「――っ!!?」

叫びにもならない声。

『ね? 死なないでしょ』

統括の声は、どこまでも冷静だった。

『でも、怖いでしょ』

森全体に、理解が走る。

――逆らえない。

――勝てない。

――逃げ場がない。

光の柱が、森の各所に立ち上がる。

一人、また一人と、

エルフもダークエルフも、ハイエルフですら、

光に包まれて消えていく。

捕獲。

選別なし。

例外なし。

最後に残ったのは、

森そのものだけだった。

天界。

正義君の操縦席で、統括は軽く伸びをする。

「よし、全員確保っと」

隣で、ケルちゃんが尻尾を振る。

「ほめて」

「がんばった」

「えらい?」

統括は笑って、ケルちゃんの頭を撫でた。

「よし、ケルちゃん。よく頑張ったな」

三つの首が、同時に誇らしげにうなずく。

その光景を、遠くから見ていた神々は、

誰一人として、言葉を発せなかった。

――こうして。

エルフの森に住まうすべての者は、

一人残らず“捕獲”された。

責任の所在を問う前に。

裁きを下す前に。

次に待つのは――

「管理」と「再教育」だった。

そして統括は、静かに呟く。

「さて……」

「誰から話を聞こうか」



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