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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第73話 天界の庭



天界の庭は、今日も静かだった。

白く磨かれた石畳。

空を映す水路。

風に揺れる神樹の葉音だけが、ゆっくりと時間を刻んでいる。

――そこに、異質な気配があった。

「……来い、ケルちゃん」

統括は、筋トレ終わりに汗を拭きながら、軽く手招きした。

三つの首を持つ神獣――

三首のケルベロス。

だが、その姿は“地獄の門番”などという言葉とは程遠い。

鍛え上げられた筋肉。

無駄のない体躯。

そして三つの瞳は、それぞれ異なる色の理性を宿していた。

「鍛える?」

ポチが、首を傾ける。

「もっと強くなる?」

クロが、低く唸る。

「……お仕置き?」

ハナが、にこりと微笑む。

「今日はな、強さの確認だ」

統括は、背後に浮かぶ正義君に意識をリンクさせる。

「俺が直接やると、色々壊れるからな」

その瞬間。

庭の空気が変わった。

正義君が起動し、統括の気配が一段階“落ちる”。

それでもなお、圧倒的だった。

――数値は、神々の間では明白だ。

統括:レベル65000

ケルちゃん:レベル5000

アウローラ:3200

エレブス:2800

デーメーテール:2600

ハイエルフ:300

エルフ/ダークエルフ:150

「バレちゃったけど、まぁいいか」

「……」

遠巻きに見守る神々が、息を呑む。

「正義君相手に……ケルベロスが?」

「いや、あれ……もう神獣の域じゃ……」

誰も口に出さなかったが、全員が理解していた。

――ケルベロスは、既に自分たちより強い。

「よし、来い」

統括の声に、三首が同時に構える。

次の瞬間。

ポチの口から、制御された神炎が放たれた。

ただし“燃やし尽くす”ほどではない。

あくまで、威圧と牽制。

同時に。

クロが水流を操り、庭の石畳を濡らし、火勢を瞬時に制御する。

蒸気が立ち上るが、何一つ壊れない。

そして――

ハナ。

淡く光る回復魔法が、場全体に広がる。

「……痛い?」

統括が聞くと。

「一瞬だけ」

ハナは、にこっと笑った。

「でも、治る」

「よし」

統括は満足そうに頷いた。

「それをな――お仕置きって言うんだ」

三首が同時に、ぴしっと背筋を伸ばす。

「お仕置き!」

「覚えた!」

「……使いどころ、大事?」

「そうだ」

統括は、指を立てる。

「間違っても、エルフ相手に全力でやるな」

神々が一斉にうなずく。

「死ぬからな」

「……死ぬ」

ハナが真顔になる。

「じゃあ、捕まえる」

「そう、それ」

統括は続ける。

「捕獲方法はこうだ」

・ポチ:炎は“足元だけ”

・クロ:水で動きを止める

・ハナ:回復で逃げ場を塞ぐ

「怖がらせて、ちょっと痛い」

「ちょっと?」

「ちょっとだ」

「……了解」

三首が、真剣な顔でうなずく。

遠くで見ていた神々が、言葉を失っていた。

――神獣に、“加減”を教えている。

それも、完璧に。

「よし」

統括は、正義君を解除し、庭に降り立つ。

「ケルちゃん、よくがんばったな」

三首が、一斉に尻尾を振る。

「褒められた」

「もっと鍛える」

「次は、うまくやる」

「それでいい」

統括は、ケルちゃんの頭――三つともを順番に撫でた。

「用事が済んだらな、アウローラたちも呼ぶ」

「一緒に行く?」

「ああ」

統括は、空を見上げる。

その向こうにある、崩れかけた森を思い浮かべながら。

「……明日が楽しみだな」

その言葉に、天界の庭は一瞬だけ、静まり返った。

誰もが理解していた。

これは“戦争”ではない。

裁きでもない。

――管理の始まりなのだと。

そして、

その先頭に立つのが。

筋肉と理不尽と優しさを併せ持つ神と、

三首の神獣であるという事実を。

天界の庭は、静かに――

だが確かに、次の日を待っていた。


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