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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第71話 誰が責任を負うのか



森は、もう泣いていた。

それは比喩ではない。

エルフの森に満ちていた魔力の流れが、明確に「乱れて」いた。

世界樹の根元から染み出すように漏れ出す魔力。

それを抑え、循環させるはずの結界は、あちこちでひび割れ、もはや「森を守る膜」ではなく、かろうじて形を保つだけの名残となっていた。

天界。

ウェスタのタブレットが、連続して警告を吐き出す。

【魔力循環率:低下】

【森系統フィールド:崩壊兆候】

【世界樹:内部損傷拡大】

「……始まったわね」

アウローラが、珍しく声を落とした。

「ええ。予測より早いです」

デーメーテールも、眉をひそめる。

土と命を司る彼女には、この変化が数字以上の「痛み」として伝わっていた。

エレブスは、ケルベロスの三つの首を抱き寄せながら、黙って画面を見ていた。

「……森、死ぬ?」

「このままなら、ね」

アウローラの答えは、容赦がなかった。

そして。

一人だけ、椅子に深く腰掛け、腕を組んだまま画面を見つめている神がいた。

統括だった。

「なあ」

静かな声だった。

「これ、誰の責任だと思う?」

その問いに、すぐ答える者はいなかった。

沈黙を破ったのは、ウェスタだった。

「……管理を放棄したハイエルフ、でしょう」

「管理?」

統括は、鼻で笑った。

「違うな」

画面が切り替わる。

そこには、森の中央、崩れかけた世界樹の周囲で、寝転がり、果実酒を飲み、何事もなかったかのように過ごすハイエルフたちの姿が映っていた。

「彼らは“選んだ”んだ」

統括は、淡々と言った。

「怠惰を。責任を負わない生き方を。

 森がどうなろうと、自分たちは困らないと信じる道を」

アウローラが唇を噛む。

「でも……神としては、放っておけないでしょう?」

「放ってない」

統括は即答した。

「助言もした。選択肢も示した。

 それでも動かなかった。それだけだ」

エレブスが小さく言った。

「じゃあ……悪いのは、ハイエルフだけ?」

統括は、少し考えてから首を振った。

「いいや」

再び画面が切り替わる。

今度は、エルフの集落。

戦わないことを選び、ダークエルフを見捨て、ハイエルフにすべてを委ねた者たち。

今は不安に怯えながら、空を見上げている。

「責任を投げたのは、彼らも同じだ」

さらに、別の映像。

敗走したダークエルフたち。

怒りと絶望を抱え、森の外縁で身を寄せ合っている。

「戦うことを選んだが、勝つ覚悟まではなかった」

統括は、すべてを等距離で見ていた。

「選ばなかった者、選びきれなかった者、

 そして、選んだ結果から目を逸らした者」

沈黙が重く落ちる。

デーメーテールが、静かに問う。

「……あなたは?

 あなたも、この結果を見ているだけ?」

統括は、ようやく立ち上がった。

「違う」

その目は、はっきりと前を見ていた。

「俺は、次の“選択”を用意する」

ウェスタが息をのむ。

「それは……介入、ですか?」

「是正だ」

統括は言い切った。

「裁きじゃない。

 誰が責任を取るか――それを、はっきりさせるだけだ」

エレブスが、ケルベロスを見る。

三つの首が、同時にうなずいた。

「働かないなら」

「管理できないなら」

「燃やすぞ?」

「……いや、燃やすのは最後な」

統括は即座に訂正した。

そして、視線をタブレットに戻す。

映るのは、崩れ始めた森と、未だ何も理解していないハイエルフたち。

「怠惰には、必ず請求書が来る」

低く、確かな声だった。

「さて……

 誰が、この森の“管理者”になるか」

その問いが投げられた瞬間。

エルフの森は、決定的な段階へと踏み込んだのだった。



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