表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/100

第64話 動かぬ頂点



エルフの森、その最奥。

世界樹の根が絡み合うように広がる、白く静かな宮殿。

そこが――ハイエルフの住まう場所だった。

玉座は高く、だが埃一つない。

磨かれているのではない。

誰も触れないから、汚れないのだ。

その玉座に、ハイエルフの王――

いや、“王と呼ばれている存在”は、だらしなく身を預けていた。

長い銀髪は無造作に垂れ、

透き通るような肌に、気怠げな黄金の瞳。

「……争い? また?」

彼は欠伸混じりに言った。

玉座の下で、数名のハイエルフが膝をつく。

だがその姿に、緊張も敬意もない。

「はい。

 エルフ族とダークエルフ族の衝突が激化しています」

「ふぅん……」

興味がなさそうに、王は指先を揺らす。

「放っておけばいいじゃない。

 どうせ百年もすれば、勝手に静まるでしょ」

「ですが……死者が――」

「寿命、短いんだし。

 それも含めて“生”ってやつじゃない?」

冷たい言葉。

だがハイエルフたちは、誰一人反論しなかった。

彼らは知っている。

――この存在は、動かない。

3000年という寿命。

圧倒的な魔力量。

エルフ族すべてが崇め、ダークエルフすら畏怖する頂点。

だが同時に――

何もしない頂点でもあった。

「そもそもさ」

王は身体を横に倒し、頬杖をつく。

「管理とか統治とか、面倒なんだよね。

 争う元気があるなら、好きにやれば?」

その言葉に、沈黙が落ちる。

沈黙の中、ようやく一人のハイエルフが声を絞り出した。

「……王よ。

 このままでは、森の魔力循環が崩れます」

「へぇ」

「魔力暴走の兆候も……」

「それってさ」

王は目を細め、少しだけ笑った。

「面白くなるってこと?」

その一言で、全てが終わった。

忠告は却下。

進言は無意味。

頂点は、今日も動かない。


一方、その“動かぬ頂点”を神のように崇めるエルフ族。

彼らは王の無関心を、崇高な沈黙と解釈していた。

「王は我らを見守っておられる」

「高みにある者は、些事に関わらぬのだ」

「選ばれるのは、次の頂点に相応しい者だけ」

そして――

その“次の座”を巡って。

エルフ族とダークエルフ族は、

互いに刃を向けるようになっていた。

「ハイエルフの後継は、我ら正統エルフだ!」

「笑わせるな。

 森の闇を抱く我らこそ、真の管理者だ!」

戦いは、理念ではない。

承認欲求と焦燥が火種だった。

頂点が動かないからこそ、

下が勝手に動き出す。

均衡は、静かに、しかし確実に崩れていった。


そのすべてを。

天界のどこかで――

まだ誰も、気づいていなかった。

いや、正確には。

気づいている者はいた。

ただし彼は、まだ筋トレ中だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ