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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第63話 崩れゆく均衡



ハイエルフの長老会議は、今日も森の奥深く、白い大樹の根元で開かれていた。

だがその光景は、会議というより――

昼寝の集会に近い。

「……ふぁ……」

「まだ続くのかね……」

「魔力の流れが乱れている? まあ、森は昔からそういうものだろう」

寝台のように柔らかい苔に身を預け、ハイエルフたちは気だるげに言葉を交わす。

寿命三千年。

彼らにとって数十年の異変など、瞬きほどの時間にすぎなかった。

「エルフ族とダークエルフ族が、また小競り合いを?」

「若者は血の気が多い。放っておけば疲れてやめるさ」

「我らが動く必要はない。森は我らのものだ」

その言葉に、誰も異を唱えない。

――それが、均衡だった。

ハイエルフが頂点に立ち、

エルフとダークエルフが従い、

森は永遠に続く。

少なくとも、彼らはそう信じて疑わなかった。

だが。

その森の外縁では、すでに歯車が狂い始めていた。


エルフの集落では、若き族長が怒りを隠そうともせず、声を荒げていた。

「なぜハイエルフ様は動かれない!」

「森の魔力が乱れ、狩りもままならない!」

「このままでは我々は衰退するだけだ!」

集まったエルフたちは、口々に不満を漏らす。

「ハイエルフ様は、もう我らを見ていない」

「森の管理も、調整も、すべて放置だ」

「それなのに、崇めろと言うのか?」

その言葉は、かつてなら口にすることすら許されなかった。

だが今は違う。

森の均衡が崩れ、

信仰が揺らぎ、

恐れが薄れ始めていた。

「……ならば」

族長は、低く告げる。

「我らが次の座を目指すしかない」

その瞬間、空気が張り詰めた。


一方、ダークエルフの地下都市でも、同じような議論が行われていた。

「ハイエルフは怠惰だ」

「森の魔力を独占し、調整すらしない」

「我らが力を示す時ではないか?」

暗い広間に響く声は、鋭く、熱を帯びている。

「エルフどもが動き出したという噂もある」

「ならば先を越すべきだ」

「ハイエルフに代わる管理者――それが我らだと示す」

ダークエルフたちは、静かに拳を握った。

彼らは知っていた。

このままでは森は壊れる。

だが、ハイエルフは何もしない。

ならば――

奪うしかない。


森の中心。

白い大樹の根元で、ハイエルフの一人が、寝返りを打った。

「……ん?」

微かに、地鳴りのような魔力の揺れを感じた気がした。

だが。

「……気のせいか」

そう呟き、再び目を閉じる。

動く理由が、彼らにはなかった。


天界。

ウェスタのタブレットに、静かに警告が灯る。

【魔力循環:不安定】

【森内部:局地的衝突増加】

【信仰値:低下傾向】

「……来ましたね」

ウェスタが呟く。

アウローラは腕を組み、眉をひそめた。

「完全に放置のツケね」

クロノスは湯呑みを傾けながら、一言。

「均衡とは、動かぬことではないからのぅ」

そして。

統括は、静かに数字を見つめていた。

「……」

まだ、ポイントは減り続けている。

だが彼は、焦らなかった。

「崩れる時は、一気だ」

誰に言うでもなく、そう呟く。

森の均衡は、

もはや保たれていなかった。

そして――

次に動くのは、誰か。

その答えは、もうすぐ下界に現れることになる。




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