表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/95

閑話09 勇者セインの最後



 小さな家だった。

 冒険者として名を馳せ、

 世界を救った勇者が最後に選んだ住まいは、

 町外れの、静かな一軒家。

 その寝室に、セインはいた。

 年老いた身体は細く、

 かつて剣を振るった腕も、今は毛布の上で静かに休んでいる。

 それでも――

 その眼だけは、まだ澄んでいた。

「……来たか」

 戸口に立つ二人を見て、セインは微笑う。

 一人は、黒のタンクトップに身を包んだ魔王ゼノス。

 もう一人は、いつもと変わらぬ軽い調子の統括。

「よぉ、勇者。相変わらずいい顔してるな」

「はは……最後だって言ったの、やっぱり本当だったんですね」

 セインの声は弱いが、冗談めいていた。

「最後だって言うなよ。

 ただの“区切り”だ」

 統括はそう言って、椅子を引き寄せる。

 ゼノスは何も言わず、

 ベッドの横に立ったまま、腕を組んでいた。

「……ゼノス」

 セインが声をかける。

「なんだ」

「こうして並んでると、不思議ですね。

 昔は、殺し合うほど憎んでたのに」

「……ああ」

 ゼノスは視線を逸らした。

「ゼノス、友を失うのはつらいな」

 その言葉は、魔王の胸に静かに刺さった。

「……ああ」

 短い返事。

 それだけで十分だった。

 セインはゆっくりと息を整える。

「俺は……いい人生でしたよ」

「冒険者ギルドも、

 ダンジョンも、

 世界も……」

「全部、ちゃんと続いてる」

 統括は、軽く笑った。

「そりゃそうだ。

 お前が整えたんだからな」

「……ありがとう」

 セインは、天井を見つめる。

「神様に感謝するのは、

 なんだか負けた気がしてたけど……」

「今日は、言っておきます」

 ゆっくりと、目を閉じる。

 その瞬間――

「……来ました」

 静かに、声がした。

 円卓の下から出てきた、闇の神エレブス。

 その瞳は、今、セインの胸元を見つめている。

「こんな奇麗な魂、見たことないですよ」

 統括は、少しだけ目を細めた。

「……そうか」

「はい」

 エレブスは微笑う。

「ちゃんと磨かれて、

 ちゃんと使われて……」

「このスキルの実も、

 きっと誰かに引き継がれます」

 セインの口元が、わずかに動いた。

「……それなら、安心だ」

 最後の息が、静かに抜ける。

 その場に、言葉はなかった。

 魔王と創造神、

 二人に見守られながら、

 勇者セインは旅立った。

 外では、穏やかな風が吹いていた。

 世界は、今日も続いている。

 それは――

 確かに、彼が守った世界だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ