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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第57話 神の誇りと、鍛冶の魂



今、この部屋には――

原初の神と、統括の二人だけがいた。

円卓の間から切り離された、静寂の空間。

「……いいですね」

統括が、短くそう言った。

原初の神は目を閉じ、しばし考え込む。

やがて、ゆっくりと瞼を上げ、一言だけ告げた。

「――うむ」

それで、すべてが決まった。


円卓の間に戻ると、統括は迷いなくテレスの前に立った。

「テレス」

呼ばれ、テレスはびくりと肩を震わせる。

「一緒に行くぞ」

「……え?」

「胸を張れ。

 お前の誇りは汚されたかもしれない。だが――」

統括は一歩前に出て、息子の目をまっすぐ見据えた。

「お前は神だ。

 俺の背中を見ろ」

一瞬、テレスの喉が鳴る。

「……はい」

「ウェスタ、ウェヌス」

二柱の女神が顔を上げる。

「後で呼ぶかもしれない。

 魔法の準備だけ頼む」

「了解しました」

「はい、すぐに対応できます」

統括は頷き、ふっと姿を消した――と思った瞬間、すぐに戻ってくる。

「テレス、行こう」

「……はい!」


次の瞬間。

三人は、冒険者ギルド本部――

ギルドマスター室に転移していた。

「正義さん?

 ……いや、創造神様?」

声を上げたのは、勇者セイン。

齢七十を超え、体は細くなった。

だが、その眼光は今なお鋭く、背筋は真っ直ぐだった。

「すまん、セイン」

統括は、少しだけ目を伏せる。

「これで最後だ。

 ちょっと付き合ってくれるか?」

セインは一瞬、言葉を失った。

「さい……いや、行きましょう。

 全く、いつも急なんだから」

……セインは笑った。

「 本当にすまん」

「いいですよ。

 どうせ、最後まで振り回される運命でしょうし」

三人は、そのまま転移した。


現れたのは、ドワーフ王国――

王座の間。

「なっ、何者じゃ!」

近衛兵が槍を構える。

「創造神だ」

統括が名乗ると、空気が一変した。

「……お主、あの時の……」

ドワーフ王が目を細める。

「今回の件、仲裁に来た」

「仲裁?」

「鍛冶ギルドと――

 いや、バルガンとダンジョンの件だ」

王の顔が険しくなる。

「……ギルドが何かやっているのは、気づいておった。

 だが、それがダンジョンだとは……」

「だから、まとめに来た」

「……で、どうすれば?」

統括は短く言った。

「来い」

次の瞬間、王と近衛兵数名は、神々と共に姿を消した。


現れたのは――

ドワーフ王国ダンジョン前。

そこには、鍛冶ギルドマスター・バルガンがいた。

「なっ……国王!?」

「そのダンジョンを作った神だ」

王の言葉に、バルガンの顔色が変わる。

「か、神!?

 神が、何の用じゃ!」

「お前がダンジョンを壊したのは知っている」

統括の声は、静かだった。

「その落とし前を、つけてもらう」

「……!」

「そのダンジョンは、俺の息子――

 土の神テレスが作った」

テレスは一歩前に出る。

「なぜ、土の神が悔し涙を流さねばならない」

「逆に聞かせてもらおう」

バルガンは、歯を剥いた。

「なぜ、これっぽっちしか取れん!

 神なら、無限に取れるようにすればいいだろう!」

「お前は――

 鉱石と金さえあればいいのか」

「当たり前じゃ!」

「質を高めようとは、思わんのか」

「質?

 そんなもの、とうの昔に世界一じゃ!」

吐き捨てるように言う。

「だがな、客は剣だ、防具だと言ってくる!

 数がなければ、捌けんのだ!」

統括は、ふっと笑った。

「……ほう」

そして、一本の金属棒を取り出す。

「ここに、アダマンタイトの棒がある」

場がざわつく。

「これを切れる剣を作れ」

「なに……?」

「剣を作る時間は与える。

 鍛冶師として、恥のない期限だ」

バルガンは、舌打ちした。

「……だが、切るのは誰がやる?」

「ここにいる」

統括は、セインを見る。

「勇者セインだ」

「――あの魔王と引き分けた……!」

動揺が広がる。

「この老いぼれでよければ、やってみよう」

セインが前に出る。

統括は、一振りの剣を差し出した。

「これを使え」

「……俺の剣?」

セインは目を見開く。

「いつ持ってきたんだ?」

「さっき、ついでにな」

「……この剣、誰が作った?」

セインは少し考えた。

「確か……

 ドレイク二世って名乗ってた、旅のドワーフだ」

「なに……!」

「勇者になった記念に、作ってくれた。

 もう……五十年は前か」

「ドレイク二世……

 先代王にして、世界最高の鍛冶師じゃ……!」

ドワーフ王が息を呑む。

「その剣で、切ってみろ」

地面に突き立てられたアダマンタイト。

セインは静かに構え――

一閃。

音もなく。

アダマンタイトの棒は、真っ二つに切れた。

「……」

沈黙。

「どうだ」

統括が言う。

「伝説の鍛冶師が作った、

 五十年前の剣だ」

「……いい物は、長く使える」

統括の視線が、バルガンを射抜く。

「これが、鍛冶だ」

そして、静かに告げた。

「さあ――

 お前の番だ」

歯車は、もう――

逃げ場のない所まで、噛み合っていた。




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