第6話 脳筋消防士、神に名前をつけて自分の立場を知る
神には、名が必要だ。
それは原初の神が、忙しそうに一言だけ残していった言葉だった。
「管理しやすいからね」
……理由、軽くない?
だが、確かにそうだ。
名とは役割であり、
存在の輪郭であり、
世界に対する責任そのものだ。
「というわけで」
俺は玉座――と言うにはまだ簡素な椅子に腰を下ろし、
目の前に並ぶ神と天使たちを見渡した。
「今日は、名前を授ける」
「まずは……」
視線は、静かに佇む彼女へ向く。
火を司る神。
文明の中心に座る存在。
「……前に出てくれ」
彼女は一礼し、進み出た。
真面目で、揺るがず、
神になった今もその姿勢は変わらない。
「君は」
俺は、少しだけ言葉を選んだ。
「文明の火だ」
「人が集い、
守り、
繋ぐための炎」
「だから」
息を吸う。
「――ウェスタ」
名を告げた瞬間、
天界に静かな熱が満ちた。
「火の神、
ウェスタ」
彼女は、目を伏せる。
「……その名、
謹んで受け取ります」
きちんとした返答。
本当に、真面目だ。
「次」
視線を移す。
そこに立つのは、
少し緊張した面持ちの少女。
火の神の子であり、
水を司る神。
「水は」
俺は、ゆっくりと言う。
「命を育て、
心を揺らし、
世界を繋ぐ」
「だから」
「――ウェヌス」
名を得た瞬間、
柔らかな水の気配が広がった。
「水の神、
ウェヌスです」
彼女は深く頭を下げる。
「父上、
これからも……」
言葉の続きを待つ前に、
横から声が飛んだ。
「ねぇねぇ!」
緑の翼を揺らし、
緑の羽の天使が身を乗り出す。
「次は私?」
「まだだ」
即答した。
「えー!」
「私も早く子供欲しいんだけど!」
天界が、一瞬静まる。
「……は?」
俺の思考が止まった。
「だって」
彼女はにこにこしている。
「やることやってるんでしょ?」
黄色の羽の天使が、
すかさず追撃してきた。
「ちょ、ちょっと!」
顔が、
一気に熱くなる。
「そ、そういう話じゃ……!」
「えー、
もう神産んでるのに?」
「顔赤〜」
「おい!」
混乱する俺の前に、
静かな声が落ちる。
「創造神様」
ウェスタだ。
「神を産むための行為は」
彼女は、まっすぐ俺を見た。
「神聖なものです」
「茶化すものではありません」
「……」
完全な正論だった。
「堂々と、
なさい」
俺は、
視線を逸らす。
「……はい」
天使たちが、
にやにやし始める。
「はい、
もう尻に敷かれてる〜」
「統括神、
弱い〜」
「……うるさい」
ウェスタは、
少しだけ微笑んだ。
「ですが」
「責任は、
果たしてもらいます」
その一言で、
背筋が伸びた。
「……ああ」
気づけば。
俺は、
彼女の隣に立っていた。
「水の神、
ウェヌス」
「はい」
「教育は、
皆でやる」
少しだけ、
寂しさはある。
だが。
「見守る」
それが、
俺の役目だ。
ウェヌスは、
静かに頷いた。
天界は、
今日も騒がしい。
だが。
神は、
確実に増えていく。
そして俺は、
少しずつ理解し始めていた。
――この世界で、
一番強いのは。
真面目な火の神だ。
神には、名が必要だ。
それは原初の神が、忙しそうに一言だけ残していった言葉だった。
「管理しやすいからね」
……理由、軽くない?
だが、確かにそうだ。
名とは役割であり、
存在の輪郭であり、
世界に対する責任そのものだ。
「というわけで」
俺は玉座――と言うにはまだ簡素な椅子に腰を下ろし、
目の前に並ぶ神と天使たちを見渡した。
「今日は、名前を授ける」
「まずは……」
視線は、静かに佇む彼女へ向く。
火を司る神。
文明の中心に座る存在。
「……前に出てくれ」
彼女は一礼し、進み出た。
真面目で、揺るがず、
神になった今もその姿勢は変わらない。
「君は」
俺は、少しだけ言葉を選んだ。
「文明の火だ」
「人が集い、
守り、
繋ぐための炎」
「だから」
息を吸う。
「――ウェスタ」
名を告げた瞬間、
天界に静かな熱が満ちた。
「火の神、
ウェスタ」
彼女は、目を伏せる。
「……その名、
謹んで受け取ります」
きちんとした返答。
本当に、真面目だ。
「次」
視線を移す。
そこに立つのは、
少し緊張した面持ちの少女。
火の神の子であり、
水を司る神。
「水は」
俺は、ゆっくりと言う。
「命を育て、
心を揺らし、
世界を繋ぐ」
「だから」
「――ウェヌス」
名を得た瞬間、
柔らかな水の気配が広がった。
「水の神、
ウェヌスです」
彼女は深く頭を下げる。
「父上、
これからも……」
言葉の続きを待つ前に、
横から声が飛んだ。
「ねぇねぇ!」
緑の翼を揺らし、
風の天使が身を乗り出す。
「次は私?」
「まだだ」
即答した。
「えー!」
「私も早く子供欲しいんだけど!」
天界が、一瞬静まる。
「……は?」
俺の思考が止まった。
「だって」
彼女はにこにこしている。
「やることやってるんでしょ?」
光の天使が、
すかさず追撃してきた。
「ちょ、ちょっと!」
顔が、
一気に熱くなる。
「そ、そういう話じゃ……!」
「えー、
もう神産んでるのに?」
「顔赤〜」
「おい!」
混乱する俺の前に、
静かな声が落ちる。
「創造神様」
ウェスタだ。
「神を産むための行為は」
彼女は、まっすぐ俺を見た。
「神聖なものです」
「茶化すものではありません」
「……」
完全な正論だった。
「堂々と、
なさい」
俺は、
視線を逸らす。
「……はい」
天使たちが、
にやにやし始める。
「はい、
もう尻に敷かれてる〜」
「統括神、
弱い〜」
「……うるさい」
ウェスタは、
少しだけ微笑んだ。
「ですが」
「責任は、
果たしてもらいます」
その一言で、
背筋が伸びた。
「……ああ」
気づけば。
俺は、
彼女の隣に立っていた。
「水の神、
ウェヌス」
「はい」
「教育は、
皆でやる」
少しだけ、
寂しさはある。
だが。
「見守る」
それが、
俺の役目だ。
ウェヌスは、
静かに頷いた。
天界は、
今日も騒がしい。
だが。
神は、
確実に増えていく。
そして俺は、
少しずつ理解し始めていた。
――この世界で、
一番強いのは。
真面目な火の神だ。




