第46話 テレスの試練は世界の為
あ、どうもこんばんは。
この世界の創造神――統括です。
今、俺は怒られてます。
周りには十人ほどの近衛兵。
全員、槍をこちらに向けてます。
うん、完全に重罪人の扱いですね。
でも大丈夫。
俺、怒られ慣れてるんで。
こういう時は下手に弁解しない。
変なことを言うと、後がもっと面倒になる。
伊達に怒られ続けてません。
「おい! 聞いておるのか!」
「は、はい。もちろんです」
「まったく……そもそも、なぜあんなにも頑丈そうなダンジョンが崩れるのか!」
「さぁ? 扉の立て付けでも悪かったんじゃないですかね。ははは」
「笑っとる場合か! 全く……ぶつぶつぶつ……」
よし。
この流れなら――
(サッと直して、さすが神が作ったダンジョンですねって言わせて、即撤退)
俺はさりげなくタブレットを取り出し、
修復のアイコンをタップした。
「おい! 何をしておる! 本当に聞いておるのか!」
「はい! もちろんです。でもほら、神が作ったと“される”ダンジョンですし。
もしかしたら……もう直ってるんじゃないですかね。ははは」
「そんなわけあるか! だいたいその――」
「国王!」
遮るように、兵士が駆け寄ってくる。
「ん? なんじゃ」
「ダンジョンが……直っていると報告を受けました!」
「な、なんじゃと!?」
国王が、驚いた顔でこちらを見る。
「ははは、よかったですねぇ。いやー、どうなることかと心配しました。
サスガ、カミノダンジョンデスネ」
……しまった。
思わず棒読みになった。
「なおったなら、もう大丈夫ですよね。では失礼します!」
俺は言い切ると同時に、全力でその場を離脱した。
「おい! あ、待て! 何だったんじゃあいつは……」
城を飛び出し、人気のない場所で転移魔法を発動。
「ただいまー……あー、疲れた!」
戻った先。
そこには――
仁王立ちで腕を組んだ、アウラがいた。
「……正座」
「はい」
「なんてことしてくれたの! わかってる!?
正義君一号が十分の一の性能でも、あなたが使えばレベル六千の化け物なのよ!」
「いやいや、そんな大袈裟な……ははは」
「大袈裟じゃない!」
その時、一歩前に出た影があった。
「母さん、大丈夫ですよ」
「テレス……」
アウラが、心配そうに息子を見る。
「父さん……すいません」
「テ、テレス?」
気づいた時には、
テレスの目には、涙が溜まっていた。
「ぼ、僕は……どうせ建付けの悪い、ダメなダンジョンしか作れない……
ダメ神なんだ……!」
「ちょ、待て――」
「うわあああああああん!!」
大粒の涙を流しながら、テレスは走り出した。
「ウォーーーン! 父さんなんか嫌いだーーー!!」
非常口を勢いよく開け、下界へと飛び出していく背中。
俺は、言葉を失って立ち尽くした。
――その日。
下界を泣きながら走り回った土の神テレスの涙は、
やがて大地に染み込み、
伝説の金属【アダマンタイト】となる。
それが後に
「土の神からの贈り物」として語られ、
神話に刻まれることを――
この時、まだ誰も知らなかった。




