第44話 ダンジョン完成直前
円卓の部屋。
神界タブレットの画面を見つめながら、統括は腕を組んで唸っていた。
「……よし。ここまでで――消費ポイント、8000」
指先でタブレットを軽く叩く。
【残ポイント:15000ちょっと】
「まだ余裕あるな」
そう呟いた瞬間。
「余裕あるとか言う前に、ちゃんと確認してよね?」
ウェヌスが即座にツッコむ。
「うん、分かってる分かってる」
「分かってない人の返事です」
淡々と返され、統括は目を逸らした。
円卓の中央には、ドワーフ国の地下断面図が立体映像で浮かんでいる。
巨大な縦穴、その周囲に張り巡らされた十五層構造。
「掘りすぎて枯れかけてた土地を、逆に安定させる構造にしてある」
そう説明するのはテレスだ。
「地下の空洞を均一化して、負荷を分散。
このまま放置すれば起きていた大規模地盤沈下は、これで回避できる」
「流石だな」
統括が素直に頷く。
「ダンジョンって聞くと派手な話に聞こえるけど、
今回は防災工事の側面も強いからな」
「ついでに冒険者のレベル底上げ」
ヘファイストスが腕を組む。
「クリア推奨レベルは60。
だが――」
「60あればクリアできるダンジョンじゃない」
統括が続きを言う。
「クリアする頃には60になってるダンジョンだ」
その言葉に、数柱の神が静かに頷いた。
「入口付近は誰でも入れる。
だが奥に行くほど、“考えないと進めない”構造にしてある」
テレスの説明は続く。
「ただ強いだけでは進めない。
地形、視界、連携――全部使わせる」
「いいねぇ」
アウラが楽しそうに笑う。
「血なまぐさいだけの場所じゃなくてさ、
挑戦する場所って感じ」
「安全対策も万全だ」
ヘファイストスが続ける。
「帰還石のドロップ率は高め。
食料も要所に配置。
“死なせない”ことを最優先にしてある」
「……優しいダンジョンですね」
ウェスタが小さく呟く。
統括はタブレットを閉じ、円卓を見回した。
「派手さはない。
でも――長く使われる」
「それが一番だろ?」
クロノスが頷く。
「急がず、壊さず、育てる。
まさにお主らしい」
統括は少し照れたように頭を掻いた。
「まあ……筋トレと同じだな」
「それは違う」
即座に全員からツッコミが飛んだ。
ダンジョンは、もうすぐ完成する。




