第41話 ダンジョンを作る!
「――ダンジョンを作る!」
円卓の部屋に、統括の声が響いた。
一瞬の沈黙。
「……は?」
最初に声を上げたのは、鍛冶の神ヘファイストスだった。
「ダンジョン、ですか?」
次いで、穏やかに確認するのは水の神ウェヌス。
「そう、ダンジョン!」
統括は勢いよくうなずく。
「冒険者が増えてきただろ? でもさ、戦争だけでレベル上げさせるのは違うと思うんだよ」
「それは……」
ウェヌスは少し考え込み、
「確かに、今は戦乱頼りですね」
「だろ? だから“戦わなくても強くなれる場所”が必要なんだ」
「戦わなくても、とは言ってないだろ」
ヘファイストスが即ツッコむ。
「細かいことはいい!」
統括は手を振り、
「要するに、安全に管理された修羅場だ!」
「言い方!」
ウェヌスが即ツッコんだ。
「……はい」
統括は素直に謝った。
「で、場所は?」
風の神アウラが興味津々に身を乗り出す。
「ドワーフ国だ」
「……妥当だな」
ヘファイストスが腕を組む。
「今、ドワーフ国は掘りすぎてる」
統括は神界タブレットを操作し、地上の地図を映す。
「資源目当てで地下を掘り続けた結果、地脈が弱ってきてる。このまま放置すると――」
「大規模地盤沈下、じゃな」
クロノスが低く言った。
「そう。だからダンジョンを“管理された掘削空間”として作る」
統括は続ける。
「勝手に掘らせるより、こっちで作った方が安全だろ?」
「構造は私がやる」
土の神テルスが、円卓の端から静かに声を出した。
「お、珍しい」
アウラが目を丸くする。
「地下構造なら、最適化できる」
テルスは淡々と言う。
「崩落しない層、資源が再生する層、戦闘向けの広間……全部設計できる」
「産出物は俺だな」
ヘファイストスがニヤリと笑った。
「鉱石、魔導素材、ドロップ品……冒険者が喜ぶものにしてやる」
「ただし」
統括は指を立てる。
「難易度は慎重に決めよう」
「どのくらいだ?」
ウェヌスが尋ねる。
「クリア推奨レベルは60にする」
「……高くない?」
アウラが首をかしげる。
「いや」
統括は首を振る。
「60あればクリアできるダンジョンじゃない」
一同が、統括を見る。
「このダンジョンは――」
統括は、少しだけ笑った。
「クリアする頃には、60になってるダンジョンだ」
「……なるほど」
ウェヌスが納得したようにうなずく。
「低層は初心者向け」
テルスが続ける。
「中層で成長を促し、深層で試す。逃げ道も用意する」
「死なせない、だが甘くはない」
ヘファイストスが頷いた。
「冒険者の底上げ」
クロノスがゆっくりとまとめる。
「争いに頼らぬ力を、世界に根付かせる……良い案じゃ」
統括は胸を張った。
「よし、決まりだ!」
「ドワーフ国にダンジョンを作る!」
こうして神界では、
世界を一段階引き上げるための“穴”が、静かに掘られ始めた。
――まだ誰も知らない。
そのダンジョンが、後に世界の常識を変えることを。




